表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

第2話

 あの後も食料を探し続けて見付けたのは夜になった頃だった。まさか夜まで掛かるとは思わなかった...たぶん自宅で料理を作る人は少数なのだろう。いや既に滅び掛けてた国だ、食料が少なくて配給制だったのかもしれない。なら少ないのも納得だ。


 見付かった食料は布に包んで引き出しの中に隠してあった、丸い手のひらサイズのパン4つだけだった。食料は少ないが代わりに良い物を見付けた。それは地図だ、なんて書いてあるのか読めないが恐らく現在地を示す円が書かれていた。


 「とりあえず北上だな...その後は...」


 現在地から1番近い国境線は北の方にあった。それも3国間の国境線だ。因みに既にどちらも滅びてるという結末は考えてはいない。


 「食い物はとっておいて移動だな」


 この街にはまだ食料はある筈だが少ない食料の為に留まるのは無駄な行為だと思う。最悪そのへんの雑草でも食いながら進めば良いのだ。腹に入れば全部同じって、じいちゃんも言ってた。


 とりあえず荷物を持ち俺は地図と辺りの景色を比較して恐らく北の方角だと思われる方角に歩いた。

 

 *


 朝になるまで歩いた。そう、歩き続けた。神の加護だか良く分からないけど勇者補整の力は凄いらしい、まず眠気を感じず、空腹感も無い。態々食料を探してたのが馬鹿みたいである。だが慢心はしない、感じないだけで実際には眠気が溜まってたり腹が減ってるかもしれないのだ。最低限は寝たり食ったりするべきだろう。


 「でも疲れた...」


 精神的にだ。夜から朝まで、時間は確認してなかったが太陽が昇るまで大体8時間ぐらいだろうか?その間ひたすら歩いたのだ。でも最初は楽しかった。異世界は未知の世界だ、雑草見てるだけで少し楽しい。そして1番面白かったのはゴブリンを見付けた時だ。何匹か居たのだがゴブリンって視力が悪いのか気付かれなかったのだ、あれは笑った。そして面白そうだから遠くから石を投げ付けたら当たった奴が隣の奴を殴りだして勝手に喧嘩を始めたのだ。そのとき堪えきれず吹いて大爆笑したら流石にバレて追い掛けられたのはビックリした。


 「ふっ、ふふふ」


 追い掛けられてビックリしたけど良く見るとゴブリンって余り足が速くないから余裕で逃げられた。イメージとして幼稚園児に追い掛けられる感じだ。


 「ふぅ...これからどうするかな...」


 たぶん後半日も歩けば街が見える筈だ、無事かはわからないが、少なくとも休憩ぐらいは出来る。


 「頑張って早めに行くか」


 とりあえず俺は北に走った。


 *


 2時間ぐらい走った。そこで俺はあり得ない光景を目撃した。でも良く考えれば異世界だし当然か?とも思った。俺はそれに近付いた。


 「へぇ、すげぇ...」


 超広範囲に張られた蜘蛛の糸。いや糸というより細いロープぐらいはある。そして蜘蛛の巣を通り抜けようとした馬鹿なゴブリンが絡まっていた。ゴブリンは逃げ出そうと必死に暴れているが、そのせいでどんどん悪化している。やがてゴブリンは身動きが取れなくなり、それでも諦めないのか体を揺らしている。が、それが悪かった様だ。恐らく巣の振動を察知したのか超巨大な蜘蛛が森の中から現れゴブリンに近付いて行く。

 

 「あっ、ゴブリン終わったな」


 なんとなく蜘蛛だし糸でぐるぐる巻きにするのだろうと見守っていたが、期待を裏切り超巨大蜘蛛はその場で捕食を始める様だ。暴れられても迷惑なのか、蜘蛛の鋭い脚の1本がゴブリンの頭を貫き1撃で即死させると当たり前の様に捕食を始めた。


 「あれどうするか...」


 蜘蛛の糸は生物界最強とか聞いた。種々実験してみたいと思うが余り戦いたいとは思わない。


 「逃げるのは...」


 目的の方角は蜘蛛の巣の向こうだ。あの蜘蛛が何処まで巣を張っているか分からないし森の中には入りたくない。毒とか怖いし。


 「戦うしかないか...」


 戦うなら戦術を考えないといけない。まず糸がヤバイ、当たっただけで身動きが取れなくなる。そして鋭い脚だ、貫通力が凄まじい。それに毒があるかもしれないし噛まれたら不味い。勝てるのか?。


 まあ勝てるかはさておき、正面、横、後ろ、全てが不味い...いや背中が...あるな。だが背中も怖い。乗ってる間に蜘蛛の巣に体当たりでもされたら俺は終わりだ。まただけど...勝てるのか?。


 「なら遠距離攻撃だな」


 投石だ、投石。あぁ...金のインゴット持ってくるべきだったな...あれなら1撃だった。


 「くそぅ...」


 だが悔やんでも遅い。俺はとにかく石を集めた。あれだけデカイ的なら外す事は無い。


 「これだけありゃ」


 俺は攻撃を始めた。初撃は1番気に入った持ちやすい石だ、ピッチャーの様に投球ポーズを取り全力で投げた。その石はありえない速さで飛んでいき巨大蜘蛛を貫いた。貫通だ、貫通。


 キィヤャャカカカァ!!


