その61 第一の巣
「俺があの指揮官っぽい黒いのをやりに行く。ルナは俺の援護と右側の殲滅、セレネ様は左側をお願いします。巣まで壊したいわけじゃないから大量破壊は禁止かな。じゃ、行こう。」
相手は相手から見てVの字のような陣形になっている。こっちとぶつかった時点で包み込むようにして軍を展開していって、まるまる囲んでから袋叩きにするつもりなんだろう。
魔物にここまでの知能があることは驚き(←自分は棚に上げ)だが猿の魔物故だろうか。
とりあえず敵に向かって走りながら肉体換装と魔力戦闘術を発動、大きな爪を生成して、そこに魔力戦闘術で作った闇属性の魔力を浸透させ、同時にまとわせていく。魔力戦闘術はこの2つが同時にできるから便利だ。晶化もちょっとしたアイディアがあって、試そうかと思ったが、まあ必要ないだろう。また今度使ってみるか。
そして、敵とのファーストコンタクト。
俺の右側から数体の猿がパンチや腕の振りおろしで攻撃してくる。纏めて頭を切り飛ばす。左側から赤色の猿が炎をまとった状態で突っ込んでくる。全属性魔法で火を消して温度を下げつつ直雷を発動。赤い猿の胴体部分に大穴を開けつつその後ろにいた数体の猿もまとめて殺す。ちょっと耳に響くがそれだけの収穫がある・・・かな。
ここで後ろを見る。猿が後ろに回り込まれてるような様子はない。ルナとセレネ様がしっかりと仕事をしてくれてるようだ。
再び前を見る。左右両翼の猿はまだルナとセレネ様を果敢に攻めているが、俺の前の猿は完全に足が止まってる。さっきの直雷で完全にビビったようだ。
関係ない。
今生成してある爪にさらに魔力を込めて特大の魔力爪を形成する。そこに、風属性の魔力をまとわせて切れ味を上げていく。そして腕を大薙ぎに振るう!
・・・結果は一目瞭然。あたり一面血の海だ。汚い。
まあ、見た感じだと敵の戦意もなくなったようだし、敵の指揮官と話してみるか。
『向かってこなくなったが、これは降参と受け取っていいな?』
『当然だ。これ以上やってもこっちが全滅するだけ、これ以上戦う意味はない。』
おっ、直接ではなく六感強化の念話を通してだが、ちゃんと意思の疎通はできるようだ。
『ちゃんと意思の疎通はできるのに、何で最初からそうせずに攻撃してきたんだ?こっちだって、そっちが何もしてこないんなら戦わない道も模索するつもりだったんだが。』
『前に来た人間は話が通じなかった。話そうとしたのに無視された。そして殺されかけた。また人間が来たから攻撃した。』
あっ・・・。そうかこの姿だとほとんど人間に見えるのか。確かにこの3人には魔物らしい姿をした人はいないな。
『ああ実は、俺は人間型のキメラだ。人間じゃない。』
『そうか。それは失礼したな。ところで何をしに来たんだ?』
『巣の支配権を貰い受けに来た。いいか?』
『・・・いい。だが、これ以上我々に危害を加えないと約束してほしい。』
セレネ様を見ると、小さくうなずいていた。問題ないようだ。
『問題ない。こちらからは今後一切の危害を加えないと約束しよう。』
『感謝する。』
じゃあ次の巣に行こうかな。
そんな感じでセレネ様を先頭にして、次の巣に向けて進み始めた。