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その73 足がかり

「ところで、生贄にされてしまったのはなんでエリスだったんだ?偶然か?他の人はいくらでもいただろうに。」

「なんでもエリスは人間以外の種族の先祖返りの類らしく、禁術の触媒に向いていたらしいです。私の種族が変化してしまったのもこのへんが関係してるのでしょうね。ところで、エリスが今の村の状態を見たいと言っています。いいでしょうか?」

「体は動き回ったりしても問題ないんだよな?」

「はい。すでに多少は歩き回りましたし。」


 と、ここでセレネ様が、


「ならば我はここに残ろう。やりたいこともあるしの。ちなみにルナは漁村の例の小屋に行っておるから声をかけると良いぞ。」

「はい。じゃあ、行こうか。もう船の外に出たのならわかると思うが村はすぐそこだ。」


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「今はこんな感じ。簡単に言うと水浸しの更地だな。あそこに一軒だけ残ってるのが俺たちがこの村の中で拠点として使ってた場所だな。ほぼ使わなかったけど。ところで、エリスは大丈夫なのか?ここに住んでたんだろ?」

「大丈夫そうですね。もともと捨て子としてこの村で拾われただけなので思い入れはあまりないらしいです。それにしても、人が集まってますね。それに、あれは見事なテンプレ通りのオークでしょうか。」

「そうだな。おっ、あれはルナか。でも変だな。人間とオークって仲いいのか?」

「少なくともエリスの時代はそんなことはなかったらしいですよ。この世界については、ほぼ何もわかりませんが、あれは何かよからぬことが起きているのではないでしょうか。」


 そうだな。遠目だが、ルナと村民たちが、オークと言い争ってるようにも見える。とにかく行ってみるか。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 バシャ バシャ バシャ


 近づくにつれて言い争う声がはっきりと聞こえるようになってきた。オークは5体、完全武装しており剣呑な雰囲気を隠そうともしていない。


「ここはオークロード様の領地だ。さっさと明け渡せ。」

「何言ってるの?ここは私たちが解放したんだから私たちの場所でしょ!?」


 いやルナそれは違うぞここはもともと住んでた人たちのものだぞ?言わないけど。


「そうです。今は何もありませんが、復興したらルナ様ご一行にここの土地を渡してもいいというのが我々の総意です。ルナ様ご一行がいなければ我々は永遠に閉ざされたままだったでしょうから。私たちにできる範囲で、この恩に報いることにしたのです。あなた方が誰だか知りませんがさっさとお帰りください。渡すものは一つもありません。」


 ん、ここはオーク相手に領土争いをやっていたのか?いや、村の状況的に長い間争ってた可能性はないと思うが。ずっと放置されてたはずだし。


「あ!カイ!カイもこいつらに何とか言ってよ!」

「ふむ、まあ俺はそもそも状況の把握すらできない。1からとは言わないが状況を簡単に説明してくれないか?」

「それは我々からしよう。」

「えっと、そちらさんは?」

「オーク、俺たち全員名前は無い。所属は、オークランド王立豚頭とんとう騎士団だ。」

「ほう。それで、豚の国の豚騎士団がうちに何の用かな?」

「豚騎士団っ!?・・・こほん。ここは、35年前から第6魔王である我らがオークランドの国王オークロードであるジークフリート様が所有権を主張している。それと、我らは誇り高きオークランド王立豚頭とんとう騎士団、決して豚などではない。そこは間違えないでいただきたい。」


 35年前から領土を主張していたから寄越せと。それが本当ならば言いたいことはわかるが、なぜ今更くるんだ。


「彩華、どう思う?」

「めんどくさいことはカイたちにやらせて美味しいところだけ取っていこうという魂胆かと。」


 だよな。前から主張してるんなら今ごろ自分で何とかしてる筈だろって話だ。


「ルナは?」

「同じくよ。手柄だけ取りに来た薄汚い盗人ね。」


 ルナも同意見か。やっぱりそうだよな。考えが見え透いてる。


「俺も同意見だ。お前らが手柄を横取りにしに来ただけだと思うし、俺たちが頑張って手に入れたものを渡すつもりなんて毛頭ない。もしそうじゃないというのなら謝罪するが、そうなんだろう?35年とか言ってる割には過去に来た様子が全くないし。大方入れなかった場所が入れるようになってるからとりあえず自分のものにしとこうとか言う考えだろ?お前のとこの支配者は。」

「・・・頭は回るようだな。確かにお前が言ったことは事実だ。だが、ここにはお前たちしかいないのも事実。数千年の間閉ざされた場所であり、他の国がいまだに足を踏み入れていない以上、領土の主張は早い者勝ち。最初にお前らを殺した者がこの土地の所有者となる。そしてそれは、国王オークロードたるジークフリート様だ!ここの人が非協力的なら殺してでも奪えとジークフリート様より命令されている。覚悟するんだな!!」


 隊長っぽい、少し豪華な鎧を身にまとったオークがそう言うと、オークたちが一斉に武器を構える。


 うーむ、自分がこの土地を所有するなんて考えもしなかったが、こいつの理論で行くと俺らがきっちり防衛したらここは俺らの土地になるのかね?村民の代表者っぽい人もあげるって言ってたし。


 何気に魅力的な提案だ。セレネ様の目標の足掛かりになるかもしれないし、何より面白そうだし。よしよし、いっちょやったるか。


「ルナ!俺の王としての、そして、お前の女王としての初仕事だ!こいつらをブッ飛ばしてこの土地をキメラの国の領土にするぞ!」

「了解よ!話し合いなんかよりわかりやすくていいわ。ぽこぽこにするわよ!」

「彩華は危ないからいったん離れててくれ。それとルナ!情報収集はしたいから殺さないようにするんだぞ!」

「「はーい。」」


 にしても、ルナってこんな戦闘狂みたいなキャラだっけ?可愛いなあ。

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