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第3話

 俺は身分証を手に入れた後、とりあえず人が多い方へと進んで行くと、店が所狭しと並ぶ商店街?と思われる場所に到着した。うん、到着したのは良いのだが文字が全く読めない。言葉は良く分かんないけど何故か通じるのに文字は分からないのだ。


 「......」


 文字が分からなくても店の中を覗けば分かるだろうが、異世界は現代の店の様な大きなガラス等は無く、普通サイズの窓ガラスからしか覗けないのだ。覗けんじゃん、と思われるだろうが、そんな事をしてたら不審者として捕まるかもしれない。


 「なら、やる事は1つ」


 買収である。店ではない、その辺の人をである。


 「誰にするかな...」


 人選びは重要だ。別におっさんでも良いが、俺が金を持ってると知って仲間を連れてこられては面倒である。勇者補整のある俺なら並の人間に負ける事は無いだろうが揉め事は御免だ、これも捕まる可能性がある。


 暫く人を観察した。この街の住民だろう人、長旅で服が汚れている難民、エルフ、獣人、ドワーフ...そう、俺は別に人間観察が好きな訳ではなくファンタジーな者を見ていたのだ。


 「耳、耳、髭...尻尾も...」


 素晴らしい。それが最初に浮かんだ言葉だった。


 耳が長く、美男美女しか居ないエルフ。猫、犬、兎、種々な耳や尻尾が生えた獣人。長い髭と小さな身長が特徴のドワーフ。異世界最高!神様だか何だか知らないけどありがとう!信仰心生まれちゃう。


 「...いや、今はそれより...」


 本題の人選びだ。文字を通訳してくれる人が居ないと俺の行動が制限される。...もう適当で良いか。

 

 俺はリュックから金貨を鷲掴みにしてポケットに突っ込んで準備が済むと歩き出した。


 「あいつで良さそうだな...」


 ターゲットが決まった。普通のおっさんである。俺は近付いて行くと肩を叩いた。


 「あの、すいません」


 「ん?なんだ?俺に用でもあんのか?」


 「はい。俺に街を案内してもらえませんか?勿論報酬はあります、これでどうですか?」


 俺はポケットから金貨を1枚取り出した。


 「なっ!?わかった!俺にやらせてくれ!」


 一撃だな。そう思った。金貨の価値はかなり高いらしい。100枚もあれば家を買えるかもしれない。


 「わかりました。ではとりあえず宿を紹介してもらえませんか?」


 「あぁ宿だな、付いてきてくれ、こっちだ」


 俺はおっさんの案内に従って宿を目指した。


 *


 「着きましたぜ、俺はここで待ってますんで」

 

 宿に着いた。敷地面積はけっこう広く、宿自体も3階建ての少し高そうな宿である。


 俺はおっさんに「わかった」と言い残すと宿の扉を開けて中に入っていった。中に入ると酒場の様な雰囲気で、恐らく上2階が宿になっているのだろう。


 「すいません、宿に泊まりたいんですが...」


 奥のカウンターでコップを拭いているマスター?に話し掛けた。マスターはガングロのおっさんで、手元のコップから俺にその鋭い眼光を向けるとドスの効いた声で「何泊だ...」と言った。映画のワンシーンの様で俺は笑いそうになってしまった。


 「んっ...3泊でお願い事します」


 「部屋は何でも良いのか...」


 「あっ、はい、大丈夫です」

 

 「なら2階の205号室で値段は600リドルだ」

 

 リドル?金の名前だとは分かるが、600リドルって金貨何枚だよ...金貨6枚か?。


 俺はポケットから金貨を6枚取り出した。


 「これで...足ります?」


 「は?お前銀貨は持ってないのか?」


 銀貨もあるらしい。たぶん銅貨もあるだろう。だが俺はどちらも持ってはいない。


 「はい、持ってませんが...」


 「はぁ...家は両替屋じゃねぇ。だが金貨で払うってんなら50日泊まれるぞ、まあ途中で出ていっても返金はしないがな。で、どうする?」


 金貨1枚で50日も泊まれるらしい。3日で600リドル、1日は200、200×50=1万、1万リドルが金貨1枚...金貨の価値高過ぎじゃね?まあ、両替するのも面倒だし、あと99分の1枚ぐらい払っても良いか。


 「じゃあ50日お願いします。飯は出ますか?」


 別に勇者補整のある今の俺なら食い物は無くても大丈夫だと思うが美味しい物は食べたいだろ?。


 「ああ、朝と夜の2食出る、昼は無いがな」


 「わかりました」


 俺は金貨5枚を1枚ずつ回収してポケットに仕舞うと残った1枚をマスターに渡した。

 

