隙間的詩集・壱
【代替】
あなたの苦しみが消えるなら
私が代わりにバラバラにされてもいい
死ぬほど辛いのなら
わたしが代わりに死んであげる
わたしの骨や皮や血や涙が
全てあなたの苦しみと入れ替わって
苦しみのあまりわたしの全てが弾け飛んで無くなったとしても
あなたの苦しみが取り除けるのなら
何度だって生き返れる
【暗闇】
何者にもなれない自分が憎い、憎い、憎い
私なんて消えてしまえばいいと毎晩布団の中で震える
慰めの声をかける人の声も私には響かない
慰めの言葉は虚しく木霊して、誰にも私の気持ちはわからないと自分の殻に閉じこもる
暗闇の中にただ1人取り残されたままでどうあがいても前に進めない
これからどうやって生きていけばいいのかさえわからない
世界から取り残された私はどこへ行けば良いのですか
【残像】
遠くに響く愛しい人の声
手を伸ばしても届かない
かすかに残るを残像を掴んで僕は虚しく天を仰いだ
朝出て夜帰らなかった君
何気ない毎日はもう二度とやってこない
思い出も何もかも全てが闇に飲まれ
僕の明日さえも奪われた
ただ一筋かすかに射す光は愛しい君の残像
それだけを頼りに僕は暗闇を歩いていく
【幸福】
幸せって何ですか
お金を手に入れることですか
愛を手に入れることですか
自由を手に入れることですか
何気ない日常が当たり前のように送れることですか
誰かを支配して服従させることですか
自分が思い描く世界を作り上げることですか
【枯渇】
渇きがわたしを苦しめる
何をしても体も心も渇いて
満たされないまま枯渇していく
やがてわたしは砂人形へと形を変え、
永遠に落ち続ける砂時計のようにサラサラと落ちて地面に消えた
【生死】
心の中のわたしが叫んでいる
「死にたい」
ここから飛び降りることができたらどんなに楽だろうと考える
あと一歩、あと一歩
毎日繰り返しては引き返す
わたしは中途半端な生き人形
【奴隷】
あなたに尽くすから
どうかわたしをひとりにしないで
もう一人は嫌だから
一人で眠る夜は心が冷たく凍えて
太陽が上るまで溶けてはくれない
あなたのためなら何だってする
だからわたしを捨てないで
【指先】
あなたの指先がわたしの手のひらに触れる
力強くて温かくて少しだけ線の細いその指がわたしは大好きだ
指先から伝わるあなたの温もりはわたしの心をそっと温めてゆく
わたしは手のひらを返し、あなたの指に自分の指を絡ませた
こんな他愛のない毎日の幸せを、指先の温もりが教えてくれる
【缶詰】
動く箱に沢山の人が詰め込まれ、缶詰になって出荷されていく
あなたたちはどこへいくのですか
オレンジ色の箱や水色の箱
黄色の箱や緑色の箱
出荷されていく皆の目は諦めと苛立ちが映る
そして今日も箱は動き続ける
出荷先に荷物を届けるために
【回遊】
動いている人も止まっている人も
立っている人も座っている人も
朝から晩まで忙しなく泳いでいる
枠の中に広がる果てしない海を求めて
ある者は知らない世界を求めて
ある者は人との繋がりを求めて
ある者は楽しい一時の夢を求めて
どうか海に囚われて溺れてしまわないように
あなたの世界は今「ここ」にある