デミデビル2
ふと空を見上げると、積み重なるように濃度を薄めていく紺色が広がっている。
水平線に一筋残る橙色は今にものみ込まれそうだ。
車道を挟んだ反対側には早足で帰宅を急ぐサラリーマン。電車に間に合わないとはしゃぎながら走る中学生たち。
部活動終わりの高校生にまぎれ、帰路を歩く。
悠も付いてきたが途中で同級生の女子に捕まってしまい、帰ろうとする私に待っててくれと叫んでいた。
もちろん笑顔で手を振って置いてきた。
「ひ…っく、ふっ……」
どこからかすすり泣く声。辺りを見渡すと、小さな女の子が座ってうずくまっていた。
近くに両親らしき大人は見当たらない。外見で言うと3歳くらいだろうか。
「どうしたの?迷子?」
「おねえちゃん。ワたシが、わかル……?」
少しだけ顔を上げて女の子は片言で答えた。違和感を感じたが手を伸ばす。
「うん、お父さんかお母さんはどこ?」
「おかア、サん…!」
女の子の両手が私の左腕をわしづかむ。足元から無数の手が絡みついて離れない。
「は、離して!」
【はナさなイ‼︎】
「やめて、ちぎれ…るっ!」
鞄が落ち、両足を支えに抵抗するも虚しく、腕が引き込まれていく。全身が悲鳴を上げている。
これは違う、化け物だ。
殺される。死にたくない。
「………ぉい、バカ!」
左の手首を力強く引っ張られ、私は反動で尻餅をついた。
目の前には高校の制服ズボン。そいつは革靴で一度影を踏んだ。
にじんだ視界がはっきりしていくにつれ、後ろ姿が映る。気付くと女の子と影は跡形もなく消え去っていた。
「悠?」
「1人になるなって言ったろ」
右手を差し伸べられて引き上げてくれた。
「ごめんな、余裕無くなった」
落とした鞄を拾い、悠は私の身体を持ち上げる。いわゆるお姫様抱っこ。
「ひぇっ」
「少し我慢してくれ」
「ええええええええええ?」
軽く屈伸したと思ったら、屋根の高さまで飛んでいる。
やっぱり幼馴染は人ではなかった。