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異世界召喚

 それは丁度3限目が終わり、昼休みに入ったところだった。

 数学の先生が教室から出て、クラス全員が昼飯を取ろうとしたところだった。


 何が起こったのかわからないが、とりあえず俺たちクラス30人は一瞬にして意識を失った。


 ◇◆◇


 「ここは?……」


 俺が意識を取り戻したとき、目を開けば天井が見えた。

 見知らぬ天井。少なくとも教室ではない。


 そして、俺たちがいる部屋は相当な広さだった。

 等間隔で天井を支える柱が立ち、まるでヨーロッパにあるような歴史ある教会のような荘厳な空間だった。


 「みんな落ち着こう。まず、クラス全員がここにいるのか数えよう。」


 こういうとき落ち着いて対処できる男。相川 壮太(あいか わそうた)。このクラスの委員長だ。


 「私も数えるわ。相川君は男子をお願い。私は女子を数えるから。」

 「分かった。」


 そうして、もう一人のクラス委員長、七星 由奈(ななお ゆな)もそれに協力する。


 「なに!? 男子は14人しかいないぞ? 一人足りない…… 一体誰がいないんだ?」

 「委員長、多分俺をカウントしてないんじゃないかと……」

 「うわっ!? 和田か。急に現れないでくれ……それなら、うん、15人いるな。」


 いや、さっきからそこにいたし……


 「女子のほうも15人いるわよ。じゃあ、全員無事ね。」


 俺たちはひとまず安堵した。

 何に安堵したのかはわからない。みんな同じ境遇だから?


 「もしかして、ここって異世界なのか?」


 みんな不安にソワソワしている中で何故か興奮めいたことを言っている奴がいる。


 佐藤 宗助(さとう そうすけ)だ。


 眼鏡をかけた帰宅部のオタク。典型的なモブキャラなのだが、やはりこういうシチュエーションに燃える何かがあるのだろう。


 それにしても異世界か。または地球のどこかにワープしたという説も現時点では否定できないが、少なくとも日本ではなさそうだ。


 そうこう考えているうちに、部屋に入ってくる者達がいた。



 ◇◆◇


 部屋……というよりはホールなのだが、いずれにせよ俺たちの元に現れた者達はいずれも白いローブに身を包んでいた。絹でできているのだろうか? 随分と滑らかで光沢感のある生地だ。


 何となく宗教関係のヒト? のように思えた。


 そのうちの一人、銀髪の髪に蒼い瞳を持つきれいな女の子が口を開いた。


 「初めまして。異世界の勇者様方。ここはルマーニアン王国にある教会ですわ。」


 佐藤が「よっしゃぁ~!」と気合のこもった声を発する。


 そして、その銀髪の少女は佐藤を軽く無視して話を続ける。


 「私の名前はマリア・テレーズと申しますわ。このシナトラ教に身を捧げる宗徒ですわ。」


 シナトラ教……


 四郎は現時点で知る由もないが、ルマーニアン王国含めこの大陸で最も信徒数の多い宗教。

 一神教であり、異能や魔法を駆使して信仰を集めている超巨大組織だ。

 マリア・テレーズはそのシナトラ教における聖女といわれる存在で、その権力は教皇の下位者である大司教クラスといわれている。


 胡散臭い……


 それが四郎の感想だ。そもそも、宗教という時点で日本人としてはあまりいい顔はしない。


 マリアの話はまだ続く。


 「皆様をこの世界にお呼びしたのは他でもありませんわ。我々は今窮地に立たされています! 是非、勇者様達のお力をお借りして、我々の脅威を退けていただきたいのですわ。」


 窮地に立たされている割には、マリアを始めとしてシナトラ教徒達の顔色はいいし、むしろ太っている奴もいるし、さらには質のよさそうな修道着まで身に纏っているようだが気のせいだろうか。


 「その脅威というのは一体何なのでしょうか?」


 相川はそう尋ねるが、マリアは待ってましたと言わんばかりに語る。


 「魔物の多発ですわ。ただ数が多いだけではありませんわ。中には1体で国すら亡ぼすといわれる天災級の魔物までおりますの。そしてそれらの魔物を束ねるのが……」


 一呼吸おいて


 「「魔王」」


 あ、マリアとクラスの連中の誰かの声がはもった。多分佐藤だろう。



 ◇◆◇


 「魔王……良くわからないけど、そんなに凄い相手なら私たちにはどうすることもできないよ。」


 椎名は心配そうにつぶやいた。その瞳はこれから自分たちはどうなるのかと、少し脅えが含まれていた。


 「そうよね……そもそも、私達にはそのような存在と戦う義理もないし、力もないわ。」

 「そうよそうよ。いいから私たちを元の世界に戻しなさいよ。」

 「そうだそうだ。元の世界に戻せー」

 「元の世界に戻せー」


 大勢のクラスメイトたちの非難ごーごーのシュプレヒコールがマリア達に向けられる。

 が、マリア達は全く動じた様子がない。むしろ慣れているかのようなゆとりさえ感じられた。


 「残念ながら、皆さまを元の世界に戻す方法はありませんわ。」


 普通、そういう言葉は申し訳なさそうに話すべきなのだが、なぜか堂々と、さも当然とばかりに語るマリアに俺は憤りを感じていた。


 これって立派な拉致犯罪だよな。


 拉致犯罪なんて北の豚将軍くらいしかやらかさないだろうと思っていたのだが、まさか異世界からとは恐れ入ったわ。想定外だ。


 「……なんだって?」

 「えっ? もう日本に戻れないの?」

 「うそだ……ママぁ……」

 「やべぇ……俺のPCには見られちゃまずいものが沢山……」


 そして、クラスの皆は困惑と悲嘆に暮れていた。一部違った心配をしている奴もいたが。

 マリアの話はまだ続く。


 「しかし、魔王を倒した暁にはもしかしたら…… かの者は私達さえ知らない異能や魔法を持っているといわれておりますわ。きっとその中には皆さまの世界に戻れる術もあるかもしれませんわ。」


 「「「「ほっ、本当?(かっ?)」」」」


 単純な奴らだ。


 お前らはどこぞの金豚に拉致られた後、その金豚が「俺のために働いたらいずれ日本に戻してやるぞ?」って言われて、「分かりました!頑張ります!」って言える口か?


 まぁ、先が真っ暗な時ほど、わずかな希望にでも縋りたいという気持ちはわからんでもない。


 さて、この先どうなることやら。


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