その63 最後の巣
新しい小説「ミリアム・ウォーカーの秘密」の投稿を始めました。ぜひそちらもよろしくお願いします。
だんだんと近づいてきた。それに伴って地面がだんだんとぬかるんでくる。しかも沼地とかそういうのじゃない。もっとこう、粘液、みたいな。うん、ぬかるんでるって表現は適切でなかったかもしれない。ぬめってる。質感としてはうちのエレメンタルスライムたちを溶かした感じだろうか。要するにとても柔らかいスライムである。俺が何か不謹慎な想像をしてると分かったのか、スライムたちから鋭い視線が贈られるが、気にしない。
さて、そんな中俺は何かの気配を感じた。
かなり遠くの方で、南泰生物のようだ。最初はカタツムリかナメクジの魔物だと思ったんだがな。実際に会ってみると全然違って、俺にはファンタジー的な発想が足りなかったようだと、痛感させられたな。
ほら、あいつだよ。ファンタジー代表みたいな、物語序盤で出会うちょう弱いやつ。ゴブリンじゃないぞ?そいつとはもう出会ってる。今回はあいつだ。まんまるとしてて、ぷよっとしてて、のほほんとした笑みを浮かべてる、青い玉ねぎとか言われてるあいつ。スライムだ。
もちろん、ここにいるのは俺がさっき描写したみたいな可愛いやつなんかじゃない。もっとべちゃっとしてるし、顔なんかないし。まあ、移動する半透明の水溜りだな。
ちなみに色はさまざま。赤青黒、などなど。数えればきりはない。不可勝数、だな。
ま、どうでもいい薀蓄はさておくとして、こいつらは基本的にずっと非アクティブらしい。
さっきからもう既に数十体とはすれ違ってるが、1体も襲ってくる様子がない。今までの魔物とはえらい違いだな。ルナとセレネ様もスライムのことを抱き上げてかわいいとか言い始める始末だ。仲がよろしいようで、微笑ましい。
ちなみに体に付着したぬめりは水魔法で洗ってから乾かせば問題ないらしい。
まあいいや。さっさと進んでいきましょう。
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到着だ。
巣を見る。大きい。流石地上で最大の巣と言うだけあって、今までとは比べ物にならない大きさだ。でもそれだけである。
まあいいや。ちゃっちゃか終わらせましょうか。じゃあセレネ様、やっちゃってください!
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終わった。終わった。非常にあっけない。さすがに巣までくれば少なからず抵抗にも遭うとも思ってたんだが。まあ、平和なのはいいことだ。
ところで、さっきすごく興味深い現象を見たんだ。
普通の透明っぽい感じのスライムがいたんだがそいつが地面の土を体内に取り込んだ瞬間全体が茶色っぽく変色した。
これが気になって、他のも観察したところ、似たような変化がそこら中で起こってた。ここはより深い研究のために後で戻ってくるの確定だな。やはり魔物の進化はロマンあふれるものだ。
さて、やることやったし帰るとするか。
「ピュイー!!」
しかしそれに待ったをかけるようにエレメンタルスライムたちが声を上げる。何かを発見したのだろうか。
スライムたちが指す方を見てみると、そこにはビー玉のようなものがいくつか転がっていた。スライムたちはとても食べたそうにしている。まあ、あげてしまっても問題ないか。いいぞ、という合図を送る。
スライムたちはすぐにその玉を食べ、満足そうにしている。まあ、何かが起こるというわけではないんだな。じゃ、今度こそ帰るか。