 蜘蛛も声帯を持っているのだろうか?たぶん悲鳴と思われる声を上げて苦しんでいる。


 「行けるな...勝てるっ!」


 次からの投石は蜘蛛が避け始めた、避けたのだ。俺のFPSで鍛え上げられた動体視力でも見えない速さの投石をだ。あいつは化け物...なんだよなぁ...。


 「当たれ!当たれ!当たれ!当たれ!」


 質より量だ。数打ちゃ当たる!。


 「くそぉ...」

 

 結果全く当たらなかった。かなり集めた筈の石は無くなり、それに気付いた蜘蛛が突撃してきた。が、蜘蛛は既に疲れている様で動きが遅く感じる。これは勝機だ、勝てる。


 「おらおら!かかってこいや!」


 俺は正々堂々とは戦わない。両腰に差した双剣を両方抜いた俺は時を待った、何の時をかって?。


 「確実に当たる時をだよ!」

 

 蜘蛛との距離残り5m程の距離で右手の剣を全力で蜘蛛に投げ付けた。投げた後即座に左の剣を両手持ちに切り替えて投げた剣を見ると蜘蛛の頭に突き刺さっていた。完全にまぐれ当たりである。が、蜘蛛の生命力は凄まじく、まだ生きている。


 「これで終わりだ!」


 勢いを殺しきれない蜘蛛に向かって走り出した俺は助走を付け飛び上がると蜘蛛の頭に刺さっている剣の柄を蹴りつけ、剣を更に深く差し込むと超巨大蜘蛛はずるずると滑りながら死んだ。


 「ふうぅぅ......勝った」


 俺は勝ったのだ。まあ、運の要素もあったが俺の勝ちに変わりはない。そして確かめたい事もある。それは魔石の有無、ゲームや小説に登場する魔物のコアだか魔力の貯蔵器官だったりする素材?だ。もしあったら高く買い取ってもらえるかもしれない。


 「これ解体するのか...うっ...」


 とりあえず刺さった剣を抜いたら変な液体が糸を引き、剣の刀身がその液体まみれだった。まあ解体するなら丁度良い。魔石は魔物の胸によくある設定だが俺は蜘蛛の胸がどっちなのか分からない。なので適当にケツの方から切り始めた。


 「なっ、な、なんだ?動いてーー子供だ!」


 切って出てきたのは大量の子蜘蛛。子蜘蛛といってもタランチュラサイズである、それが大量に。


 「うわっ、きも!」


 何千か何万は居るだろう、それが文字どおり蜘蛛の子を散らす様に四方八方に逃げて行くのだ。俺は別に虫とか蜘蛛も怖がったりはしなかったが、あれを見ると恐怖心を覚えてしまうかもしれない...。


 *


 100m程後退させられた。半数以上が森の中に逃げて行ったが少数、少数といっても数万の中の少数でかなり居たが、そいつらが俺の方に向かって来たのだ。跳び跳ねる奴まで居た。まあその少数も途中で森に気付いたのか森の方に逃げて行ったが、何故か俺は追われて100m逃げるはめになったのだ。


 「......」


 とりあえず戻る事にした。こんな思いをさせられたんだ、だったら最後まで魔石の確認をしてやる。

 

 


 親蜘蛛の所まで着いた。意味もなく蹴った。すると某エイリアン映画の卵の様に俺に向かって子蜘蛛が飛び出て来た。俺は反応速度0.1秒で蜘蛛を避けて、振り向く際に居合い切りで蜘蛛を切り落とした。後から考えれば自分でもどうやれば同じ事を出来るのか分からなかった。


 「......始めるか...」


 ただ無心に魔石を探した。そして暫く剣で内蔵を掻き出していくと奥の方、腹と胴体の付け根?辺りに魔石と思われる両手でやっと包み込めるぐらいの紫色の石を見付けた。形はゴツゴツしている。


 「魔石の確認は終了...次は糸か...」


 俺は蜘蛛の巣に近付くと強度を試す為に軽く切り付けて見るとあっさり切れてしまった。なんかで蜘蛛の糸は最強と聞いていた俺はがっかりした。


 だが強度は余り無いが粘着力はかなりあった。剣の面にくっ付けてみると全力を出さないと剥がれなかった程だ。用途は微妙だがネズミ取りなんかに使えそうだと思う、態々作ろうとも思わないが。


