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その68 漁村消し飛ばし計画

「ところでセレネ様、さっきとは全く関係のない話ですがセレネ様の神格上昇スキルはどんな感じですか?」

「む?カンストじゃぞ当然。神格上昇のスキルレベルはある意味知名度で上昇するからの。我は一時期は世界中の生物に知られておったし、今でも伝承の中で語られておるじゃろう。カンストせぬわけがないという事じゃな。して、どうしてそんなことを聞くのじゃ?」


 セレネ様は可愛らしく首をかしげながら聞いてくる。


「いえ、どのようにすれば神格上昇のレベルが上がるのか気になりまして。やはり強くなるためにはそのあたりから攻めるのが良いかと思ったんです。」

「なに、心配するでない。この漁村を解放したら最低でも国中にはずっと封じられておった漁村を解放したものとして我々の名が知れ渡る。我々の知名度は嫌でも上がるじゃろう。その時に神格上昇は上がるじゃろうて。」

「楽しみです。まあ、解放したらいったんは情報収集ですね。せめてここがどの国の領土かを確認しないと。確か、封印の空間の内部でセレネ様が話してましたけど、各国がセレネ様の体のパーツを一個ずつ封印して管理してるんですよね?ひとまず旅の目的はセレネ様の完全復活という事にしましょう。そのころにはほかのメンバーもかなり強くなってるはずですし。そしたら何をしましょうかね?」

「その時に考えればよかろう。うむ、じゃが、あの時の世界征服の続きをやってみるのもいいかも知れんの。」

「いいですね。その時はぜひ一緒にやらせてください。」

「当然じゃ。貴様には大事な役割を与えてやろう。」

「なんですか?」

「・・・まだ決めておらぬ。」


 予想外の返答にすこしぽかんとした顔を晒してしまう。


 あぁ、セレネ様めっちゃ笑顔だなぁ・・・俺のこといじってめっちゃ楽しんでらっしゃる。


 まあ今に始まったことじゃないしなんか最近慣れてきた気がする。


 さてと、先のことを考えてたらこんな鬱展開を具現化したような雰囲気の物理的にも雰囲気的にも暗い漁村さっさと終わらせたくなってきたぞ。よし決めた。今俺たちがいる小屋以外はまとめて消し飛ばそう。そうしよう。月下の民は殺しても普通の人間に戻るみたいだし。


 よし、やるぞルナ!


「何をよ?」

「この村、消し飛ばす、ルナ、やる。この小屋以外、消し飛ばす。」

「なんで片言なのよ・・・。わかったわ。そういうことならさっさとやっちゃいましょう。こんな場所にずっといて気が滅入ってきちゃってるし。」

「じゃあ、俺が月光を隠して敵を弱体化させてから武器を準備するからその間にルナはアレの発動に必要な魔力を用意しておいてくれ。特大ので行くからな。ありったけで頼む。」

「了解よ。」

「よし、セレネ様、一応危険なので部屋の中心に寄ってください。クイーンもこっちに寄って。スライムたちは・・・まあ高さ的に大丈夫だろ。」


 さてと、ルナはちゃんと魔力を集め始めたし、俺は自分の仕事をしましょうかね。


 まずは月を隠すところからだな。雲を発生させて隠せばいいだろう。


 雲の発生原理は実にシンプル。気体と液体の水が共存しているとき、機体の水分子の数は温度のみによって決まって、その数は温度と正の相関がある。つまり、ぎりぎりまで気体になってる状態の水(飽和状態の水蒸気)を冷やしてやれば気体でいられなくなった水蒸気が水となって現れる。


 それを大自然のスケールでやったのが雲だ。


 つまりこの漁村は常に水浸しだから空気中の水蒸気は常に飽和してると考えられる。よって理論上はこの漁村の空気を冷やしてやれば雲が発生することになる。だがまあ、現実はそんなに簡単じゃない。


 過冷却という現象は知っているだろうか。水を0°C以下に冷やしても氷にならないアレだ。多分気体→液体でも同じことが起こった気がする。はっきりとは覚えてないけど。まあ大事なことは、ここの空気を冷やしたところでうまく雲ができないかもしれないという事だ。


 ここで大事になって来るのが凝結核だ。簡単に言うと空気中に浮かんでる塵。何もない空間に水蒸気があったとして、それを冷やしても、冷えるだけで液体にはなってくれないかもしれない。でも、過冷却状態の水をかき混ぜたら氷になるように、きっかけを与えれば状態変化してくれる。


 気体の場合、そのきっかけが凝結核と呼ばれる細かい塵だというだけだ。本来なら凝結核なんて気にしなくていいんだけどここはさっきから雨が降ってるからな。もともとあった凝結核はもう流されてしまってるだろう。


 てなわけで今いる小屋の家具を全部かき集めて、燃やす。これでできた煙や灰が凝結核だ。


 それらを風魔法で上空に打ち上げる。ここでもたつくとせっかく打ち上げた灰がまた雨に流されて落ちてくるから、ここからはスピード勝負だ。


 灰が上がったら上空の空気をかき混ぜて灰を拡散させる。今度は炎魔法を利用してぐぐっと冷やしていく。炎で冷やすのも変な話かもしれないが、炎魔法の本質は温度の操作、別に加熱するだけが炎魔法じゃない。と、いうことをセレネ様に教えてもらっててよかった。


 そうそう、今更だけど大変なことに気づいたぞ。俺、ごく自然に月を隠そうとしてただろ?てことは逆にいうと月はずっと出ていた。でも、俺たちが来たことによって再び雨が降り始めた。おかしいだろ?


 改めて月を見てみる。俺が雲を新たに展開したことで月自体は隠れてるが、微かに月の光が漏れててそこに月があるのがわかる。で、その月のさらに上にこの雨を降らしてる雲がある。


 普通に考えて雲が月の上に展開するのはありえない。つまり、これはまだ予想に過ぎないが、この月は誰かが作ったもので、この漁村でのすべての出来事は人為的なものなのではなかろうか。最初から月が沈まなくなったんじゃなくて誰かが上空をすべて覆い隠した状態で月に似せた巨大な球を浮かべた、といったところか。ほかの可能性も考えられるが、確実だと言えるものは一つもないな。


 まあ、わからんことをぐだぐだと考えてもしょうがないか。深く考えずに漁村消し飛ばし計画を進めようではないか。

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