吐き気
風呂に入るために、全てを脱ぎ、湯船に浸かると
嫌いな匂いが、胃に差し込んできた。
食べる気も、眠る気も失せ、ただひたすら、シャワーからの水滴の音を聞いていた。
この世界は、茶色いカモミールティーの様だ。
そう私が言ったら、あなたはどう思うのだろう。
私の胃は、鉛筆の尻で押した様な痛みで満たされている。
あの茶色いカモミールティーのせいだ。
桃子は、言う。
レズして来ていい?
桃子は、生まれつきパニック障害を持っており
電車の中や、人混みの中で、時々韓国人の祈祷師の様に踊り狂うのだった。
いいよ。
と、僕が言うと。
次の週末、桃子は、1人でかけて行った。
私は、いつも胃が痛くなった。
それに慣れようと、大嫌いなカモミールティーを飲んで
自分に言い聞かせた。
これが、美味いと感じられる様になれば、桃子を理解できる様になると。
桃子はいつもワガママだった。
私を見下し、継母が、子供を躾ける様に私をいつも叱った。
ある日、桃子は私と違う姓を名乗った。
前触れはあった。
しかし、どうする事も出来なかった。
あの膣による締めつけられるペニスの痛み。
それを楽しむ様に笑う桃子。
私は、私の全てを桃子に壊された様に感じた。
カモミールの匂いは、そんな痛みとも衝動とも言えない
胃の奥を鉛筆の尻でグリっと押されるような痛みを誘う。
それが、生きている証しなのかもしれない。
深い眠りの無い世界。
真っ暗なトンネルの中を、ただ一人、湿った土を身体中に貼り付けて
食欲もわかない、ただひたすら闇が広がる世界で、あなたなら何を願うのか。
カモミールの匂いの方がまだマシなのかもしれない。