その75 四次元干渉
しかし、面白いやり方だ。オークの周囲をすべて足元の水を利用して水で覆ってしまうことで窒息させるなんて。ルナならではのやり方といった感じだろう。俺では単純な出力不足でこの技を実現させるのに必要な水をまとめて制御することができない。
あんまり他に応用できる戦術ではないが、水がある場所ではかなり有用な戦術と言えるな。対抗策としては自分も水の魔法を使って打ち消すか、炎で蒸発させるか。だが、やはり単純な出力差で押し負けてしまうだろう。まあ、口を覆う水の内側に空気を発生させれれば問題ないかな?
「ルナ!こっちも無力化できたから、こいつら一か所に集めようぜ。」
「わかったわ。こいつらもそっちに送るわよ。」
そう言ってルナは水魔法で波を発生させることでこっちに無力化したオークの体を持ってくる。器用だなおい。さて、俺が無力化した2体と合わせて、一か所にポイだ。
「カイ、一匹意識を残してるみたいだけど何かしたいことがあるの?」
「ああ、四次元干渉をもう少し検証したいと思ってな。かなり強力なスキルのはずだし、使いこなせればかなり役に立つと思うんだよ。だけど、このスキルについてあまりにも知らないことが多すぎるから、今回の戦闘でも活用できなかった。今回を機にいろいろ四次元干渉について確認しとこうと思って、な。」
「あ、だからこいつを残してたのね。さすがカイだわ!」
おうおう、戦闘が終わった後に偶然そうしようと思っただけだからそんなに褒めないでくれ。過大評価だよ。まあ、褒められるのはうれしいから何も言わないでおくけど。
「あ、彩華!もう安全だからこっちに来ていいぞ!」
「はい。すぐに行きますね。」
彩華はそういうと背中についた大きな翼を広げたかと思うと一気にこっちまで飛んできた。すげー。
「お前って、飛べたんだな。」
「はい。これが、前に行っていた種族の特性スキルのうちのドラゴノイド側のスキルです。翼術というスキルで、まだレベルが低いので、飛び上がってグライダーのように滑空するくらいしかできませんが。」
「へー。かなりおもしろそうだな。後で見せてくれな。」
さて、本題の検証に移ろうか。別に、何も難しいことはしない。ちょっとスキルを使用して効果を説明文と照らし合わせたり、使い勝手の確認とかするだけだ。そして何気に、スキルの鑑定をしてなかったことに気づく。善は急げだ。さっさと鑑定。
【四次元干渉】
【一時的に四次元に影響を与えることができる存在になるためのスキル】
【三次元の存在であるこのスキルの使用者は四次元を直接認識することができないため、スキルを使用している間も自分が四次元に影響を与えられる状況にあり、影響を与えている、受けているという認識は発生しない】
【四次元の認識に長けた種族は存在し、その種族の特性を色濃く受け継いだ個体は認識が可能】
【スキル発動中はその場に存在するすべての多重的な三次元空間にアクセスすることが可能となるが、神もしくはそれを凌ぐほどの魔術的な才能と熟練度が無ければ自分が元から存在していた空間以外に行くことは不可能】
【スキル発動中は三次元の存在からは影響を受けなくなり、認識もされなくなるが、一部種族は例外的にそれが可能】
【スキルレベルの上昇で連続使用可能時間が増加し、単位時間当たりの必要魔力量が減少する】
あー、想定以上の分量だな。数枠程度の説明文かと思ったんだが、そんなもんじゃないな。説明が短いほど強いの法則は当てはまらないってか。実験の前に多少の説明文の吟味が必要そうだな。まあ、順を追って見ていこうか。
【一時的に四次元に影響を与えることができる存在になるためのスキル】
まずはここ。つまりこのスキルは四次元に干渉するためのスキルじゃなくて干渉できるような存在になるスキル。そこから実際に働きかけようとするのは自分次第って事だな。
【三次元の存在であるこのスキルの使用者は四次元を認識することができないため、スキルを使用している間も自分が四次元に影響を与えられる状況にあり、影響を与えている、受けているという認識は発生しない】
【四次元の認識に長けた種族は存在し、その種族の特性を色濃く受け継いだ個体は認識が可能】
俺がこのスキルを使用中にいろいろな世界が眼下に広がってるように見えて、あまり特殊な状況だと感じなかったのはここだな。四次元という状況をあくまでも三次元空間としてしか認識できないということだ。てことは、俺は一部の特殊な種族じゃないんだろうな。ある種族の系列が対応するのか、それとも種族ごとに個別なのか。
後者なら俺も進化を重ねればできるのかな?
