その62 第二の巣
2つ目の巣に行く道中、かなりの数の猿には遭遇したものの攻撃されることは1回もなかった。あの巣に高度な連絡網があるということだろうか。今度聞いてみるのもいいかもな。
で、攻撃されなくなった敵もいる反面、逆に攻撃してくるようになった敵もいる。
蠍、それも1メートルはありそうな巨大なものだ。
まあ、この地上エリアにいる敵は基本的に俺ら3人のだれか1人だけでも対応できるようなのだけだから全く問題ないんだが。
でも仮に、蠍も猿たちと同じ理由で俺たちを攻撃してるんなら、早く誤解を解かなくちゃならない。もちろん、巣はきっちり頂いていくけど。
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てなわけで、蠍の襲撃をかいくぐり続けて何とか蠍の巣まで来た。できるだけ死者は出さないようにしてる。規模や見た目は今までの巣と大体同じ。違うのは俺らを待ち構えてる魔物の種類だけだ。
当然いるのは蠍。数は、50体くらい。問題は話が通じるかだな。
俺が一歩前に出て、相手の中心にいるやつと、意思の疎通を試みてみる。
『おい、俺の言ってることがわかるか?』
『お前、人間のくせに我らの言葉を操るか。許せん。我らの同胞を大量に殺しておいて、今度は何をたくらんでいる?』
そう言いながら鋏と尻尾のラッシュを繰り出してくる。
『ほう。人間にしてはなかなかやるな。これだけの攻撃を完全によけきるとは。だが、まだまだだ!』
うわー、これは話を聞いてくれなさそうだな。一回懲らしめるか。
『ほらほら、まだまだ行くぞッごふぅうびゃぁぁ!』
ぷぷっ・・・いや、やられ声がやたらと面白かったんで・・・なに、大したことはしてない。攻撃をかいくぐって思いっきり蹴り飛ばしただけだ。ちょっと口から泡とか吹いてるけど大丈夫だろ。
てことでこいつはその辺に放置して起きるのを待つか。それと、
『俺たちにお前らを傷つける意思はない!お前らのリーダーが目を覚ますまでそこでおとなしくしてろ。そうすれば絶対に傷つけないと約束する。もし向かってくるというのならそれはそれで構わないが、容赦は一切しないと、心得ておけ。』
俺の言葉はちゃんと通じたようで、全員警戒心を込めてこちらを見ているものの、殺意を向けてくるのはいない。じゃ、あとはこいつが起きるのを待つだけだな。
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約30分後、起きた。遅い。そろそろ殴り起こそうかと真面目に検討するところだった。
なんというか、空気がすごく気まずかったわけよ。あいつらなら何とかできないかと思って蠍の方をチラッって見てもあいつらもそれに気づいた瞬間チラッって目をそらすんだよ。一周回ってなぞの連帯感を感じ始めてたところだ。
何はともあれ起きてくれたようで、やっと話ができる。
『巣は頂いていく。異存は認めない』
『えっ!?さっきあんなに、話せてうれしい。話したい。みたいな雰囲気出してたのに!?』
『30分も俺たちを待たせた罰だ。甘んじて受けるがいい。』
『ひどすぎる・・・。』
さて、巣はあと1個だけだ。それだけ終わらせたらこの島は地上も地下も完全に安全ってことになるんだな。
最後の巣は今までのと比べて大きいらしいから、心してかからないとな。油断は禁物だ。
だが、ここ最近はずっと忙しかったからな。落ち着いたら何がしたいかを考え始めてもいい頃かな。