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恋
古より幾万人がそれの虜となったのであろうか。詩人の言葉を見れば明らかである。
生の喜びや死への恐怖を詠う者は少なく、恋を詠う者のなんと多き事か。
決して彼らは恋を知ったのだろう。
しかしそれは悩み深き探求有るのみの一文字である。
そう、我々の悩みは一文字で現せられる。
天上の星々に魅入られ日々星を研究する者も、数学公式を解こうとする者も
等しく恋と呼ばれるものの呪縛からは解かれることはない。
恋とは一条のもつれ合った鎖であり、断ち切れぬ程に己の身に食い込んだ願いである。