 「これが鍵だ。それと夜飯の時間にベットメイキング」


 「ありがとうございます」


 俺は鍵を貰うと部屋の方に向かった。




 「へぇ、良い部屋じゃん」


 思ったよりも良い部屋だった。6畳程のリビングと寝室があり、風呂やシャワーは無いが地球の現代にある水洗式のトイレがあった。材質は石であるが形は完全に俺の知っているトイレだ。昔に他にも勇者が来ていたのだろうか?。


 「まあ良いか、窓からウンコ投げ捨てる様な事をしなくて済むんだ、昔の勇者には感謝だな」


 部屋の確認が終わるとランタンだけ部屋に置いて、俺は宿を出て案内のおっさんの所に戻った。

 

 *


 「待たせたな、次は...なんだその手は」


 おっさんが俺に手を伸ばしていた、まるで追加料金とでもいうかの様に。俺も舐められたもんだ、金貨の価値も分からない様な馬鹿だと思われてるのだろう。もうこいつは要らない。金が掛かりすぎる。


 「失せろ糞野郎...殺すぞ...」


 俺が脅すとおっさんは直ぐに逃げて行った。


 「はぁ...新しい通訳...いや、両替が先か...」


 両替もそうだがアクセサリーの買い取り手も探さないといけない、やる事いっぱいだ。そうだ!奴隷を買おう!異世界だし奴隷ぐらい居るだろ、毎回通訳を雇うより絶対に安い。


 俺は奴隷を買う事を決意した。が、奴隷が何処に売ってるかすら分からない。手間としては対して変わらないかもしれないが今後を考えると何処かで買った方が良いだろう。


 「買うなら美少女だな...ん?でもな...」


 女の子の方が確かに良いが、男の方が気を使わないで良さそうだとも思う。これは悩み所だ。


 そして暫く考えた末の答えは、男とか女ではなく”とりあえず奴隷売ってる所を探そう„だった。




 「あそこか...」


 いま馬車の荷台の鉄格子から降ろされた集団が建物に連れて行かれる所を目撃した。同情など無い。奴隷って借金とか罪を犯した連中の筈だ、同情する方がおかしい。そもそも人権なんて金持ちで常に安全な所にいる人間が使う言葉だ、昔も現代も人権なんてあって無い様な物だ。


 「行ってみるか」


 俺は奴隷商?に近付いて行った。

 

 「すいません、ここ奴隷売ってたりします?」


 門を通ると店の前に用心棒って感じの2人組が立っていたので話し掛けた。

 

 「奴隷をお求めで?」


 「はい。1人買おうと思ってます...それで...入っても良いですか?」


 「はい、お客様でしたら問題ありません」


 良いとの事なので、俺は1人勝手に奴隷店の中に入るとホテルの待合室の様な部屋が広がり、でっぷりと太った成金みたいな奴が寄ってきた。


 「いらっしゃいませ、どの様なご用件で?」


 「あっ、はい、外の人に奴隷が居ると聞いたのですが、買うことは出来ますか?金ならあります」


 金があると分かれば良い奴隷を紹介してもらえると考え、俺はリュックを降ろして中から金貨の袋を出すと、金貨が見える様にしてやった。


 「おぉ、勿論でごさいます、お客様。どんな奴隷をお求めですか?男、女、力のある者、無いもの、様々ごさいますが何をお求めでごさいましょう?」


 「...文字の読み書きが出来る者を探してます」


 「性別や種族は?」


 「それは何でも良いです。でも年齢は若い方が良いかな?他はお任せで」


 「文字の読み書きが出来て年齢の若い者ですね。畏まりました、条件に合う者を連れて来ますので、そちらのソファーにでも座ってお待ちください」


 そう言われたので俺はソファーに座って待った。




 暫くして10人程の奴隷を連れて店主と用心棒だろう奴が付いて戻ってきた。連れてこられた奴はみんな美男美女ばかりで、俺に金を吐き出させようという魂胆なのだろう。まあそれは良い。恐らく全員優秀な奴等で値段に釣り合うだけの価値がある筈だ。


 そして連れてこられた中に猫耳の美少女が居た。黒い猫耳、金色に近い瞳、黒い尻尾、更に少し暗い感じも良い、俺ああいう子が好きだわ。


 「要望に合う者をお連れしました。全員が文字の読み書きができ、年齢は15から20前後を揃えました。どれか気になる者はございますか?」


 「じゃあ、その子は?」


 早速あの子を聞いてみた。


 「この者は名前をマリアといい、体術と魔法を少し使えます。お気に召しましたか?」

 

 ああ最高だね。マリアは候補にしよう。


 「はい、候補にしようと思います」


 候補というのもマリア以外にも可愛い子は居る。金髪蒼眼の美少女、巨乳で美人なエルフ、犬耳の元気そうな女の子、どれも店主が進める一押しの高級奴隷なのだろう。だがどれにも欠点はある。まず金髪蒼眼の子、こいつは性格がキツそうだ。次に巨乳エルフ、俺は大き過ぎる胸は嫌いだ。最後に犬耳、俺はうるさい奴は無理だ。なので俺はマリアを残して他の奴隷を連れて来てもらった。


