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第1話

 どの高校にも居る暗い感じの高校生。 


 それが俺だ。朝、布団で目覚めると毎回思ってしまう事がある。今日も学校に行くのかと。高校に入って2年も経った今も友達は出来ず、授業の準備とか昼飯やトイレに行くとき以外は自分の机から1歩も動かずに学校が終わるのを待つだけの学校生活。


 俺って何で学校に通っているのだろう?。わかっている。就職する為に学校に行き、学歴を積んで少しでも就職に有利になる為だと分かっている。が、就職以外に使い道の無いことを態々学校に通って学ぶのは何故だろう?。


 現実逃避してもしょうがないな...あと2日行けば休みだし頑張るか。


 俺は今日も学校に行く準備をしに、自分の部屋から出て1階のリビングに降りていく。


 「おはよう...」


 一応言ってみたものの何の返事も無い。それは当たり前の事で、両親は共働きで朝俺が起きる頃には家から出ており、大学生の姉は通っている大学の近くのアパートに住んでるからだ。


 おはようと言うのも誰も居ないか確認する為だ。俺はテレビの電源を点け、机の上に置いてあった菓子パンを手に取るとソファーに座ってテレビでニュースを観ながら食べた。


 「つまらないな...」


 面白いニュースは無い。海外で何が起こったとか、俺が知らない有名人のスキャンダル、果てには誰かの死など高校生の俺には関係ない事ばかりだ。


 「テレビ局も酷い事するな...」


 各局がニュース番組で誰かのスキャンダルを寄って集って世間に晒すのは凄く可哀想だと俺は思う。


 「8時になりました○○の時間です」


 ポチポチとチャンネルを変えていると時間のお知らせが耳に入った。そろそろ本格的に準備を始めないと学校に遅刻してしまう。俺は急いで準備を整えると学校に出発した。


 *


 「これから授業を始めるっ、日直っ」


 「きをつけぇ、れいぃ」


 「「「お願いしまーす」」」


 今日も授業が始まった。そして黒板の内容をノートに書いていると毎回思う事がある。


 学校早く終わらないかな...と。


 来て早々に帰りたいと思うほど俺にとって学校はつまらない場所で、そんな所に何十分も掛けて来るのが馬鹿馬鹿しく思ってくる。


 未来の自分からでもタイムマシンとかテレポート装置でも送られてくれば良いのにと思う。そんな素敵な道具があれば学校がどれ程楽か。未来の科学が進んでたら絶対に俺は過去の自分に種々な装置を送ってると思うが、送られてこないという事は未来も現代と大して変わってないという事であり、この先もつまらないという事を示していると考えられる。


 「はぁ...」


 この様な馬鹿みたいな事を考えながらノートを書いていると着々と授業は終わって行き、最後の帰りの会が終わると下校の時間になった。


 「何かイベントでも起こればな...」


 この時の俺はまだ自分の人生を大きく変える程の大きなイベントが起きるなど考えてもみなかった。


 *


 学校からの下校中、それは突然だった。


 突然自分の足元に魔法陣が現れたと思ったら同時に視界、というより空間が歪み始め、俺は思った。


 「異世界転移キタァ!!」


 これほど大きな声で叫んだのは久しぶりだった。そして段々と空間の歪みが酷くなり最後には真っ白になって輝きだすと、俺はその輝きに耐えきれず目を瞑って、次に目を開けると俺の前には王座?に座る王様と思われる人物と、その護衛らしき騎士?に御偉いさん達が居た。


 「おぉ!勇者よ!そなたを待っていたぞ」


 俺は勇者らしい。まあ、それは良いとして俺は異世界転移したのだ。映画、ゲーム、小説、等で異世界物やファンタジー物には凄く憧れていた。とはいえ異世界に行く方法など知らず、ただの願望でしかなかった異世界転移、夢が叶ったのだ、これ程嬉しい事は無い。


 「......」


 嬉しかった。だが喋らないのは絶句とかではない、「おぉ!勇者よ!」とか言われても何て返せば良いのか分からなかったのだ。


 「困惑するのも無理はない...この世界はそなたの知らぬ世界、無理に呼んですまなかったとは思うが我らには後が無かったのだ、魔族に殆どの街を奪われ、残ったのは今我等が居る王都だけだ...」


 酷いな...いや、別に魔族とかいう奴等を責めてはいない。俺の異世界生活が最初から終わりかけてる件についてだ。俺は態々この国を助けよう等とは考えてはいない、魔族とかいうゲームとか小説では強キャラな奴等と何故戦わなくてはいけない?それに魔族が居るなら魔王も居るだろうし勝てないだろ。絶対に俺は死にたくないのだ。