 「進むか...」


 糸を1本ずつ切って行き、自分に糸が付かない様に気を付けながら道を切り開くと俺は走り出した。


 *


 お昼頃。スマホの時間は13時になっている。たぶん24時間365日は同じなのだろう。と、本題だが街が見えた。無事な様であるが街の外壁の上には見張り...いや、あれは既に戦闘員だろう。槍を手に持った兵士が外壁の上に3m程の感覚で配置され、何時でも戦闘が出来そうな雰囲気であった。


 「どうやって入るか...」


 遠目でしか確認出来ないが入門するには身分証の様な物を見せないと入れない様である。それに入門審査を受けるには数百mの長い列に並ばないといけないし、並んでも身分証なんて無い俺は入れるかどうか分からないのだ。


 「壁を乗り越えるのは不可能...俺が勇者だと宣言するのは...いや、それは隠しておいた方が良いな」


 勇者宣言は切り札の方が良いだろう。だが皆が持ってる身分証を俺は持ってはいない。どう入るか。

 

 考えられるプランは...


 1 強行突破


 2 横入りして適当にでっち上げの事情を話す


 3 ちゃんと並んで、後は2と同じ


 4 何日か掛けて穴を掘る


 5 他の街に行く


 ぐらいだろうか?。


 「1は論外だし4は難しい、5に関しては同じ状況だろうし...これは2に決定だな。面倒くさいし」


 2で行って駄目なら3に移行すれば良いのだ。後は事情を何て説明するかだ、魔族から逃げてる時に頭を打って記憶喪失、なんてのはどうだろう?俺は異世界の国や地域の名前を全く知らない、なので記憶喪失以外にはでっち上げる事が出来ないのだ。


 「記憶喪失。決まりだな」


 俺は列の最前列に走って行った。


 *


 「おい...なんだよ」


 「お前抜かすな!」


 「ちょっと何よ!」


 俺には異世界の人間がモブキャラにしか見えていない。もしかしたら人間とすら思っていないかもしれない。なのでなんと言われようが無視して押し通る事が出来る。誰だってゲームでモブキャラにぶつかったり貫通してもチャットで「ごめんなさい」とは打たないだろ?そんな感じだ。


 「おい!そこのお前!横入りには最初から並んでもらうぞ?。誰か!そいつを戻してやれ!」


 係りの人だろうか?人混みで見えないが、そう聞こえると兵士が近付いて来て連れ出そうとする。が、俺はそう簡単に退くつもりは無い。勇者補整の付いた俺を普通の兵士にどうにかする事は出来ない様だ。兵士の男は俺の腕を両手で引っ張っているが俺は全く動かない。


 「っ!?なんだこいつ?びくともしないぞ!?」


 俺は逆に兵士を引きずって進んで行く。


 「おっ!おい!増援を寄越してくれ!」


 おっ?良いね。イレギュラーには特別な対応がされる事がある、もっと大事になれば良いのだ。


 そして兵士が増援を頼むと直ぐに追加で4人の兵士が駆け付け街の中に、そう街の中に引っ張られたのだ、詰所かどっかで個別に話を聞いてくれるのだろう、俺は抵抗せずに誘導される方向に歩いて行くと小さな小屋の様な建物に連れていかれた。


 「ほら、そのに座れ...」


 「はい。失礼します」


 交渉スタートだ!。


 「...はぁ、まず君は何なんだい?大の大人に引っ張られて動かない子供なんて始めて見たよ」


 「いえ...わかりません」


 「分からないとは?」


 「はい。最後の記憶は魔族から逃げてた事なんですけど、その時...確か転んで頭を打ったっきり思い出せないんです...」


 全部嘘だ。


 「それはきっと記憶喪失という奴だろうな、兵の中にもたまにあるのだ、訓練中に強く頭を打って物事を忘れてしまうという事がね」


 信じてる様である。


 「何かしら思い出せる事は無いかね?出身地や...自分の名前...何でも良いんだ」


 「いえ...すみません、何もありません」


 なんか言って後から矛盾が出たら面倒だ。


 「そうか...では何故この街に来たのかね?」


 「特に理由はありません、さ迷っていたら遠くに人が見えたので向かってみると街が見えました」


 「そうか...悪意は無いか(小声)」


 なんとかなりそうである。


 「私は街に入れてもらえるのてしょうか?」


 「あぁ、大丈夫だ。私が手続きしておこう、何か名簿に書くとりあえずの名前は無いかね?」


 よっしゃあ!なんとかなった!。


 「あぁ...ではアーサーで」


 アーサーは適当だ、たまたま思い付いた。


 「ほぅ、アーサーか...わかった。ではアーサー、ここで少し待っててくれ、手続きを終わらせたら何か身分証の様な物を渡そう。なに、直ぐに終わる」


 このあと暫く待つと荒い紙製の身分証を貰い、俺は正式にアーサーとして街に入るか事に成功した。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