 *


 あの後も何度か奴隷を入れ換えてみた。だが結果として総合点でマリア以上の女の子は居なかった。うん、まあ良いのだ、マリアは俺の中では完璧だ。なので俺はマリアを買う事にした。


 「すみません、何度も何度も...」


 「いえ、なにも問題はありませんよ、これも仕事です。では会計の方を進めても?」


 「はい、幾らですか?」


 「8万7300リドルでごさいます」


 俺は金貨9枚を払った。


 「これでお願いします」


 「お預かりします...確かに金貨9枚、では、こちらがお釣りの大銀貨2枚と銀貨7枚になります」


 お釣りを受け取るとリュックに金を戻した。


 「これで終わりですか?それとも手続きが?」


 「あぁ、お客様が行う手続きは紙に1度名前を書いて終わりです。その後は奴隷に〝服従の輪〟を装着させて、それにお客様の〝魔力〟を注いでもらえば全て終わりです」


 服従の輪?対象に命令を聞かせるアイテムか?恐ろしいアイテムもあるもんだな...まあ逃げられても困るし付けといてもらうけど、勇者の俺にも効くのかな...いや、考えるのは辞めよう、怖すぎ。


 「こちらが奴隷を持つ事を示す書類です、ここにサインをお願いできますか?」


 「あの、俺、文字が書けないんですが...」


 だから買いに来たのだ。


 「左様でしたかっ、失礼しました。では貴方様の奴隷に初仕事を任せてみてはどうです?もともとそういう目的で来られたのでしょう?」


 あぁ...良いかもな。初めての命令だな。


 「そう、ですね。マリア、頼めるか?」


 「勿論です、ご主人様」


 良いね、ご主人様。そのうちメイド服とか着させてみたいな...いや、嫌われても困るか...。


 「んっ...じゃあアーサーって書いてもらえるか?あぁ、俺の名前はアーサーだけだから...」


 「畏まりました」


 マリアは店主から羽ペンを貰うとインクにペン先を浸けて紙にすらすらと書いていった。


 「これでアーサーって読むのか?」


 「はい、ご主人様」


 俺が知ってるどの文字にも似てない文字だった、これは日本語も怪しい俺には覚えられなさそうだ。


 「では次に服従の輪を装着ですが...首、腕、足の3箇所のどれかに着けないといけませんが、どうします?因みに1度着けたら外すのに特別な処置が必用になるので、かなり高い金額が必用になります」


 「無理矢理外したり出来ないんですか?」


 「出来る事には出来ますが、その場合は込められた魔法で着けた箇所を切断される事になります」


 「じゃあ外すのに掛かる費用は具体的には?」


 「そうですね...あれは言い値ですので具体的には金額を出せませんが、金貨3枚は掛かります」


 なんだ、安いじゃん。って思った。だったら何処でも良いと思うが、着けるのは俺じゃない、マリアだ。だったらマリアに決めさせるのが妥当だろ。


 「マリアは何処が良い?」


 「何処でも構いません、ご主人様」


 何処でも良いとか何でも良いって1番困るよな。首、腕、足。首は邪魔にならなそうだけど...身体洗う時とか邪魔そうだし、腕は普通に邪魔だろ、足はブーツとか履けなさそうだし...首で良いか?その内外してもらえば良いし。


 「じゃあ、首でお願いします」


 「畏まりました。少々お待ちください」


 店主はそう言うと部屋から出ていき、少し待つと服従の輪という奴を持って戻ってきた。


 「こちらが服従の輪になります。効果は一定以下の対象に主人の命令を強制的に従わせる効果があります。では装着させていただきます」


 ゲームみたいな説明が終わると店主はマリアの首に服従の輪を取り付け始めた。


 「これで大丈夫です、後は主人となる御方の魔力を注いで完了になります」


 魔力?そんなのどうやって出すんだよ...。


 「あの...魔力ってどうやって出すんてすか?」


 「あぁ...上手く説明出来ませんが...手から力を放出する感じのイメージで出来ると思いますよ?」


 ああ、そんなんで良いのね。なんかもっと複雑なイメージがあったわ。そんな簡単なら出来そう。


 俺はマリアの首に手を伸ばして魔力の放出を試みると簡単に靄の様な物が出てきた、これが魔力なのだろう。久し振りに中二心が蘇った気がした。


 「これで良いですか?」


 「あっ、あぁ、はい。凄いですね、普通魔力なんて見る事は出来ないのに初めて見ましたよ、きっと貴方なら魔王を倒せるかもしれませんね」


 俺の魔力は凄いらしい。まあたぶん勇者補整のお陰だろうし魔王を倒す為の存在だ、当たり前だろ。


 「ふっ、そんな事ありませんよ...」


 このあと適当に話した後、俺はマリアを連れて奴隷商を出て歩き出した。

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