 「......」


 「と、に、か、く、だっ!勇者よ、我等と共に魔を打ち払おうぞ!なに、恐れる事は無い、我が国も全面的な協力を行う、1人ではないのだっ」


 全面的な協力...最後の都市を残して壊滅的な国の支援なんて...きっと余り兵士も残って無いだろ。


 「いえ、お断りします。頑張ってください」


 俺は逃げるのだ。流石に他にも国は残ってるだろうし、その国に逃げれば暫くは大丈夫だろ。


 「...まっ!待つのだ!勇者よ、そなたには強力な神の加護が付いていおる!た、確かに魔族は強力だが、神の加護を受けた勇者なら十分倒せる相手だ!報酬だって約束する!衣食住だって国王の私以上の物を用意するぞ!?」


 この国は相当追い込まれてるのだろう。そして俺には神の加護が付いているらしい。この2つの事から分かるのは、この国に付いて良いことは少なく、神の加護を持った俺なら簡単に逃げられる、という事だ。体勢を立て直す。悪くいえば逃げると同じだが、戦術的撤退という言葉もあるのだ。


 「いえ、結構です」


 普通なら「無礼な!」とか言われそうだが向こうも現状を理解してるのだろう、騎士や御偉いさんも下を向いてしまっている。


 「......」


 「じゃあ、行きますよ?」


 「あぁ...引き留めても無駄だろう。誰か、勇者を外まで送って差し上げろ、他の者は2人目の勇者召喚の準備を始めるのだ、急げ!」


 他にも勇者を召喚出来るらしい。俺は騎士の1人に案内されて余り広くはない部屋を出ると外まで連れていってくれた。この国はきっと他の勇者が救ってくれるだろう。


 *


 騎士に外まで送ってもらった後。俺は唖然と魔族らしき集団に攻撃され炎上する城を見ていた。


 「あっ、終わったな...」


 正しく空襲である。魔族は高高度から恐らく魔法と思われる攻撃で一方的に攻撃している。一応地上からも魔法が飛び迎撃しているが1度も魔族には当たらずにいる。そもそも標的が違うのだ、デカくて動かない城を攻撃する魔族側と、空を飛び魔法を回避する魔族を攻撃する人間側。勝てる筈が無いのだ。


 「新しい勇者も間に合わなかったみたいだし...」


 俺は戦いに参加するつもりは無い。そんな俺が何故逃げずに見てるのかというと、簡単にいえば火事場泥棒をする為だ。王様の話ではこの街が最後の都市である事に間違いは無い。そして時期にこの街、この国は滅びる。俺はそこを狙うのだ。


 「食料も金も無いからな...」


 今の俺は大した装備を持っていない。精々下校中の学生が持っている様な物しか無い。食料はカロリーパンチが1箱と細チョコ棒が1箱、水分は500mlのスポーツドリンクが残り半分程、ぐらいしか持ってはいない。これでは数日で倒れてしまうし、生き残ってもお金が無ければ奴隷にされる可能性だってある。なので俺は火事場泥棒をやるのだ。


 暫くして魔族の魔法攻撃は終わり、次に街から逃げ出す住民や兵士等の残党狩りが始まった。しっかり確認はしてないが20人程の魔族達は半数が街の外、半数が街の内部に別れて人間を探しに行った。他人が幾ら死のうがどうでも良いが、目の前で死なれては俺もショックを受けそうなので、もう少し時間を置いてから盗みを始める事にした。




 1時間ぐらい経っただろうか?物陰に隠れていた俺は、辺りから何かが燃えて爆ぜる音と、柱が燃えて崩れる建物の音以外、何も聞こえなくなってからこっそり移動を始めた。標的は決まっている。まずは城の中からだ。理由は単純、金目の物から美味しい物まで何でもありそうだからだ。


 「徹底的に破壊されてるな...」

 

 王様の話では王都と言っていたこの街のシンボルである城は無惨にも崩れ去り、まるでこの国は滅びたと伝えている様な光景であった。入り口は崩れ、城も3分の1程の高さになるまで破壊された城は流石に物を探せる状態になく、俺は他の家を物色する事に決めてその場を去った。


 城から離れて少し歩くと元は大きかっただろう右側が吹き飛んだ金持ちが住んでただろう半分が立派な家を見付けた。俺は崩れた右側から家に入ると爆風で物が左の方に吹き飛んでいるが、まだ殆どの物は無事だった。


