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その70 ヤンデレ

「うーん、なんじゃこりゃ。黒い・・・球?」


 まさに黒い球と呼ぶにふさわしい。大きさは直径1メートルで真球。基本的には真っ黒でところどころに濃い紫が浮かんでは消える。球の周囲は薄暗くなっており、球が光を吸収しているようにすら見える。


 だがまあ、最近理解してきたんだが俺たちキメラはルナみたいに種族的に全属性持ちとかじゃない限りは基本的に闇属性だ。前に俺が光属性をうまく扱えなかったときにあれがセレネ様の加護によるものだと言ったが、半分正解で半分は間違いだったっぽい。


 セレネ様の加護による影響ももちろん大きかったが、生来の種族的なものも大きかったらしい。ルナは進化を通して克服したようだが。


 さて、話を戻すと、一般的に考えたらこの球はまあヤバい色をしてる。心の準備ができてない人がいきなりこれを見たら本能的な恐怖を感じて逃げ出すかもしれない。


 だがむしろ、俺にとっては心地いいし、大魔王であるセレネ様はもちろん、全属性対応型とはいえどキメラのルナも同じように感じているようだ。


 まあ・・・スライムたちはその限りではないようだが。


 みんな初めて見る黒い球が怖いようで、俺たちの後ろに隠れてブルブルしている。唯一ブラックだけが俺の後ろから覗くことに成功している。


 さて、この球をどうするかだ。何かが入ってるかもしれないし、入ってないかもしれない。でも入ってるという可能性が捨てれない以上下手に壊したりするわけにもいかない。もどかしい。


「我もずっと封印されておったから、これが何なのかは見当もつかんのう。闇属性の何かというのは理解できるのじゃが・・・。」


 セレネ様もこの通り、割とお手上げ状態だ。


「あっ!」


 おおルナ、何かに気づいた様子。


「これ、カイと一緒よ。私はカイより1日早く生まれたけど、私が生まれて最初に見たのがこんな感じの黒い球よ。そのあとカイが入った球はガズラに預けられたわ。」

「ほうほう、その時、俺がどのようにして生まれてきたかはわかるか?」

「クイーンが魔力を流し込んでたのは覚えてるわ。多分魔力を流したら生まれるんじゃないかしら。」

「そうですね。確かに言われてみたらカイが生まれた時の卵にそっくりです。あの時はよくわからないものを産んでしまったと思いましたね・・・。」

「なるほど、じゃあクイーンが魔力を流してくれるか?経験もあるようだし。」

「もちろんです。それでは、いきますよ。」


 てことで、クイーンに魔力を流し込んでもらう。


 そして・・・1分くらいぶっ通しで流し続けたくらいでだろうか、反応があった。


 ピキ、ピキピキ・・・パリィィィン!!


 球が一気に弾け飛ぶ。中から出てきたのは・・・裸の、ぱっと見で人間。でもおそらく別の種族なんだろう。悪魔を彷彿とさせる角や翼がある上に、体の所々に鱗がある。


 でも顔が非常に既視感がある。う〜んう〜ん。


 ・・・あっ、思い出した。


「おい、どうしてお前がこんな所にいるんだ。」


 ペちぺちぺち


 うーんだめだ。顔をぺちぺちしても起きない。ぐっすりだ。しゃーないか、はっきりとした情報ではないが数千年は眠ってた計算になるらしいからな。


「空も晴れたようだし、いったん船に戻らぬか?そ奴もここに放置するわけにはいかぬからの。」


 あ、言われてみれば・・・。にしても、明るくなってよく見えるようになったがひどい有様だな。もともと建造物もボロボロでいつ崩れてもおかしく無いような状態だったが、崩しちゃったからなぁ。現在はさらに悪化、膝まであるような水の中に1メートル大の腐りかけた木材がぷかぷかと浮かんでるような状態だ。


 でもまあ、太陽が照ってるから水面がキラキラと輝いて、見様によっては綺麗かな。


 ちなみに、語り部とかの人たちは普通に放置してきた。俺たちは吹っかけられた喧嘩を買っただけであって別に何かがしたかったわけではないからな。でも今後利用できそうなら遠慮なく利用する。一応助けたみたいな感じになってるし。やっぱり利用できるものは利用しなきゃだめだよね!


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 船まで戻ってきた。さっきの人は船に備え付けられてるベッドに寝かせてある。さて、暇つぶしがてら鑑定してみるかな。


【名前】彩華さいか

【種族】淫魔サキュバス竜人ドラゴノイド

【性別】女

【年齢】3017

【レベル】1

【ランク】D⁻


 全部覗くのは失礼かと思ったから一部分しか表示しなかったんだが、いきなり謎の単語が出てきたな。


淫魔サキュバス竜人ドラゴノイド

【情報が存在しません】


 ・・・は?いやなんだよ情報が存在しませんって、じゃあ、セレネ様の知識にアクセス。ここなら何かあるだろ。


 ・・・・・・・・・・・・何もないな。いったいどうなってるんだ?うーん、彩華の目が覚めた時に聞くしかないか。ああ、もう察してるかもしれないがこいつが前世で俺を殺した張本人、俺の彼女だった彩華さいかだ。


 にしても、どうしてこいつが異世界まで来てるんだ?俺は死んだから考えられなくはないが、いやふつうは考えられないんだけども、こいつは別に死んでなかったし、何か深刻な持病があったなんて聞いてない。


 あ・・・俺を追って自殺したとか?自意識過剰かもしれないがあいつはそんな奴だった。所詮ヤンデレというやつだ。本当に美人だったし好きだったんだがまさか嫉妬で殺されるとはね。


 だがもう1つ、転生したにしても俺よりも数千年前の時代に転生したのがよくわからない。これも、直接聞いてみるしかないか。まあ、転生なんてよくわからないシステムだ。何かわけのわからない説明があるに違いない。


 早く、目を覚ましてくれないかな。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 そんなこんなで3日ほどたった。彩華さいかはなかなか目を覚まさず、まあ丁度いいということで俺たちは漁村で起きた色々の後処理をしている。


 獣から人間に戻った人の保護がメインだ。みんなを例の小屋に集めてそこで過ごしてもらってる。一番驚いたのは最初に保護した男から聞いていた「神父」が変化した姿が語り部だったということだ。やはり雨に対してある程度の強さを持っていたせいで人と獣の間の存在になってしまったのだろうか。


 まあその辺は今更わかりようのないことだ。


 次に後処理の一環として、保護した人々のために家を建てたわけだが、そこでセレネ様が予想外の活躍をしてくれた。まあ活躍というか、すっかり漁村の人々のリーダー的存在になった神父と話をつけてくれたのだ。おかげで俺たちはこの漁村の統治者になることができた。いったい何をどうすればそのような交渉結果になるのかがわからないがまあセレネ様だし。


 セレネ様も世界侵略の足掛かりができたと喜んでいた。かわいい。


 まあそうこうしていて、ついに動きがあったのはそこからさらに4日経ってからだった。

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