その64 次の一手
その後は特に何事もなく帰宅した。帰り道では最近俺の腕に発生してる違和感についてセレネ様と相談したりして、面白い話を聞くことができた。
まあ、その話はそのうちでいいだろう。
帰宅したことだし、クイーンに報告じゃい。
「ありがとうございます。後は好きにしてきて良いですよ。世界の見聞を広めるもよし、食べ歩きの旅をしてもよし、です。あ、何をするかによっては私もついていきますよ。」
とのことだ。じゃあ一晩寝て疲れを癒したら俺たちを侵略した奴らの船に乗って人間の国に行きましょうかね。ゆくゆくは侵略する予定だし、情報収集だ。
そして確か、今日はルナと一緒に寝る番だったな。ふふ、俺は幸せ者だ。
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ルナとは特に何もなく夜を乗り切れた。普通に抱き枕業務をこなしただけだ。いや、訂正。一個だけあった。発生したイベントは、真夜中だったな。何か重さを感じて起きたところ、俺の上半身の服が剥がされて腰のあたりにルナが馬乗りになってた。
意図的にやったとしか思えないような状況だったが、ルナの目はほぼ閉じてたから、寝ぼけてやったっぽい。ルナ、恐ろしい子。
ということで、人質も回収して。船から敵国の文明レベルを察するに、ほぼ完全に木製で帆の質も悪い。蒸気機関も搭載してないことから、あまり進んでないと見た。
が、俺は間違っていたようだ。魔法の存在を完全に失念していた。
この船は、かなり面白いものを搭載してるようだ。
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今俺たち一行は海の上にいる。つまり船の上だな。この前言ってた敵国の船を魔法やら何やらで諸々強化したものだ。非常に快適な旅だよ。
唯一の心配があるとすれば自分たちがどこにいるのかわからないってことかな?うん。今になってすごく心配になってきた。まあ、あの人間たちがきたんだから大丈夫だろう。多分、うぅ、胃が痛いぞ。あの敵の指揮官のやつ嘘の方角を教えやがったな?
まあ、多分大丈夫だ。
食料と水ももう安定供給する手段はある。水は魔法で生み出せるし、どんなに魔力が枯渇して魔法が使えない状態になったとしても蒸発と凝縮のプロセスを経て純水は作れるしな。
食料に関しても、スライムたちのおかげで食事も安定供給できるようになってる。実によろしい。
まあ、優雅に船旅を楽しもうではないか。
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おっと陸地が見えてきたぜ。かなり遠いが、もう少しだな。
あ、人間の国ではどんな設定でいくのか決めるのを忘れてたな。まあ、全員人間っぽい見た目だから割と何とかなりそうな気もするがな。
と、それにしてもさっきから霧が濃いな。微妙に寒気もするし。港にもだんだんと近づいてきたが何か様子がおかしい。
ここから見た感じだと古びた漁村のようだが、動くものが何もない。ただただ静寂が辺りを包んでいる。本当に、何かがおかしいな。
そんな感じで、港に船をつけたんだな。
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「それにしても、本当に不気味ですね・・・。誰もいないし、そこら中水浸しだし。」
クイーンの言う通りだ。というか、水浸しとかそんなレベルじゃない。村の通路全てに膝近い量の水で浸水してる。それに、周辺に建ってる家は壁が腐ってていつ崩れてもおかしくないように見える。
おっ、看板だ。なんだなんだ。
「ようこそ!漁村:シーベルへ。」
何の変哲も無い看板だな。ここで何が起きたかの手がかりにはならない。
ん・・・近くの家の中から何かの気配を感じるな。話が聞けそうだな。
と、そう思ってたんだが、そうでもないらしい。俺が感じる気配は1つだけ。でも、その気配の主はずっとボソボソと話し続けてるのが聞こえる。ずっと1人で誰もいない所に話してるということだ。確実にヤバい。
でも、これしか手がかりがないんだ。接触を試みるしかないな。