その74 戦争
【王権所有者により戦争が開始されました】
【地名:シーベルは勝者の国の領土となります】
【戦争の開始に伴い、王権が戦争可能なレベル、6まで強制的に引き上げられます】
【個体:カイ、ルナ、クイーンの王権のレベルが6になりました】
久しく聞いてなかったアナウンス(?)。まさかオークと小競り合いを起こすだけで戦争扱いになるとは思わなかった。一般的な戦争とはかけ離れてるような気もするが。王権が絡むときだけ戦争という単語が別の意味で定義されてるのかもしれない。
【戦争】
【王権所有者のみ発生させることができる】
【複数国間の問題解決のために使用される】
【通常は国の王権所有者が相手国の誰かに対して王権で発生させることのできる特殊な書類を送ることで宣戦布告を行うが、王権所有者が直接出向くことでその場で宣戦布告、開戦が可能】
【前者の方法で宣戦布告が行われた場合、相手国の王権所有者は必ず戦争の発生を認知するが、後者の場合、口伝で王権所有者に伝えなければ開戦は認知されない】
へ~。つまり今俺はオークランドに後者の方法で宣戦布告した状態なんだな。この豚を適切に処理すれば相手国の王(どうかはわからないがとりあえず王と呼ぶ)に伝わることもないから援軍の心配も無いってことだ。
それと、セレネ様の王権レベルが上がらなかったのはすでに大魔王時代に6以上に上げたからかな?うん、セレネ様のことだし普通にカンストまで持っていってそうだが。
さて、さっさとやりましょうかね。ルナに対して殺すなと言った手前、俺も殺すわけにはいかない。破壊力のある技は封印だな。それに、相手の力量と手の内がわからない以上、ひとまずは様子見だな。ルナに念話を送る。
『ルナ、俺が前であいつらを押さえておくから殺傷力の低そうな魔法を後ろから差し込んでいってくれ。』
『了解。頼んだわよ!』
念話は相手に会話の内容がばれなくて便利だな。念話を傍受するためのスキルがあるかもしれないから過信は禁物だが。とにかく今は戦いに集中しようか。
相手の武器は全員槍。こっちは俺が拳、ルナは武器を使わない魔法だ。船から何かしらの武器を持ってきておけばよかった・・・。
お互い武器を構えた状態が続く。先に動いたのはオーク、隊長らしきオークが指示を出して、左右からオークが1匹ずつ弧を描くようにして、そして残りの3匹がまっすぐ向かってくる。
魔力戦闘術を発動させて体内に土属性の魔力を巡らせていく。単純な物理的破壊力の強化だ。魔力を媒介するものが無いせいで微妙に効率が悪いが、仕方ないか。そのまま真ん中の3匹に突っ込んでいく。ルナなら左右の2匹くらい抑えれるだろう。
先ずは軽い牽制だ。
「炎蛇!」
炎でできた蛇が俺の手から放たれて意思を持ったかのようにうねりながら敵に真正面から突っ込んでいく。
オークたちは一瞬驚いたような素振りを見せたが直ぐに持ち直して左右に分かれて避ける。まあ、こんな馬鹿正直な攻撃が当たるとは俺も思ってない。
だが、3匹が左右に分かれるとそれは必然的に1対2になる。分断できればそれで十分だ。
1匹になった方に向く。
相手はそれ相応に訓練を積んだ兵士らしく、既に槍を構えて突きを繰り出す準備をしていた。思った以上にずっと反応が早い。伊達に騎士団をやってるわけじゃないようだ。
だが、俺も多少なりとも実戦で鍛えてるんだ。簡単に負けてやるつもりはない。
「物理超越、質量増加!」
相手の槍の先端を急激に重くする。そしてすかさず、
「粘性無効!」
足元の水の粘性を限りなく少なくする。これで抵抗を受けることなくスイスイ動ける。
一気に踏み込んで、拳に魔力を集中させて、オークの腹に一気に打ち込む!
「はぁっ!!」
ドンッッ!!
「ごほぉぉっ!・・・ゲホッ!」
1匹上がり!次!
「土壁!」
地面からせり上がった土の壁が残ったオーク2匹の足元を掬いあげつつ腹を強烈に打つ。
これで1匹は戦闘不能に、隊長格であるもう1匹もほぼ動けない。
そしてルナの方はと言うと、既に処理し終わっている。
ふむ、少しだけ試したいことがちょうどあったから、ちょいと実験でもしましょうかね。