 「......」


 何も喋らず作業を続けた。1階2階と落ちてる物や倒れた引き出しの中を物色すると価値は分からないが、宝石の付いた指輪が5個ずつ横2列に嵌められた指輪ケース?や、ピアスとか首飾り等のアクセサリーが多数見付かり、最後に隠し扉らしき倒れた本棚の裏に隠された地下へと続く道を発見した。


 「全部本物だろうし売れば大金になるな」


 問題は売らないといけない所だ、未だに現金は見付かっていないので他の街等で宿を取る事も出来ない。いや、交渉次第でアクセサリーでも泊めてもらえるだろうが俺は交渉上手ではない、確実に本来の価値より安くなってしまう。怪しい地下室に現金があると願うしかない。


 俺はアクセサリーを登校用のリュックに詰め込むと地下へ続く階段を下りて行った。


 「ん?鍵が掛かってるな...蹴破れるか?」


 木造とはいえ厚い扉の様に見える。これだけ頑丈に守ってるという事はきっと凄い物が隠されている筈なのだ。絶対に開けて中身が欲しい。それに俺には神の加護がある筈だ、なんとかなるだろう。


 「おらぁっ!...」


 全力で蹴った。扉はものすごい音を立てて暗い部屋の中に吹き飛んだ。勇者補整凄い...。


 「スマホのライト...」


 俺はポケットに入っているスマホを取り出して明かりを点け、部屋の中を照らすと部屋が輝いた。そこにあったのは財宝もそうだが大量の武器が綺麗に壁に飾られていた。


 剣、槍、弓、杖、短剣、戦斧、メイス、双剣、更に1つしか無いが刀まであった。そして何故か欲しいと思ってしまう謎のオーラを放つ剣もあった、恐らく魔剣とか呼ばれる奴だろう。でも使ったら呪われそうなので使おうとは思わなかった。

 

 「とりあえず金目の物だな」


 部屋の中央に置かれた机の上にある金の塊...インゴットという奴だろうか?異世界は延べ棒にはしないのだろうか?。まあ、それは良いとして大きな布袋に入った金貨があった、出して数えると100枚ぴったり入っていた。金貨の価値は分からないが100枚もあれば宿ぐらい停まれるだろう。


 とりあえず金貨の入った袋をリュックに仕舞うと、次に金の塊を持っていくかどうかを考えた。


 「なんか勇者補整の力で重くはないけど...絶対に邪魔だしな...まだ食器も見付かってないし」


 正直持っていきたくない。だが態々インゴットにして保管するという事は異世界でも金の価値は高いと思われるので、出来る事なら持っていった方が良いと思われる...。


 「要らないか...金ならアクセサリーでどうにか」


 金の塊は置いていく事に決めた。そして最後に武器選びである。素手より1つぐらい武器を持ってた方が良いだろう。


 使いやすさならメイスや戦斧だが、やはり剣を使いたいと思う、それも双剣だ。俺みたいな素人じゃ自分を切りそうだが双剣の見た目には憧れる。とりあえず俺に使えるかどうか試す為に壁に、2本でセットなのかクロスしている2本の剣を持って振り回してみる事にした。


 「あぁ...うん、ゲームと同じモーションは再現出来るな...なんとかなりそう」


 俺は双剣を使う事にして鞘に剣を仕舞うとズボンとベルトの僅かな隙間に差し込んだ。


 「落ち...ないな...」


 落ちないと確認すると、次に食料を探す為に飲食店等を探す為に家から外に出て適当に歩き出した。


 *


 「燃えてる...」


 看板にフォークとナイフが描かれた明らかに食い物屋が炎上していた。流石に火の中に入る事は出来ない。そして周囲の看板からして飲食店の店も同様に燃えているか崩れてる状況で、食料が燃えてしまっていた。


 「駄目じゃん...」


 真っ黒になったパン(普通に食えない)...燃えてる小麦粉らしき物(舞い上がると粉塵爆発の恐れがある)...食料庫にあった焦げた肉塊(表面を削れば食えるが直ぐに悪くなる)...。


 「......」


 森で食材を取る事は出来る。だが異世界の植物など何が安全なのか分からず、それは動物にも言え、例え見た目がウサギと同じでも肉食動物に食われない様に毒があるかもしれない...いや、それを言ったら人間も全く違う可能性が...。

 

 「俺、なに食えばいんだよ...」


 その後も考えた結果、普通に燃えてない建物から探す、という事を決めて俺は街をさ迷い始めた。



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