【スキル発動中はそこに存在するすべての多重的な三次元空間にアクセスすることが可能となるが、神もしくはそれを凌ぐほどの魔術的な才能と熟練度が無ければ自分が元から存在していた空間以外に行くことは不可能】
ここはまだ何とも言えない。熟練度はこれからどうとでもなるが、才能はな・・・ルナならいけるんじゃなかろうか。まあ、ルナができたら何とか俺も通れる道をこじ開けてもらえるだろう。
【スキル発動中は三次元の存在からは影響を受けなくなり、認識もされなくなるが、一部種族は例外的にそれが可能】
【スキルレベルの上昇で連続使用可能時間が増加し、単位時間当たりの必要魔力量が減少する】
ここの部分が今日検証する所かな。連続使用可能時間と必要な魔力量、そして外部からの認識がどの程度無くなるのか。ルナと彩華に見てもらおう。
とりあえず検証とかする前に今のステータスとスキルレベルを確認だな。
かんてー。
【名前】カイ
【種族】リトルキメラ・亜種
【副種族】転生種 上位種
【性別】男
【年齢】0
【レベル】9
【ランク】E+
【体力・回復力】250+35
【魔力】250+56
【攻撃力】250+21
【防御力】250+21
【敏捷性】250+21
【称号】クソザコナメクジ 転生者 運命の赤い糸 同族喰らい 外道 悪食 逃げ腰 引きこもり 惨劇を齎す者 マゾ
【加護】転生神の加護 鍛冶神の加護 大魔王の加護 緑と硝煙の女王の加護
【スキル】
・通常:色欲4 筋力8 魔術師3 集中6 六感強化7 高速機動4 中級鍛冶3 魔剣創造4 鍛冶確率強化4 配下強化4 スライム経口摂取経験値増加7 小隊指揮5 雄叫び5 筋鎧6 守護9 超回復強化3 実験者1 情熱転化3(エロパワー)1 魔術的刻印術2 虹魔力結晶作成2
・称号:臆病3 危機察知4 全経験値量上昇4 運命の赤い糸6 胃強化8 同族殺し1 敵痛覚強化1 死体冒涜5 解毒9 神蝕1 オーラ3 引きこもり4 狂煌1 マゾ4
・加護:神託5 神格上昇2 魂容量増加2 火薬生成1 這い寄る緑の軍勢1
・ユニーク:鑑定3 合成2 転生法1 四次元干渉1
・種族特性:肉体換装1 強力吸収2 物理超越1 王権6 換装空間1 換装セット1
【魔法】全属性魔法3 獄炎魔法1 雷光魔法1 自然魔法1
【形態】角2 脳2 虹魔力結晶1
【因子】ルナの因子 原種乖離因子
【被眷属化】ルナ9
ふむ、レベルがほとんど上がってない・・・?戦闘はそこそこしてたつもりだが、もしかして基本的に相手を殺さない様にしてたせいで経験値が入ってないのか?漁村での戦闘も基本的にルナ任せだったし。まああと1レベルで10だ。楽しみにしておくとしよう。
さて、現在の魔力量が306。これをベースにして考える。
「ルナ、彩華、今から俺があるスキルを使う。まあ、何のスキルのことを言ってるのかは見ればわかると思うから、発動してた秒数を数えてくれ。ああそれと、発動中に俺のことをどれくらい認識できるかも確認してくれ。」
「はい。」
「了解よ。」
それじゃ、四次元干渉、発動。
急に視界が開け、幾つかの空間が漁村に多重的に存在していたのがわかる。でもやはりもとにいた漁村の空間以外は行こうとしても行けない。さて、この状態で少し待ってみようか。
そして少しの時間ののち、急に周囲が真っ黒のなったかと思うと、また周りが見えるようになっていた頃にはもう漁村に戻っていた。
「ふぅ、それで、どんな感じだった?」
「よくわからないけど、そのスキルが発動してた時間は大体3秒くらいだったと思うわ。」
「そうですね。私もそれくらいでした。ところで、今発動したのはどんなスキルだったのですか?」
「四次元干渉というスキルで、実際どんなスキルなのかはあまり把握できてない。説明には【一時的に四次元に影響を与えることができる存在になるためのスキル】って書いてあるんだがな。ところで、発動中は認識に長けた種族以外は認識ができなくなるって書いてあったんだが、俺のことが見えたりしてたのか?」
今日の2つ目の確認したいところだな。中の様子はわかっても外から見た感じは他人に見てもらうしかない。自分を俯瞰的にみるスキルでもあれば話は別だが、そんなスキル知らないし。
「私は全く見えなくなりました。そこにうっすらと気配は残っていたのですが、もともとそこにいたという事を知っていなければ気づかない程度です。」
「私は普通に見えたわよ。ちょっとカイの体が薄くなった気もしたけど、支障がない程度だったわ。」
「へー。流石はルナだな。やっぱり魔法特化の種族だからか。」
「ほ、ほほ、褒めたって何も出にゃいわよっ!!」
おーおールナ。にやけが抑えきれてないぞ。かわいい。
さてさて、気分を切り替えて。チェックしたいのはあと2つだな。
まずは鑑定。
【魔力】6/250+56
300減ってるな。そしてルナが行ってた3秒というのも含めて考えると、使用効率は100毎秒といったところか。効率は決して良くないな。戦闘中にポンポン発動できるものではない。
そして、最後に調べること。それは豚も一緒に連れて行って放置したらどうなるか。このスキルが自分以外の対象に与える影響が気になるからな。スライムたちは俺と一緒に来れたから豚は四次元内に放置してみる。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
そしておよそ30分後、再び視界が開けて多重に存在する空間が全て見えるようになる。
豚は・・・いない。連れてくるのに失敗してしまったようだ。
力量が足りないのか、スキルの能力的に不可能なのか。検証したいところだが、今日はもう遅いし、よく考えてみたらそこは検証しようがないし。
てことで四次元干渉を解除する。まあ解除しなくても数秒で勝手に切れるんだが。
「ルナ、彩華、帰ろうか。この豚はまあ、連れて帰って縛り上げとくか。ルナ、頼めるか?」
「任されたわ!それじゃ、帰るわよ!」
私は今国外にいるのですが、しばらく通信の届かない場所に行くことになってしまいそうです。戻るのは今月末。その時まで投稿は停止します。申し訳ない。次回投稿はできれば9月に入る前にはしたいですね。