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その5 やっぱラブホかな?

『食べ終わったようだな。』

『ああ、でもなんで食べさせたの?』

『お前がこの家の子の中で初めて声をあげたからだ。』

『それで?』

『キメラのしきたりで、生存戦略だ。2人以上の子が一度に生まれた場合、先に声をあげた方にそれ以外を食べさせる。一度に生まれた数によっては何人も食うことになる場合もある。』

『これがどうして生存戦略に?』

『キメラは他者を食らうことで食べた対象の力を一定確率で受け継ぐ、という力を過去に神々より授かったらしい。キメラの伝承に過ぎないが。』


 つまりキメラの特性は食べた相手の能力を一定確率で貰うこと。俺は、クソザコナメクジなんて不名誉な種族に生まれてきてステータスもめっちゃ弱い代わりにこの特性が強化されたわけだ。だからあれを食べただけであんなに色々なスキルが手に入ったのか。


『息子、行くぞ。』

『え、何処に?』

『お前の母親に会いにだ。』


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 家(浅くて広い横穴のような洞窟)の扉もないただの穴のような入り口を抜けるとそこは雪国だったなんてことはなかった。


 うん。俺の眼前に展開していたのは巨大な広場、しかも天井があるからまだ洞窟の中だと思われる。


 直径数百メートルはありそうで、その空間内の市場のような場所には無数のキメラが(ひしめいていた。公園のような場所もある。


 天井や壁には家の中にもあった青い結晶が埋まっていて、綺麗な青色の光を発して、これまた幻想的な雰囲気を醸し出している。鑑定してみると、【魔結晶(マナクリスタル)】と出た。


魔結晶(マナクリスタル)

【魔素粒子が二酸化(ケイ)素の構造上の隙間に入り込むことで生成する】

【上記のように生成するため、基本的には魔物が多数生息する洞窟から多く産出される】

【魔力伝導性が高く、宝石としても利用され、回収が難しいことからかなり貴重な素材とされている】

【魔力-青色光の転換能を持つ】


 つまり、【魔力-青色光の転換能を持つ】っていうのが、魔力を込めると光を放つ、って事だろうか。だからあの結晶は青色の光を発し続けてるんだろう。


 それと、壁には所々少し大きめの穴-孔といったほうが正確かもしれないが-が空いている。


 俺とガズラが出てきた穴とそっくりだ。おそらく他の家族の家なんだろう。ここにはキメラは何人程度住んでいるのだろうか。


 わからないことは他人に聞くに限る。疑問だった他のことと一緒にガズラに聞いてしまおう。


 まずはキメラという種族全般について聞いてみた。


 キメラの赤ん坊は人間でいうところの7歳児くらいの姿で生まれてくるらしい。俺もまさにそんな感じの見た目らしい。未だに鏡のようなものは発見できてないから自分の顔とかは把握できてないんだが。


 それと、キメラは生まれた時点である程度「型」を持つらしい。例えば、熊型、蟻型、魚型、など「型」は様々で、親に関わらずほぼランダムと言ってた。


 俺がさっき食ったあいつはいろいろ混ざった混合型というものらしい。ガズラもそうで混合型だが、同じ混合型でも見た目はかなり大きく異なるらしい。


 混合型のメリットとしては様々な生物の技能を扱えることにあるらしい。体のパーツパーツが別の生物のものだからこれは普通に納得できるな。


 ただ、パーツ同士が上手く噛み合わなく、パーツごとの力を上手く引き出せずになってしまうため、色々できるがそれぞれをそこそこしかできない器用貧乏になってしまうことが殆どらしい。


 ガズラはその中でも偶然パーツ同士が噛み合って生まれてきたらしい。だからこの国で1番の戦士であると、自慢げに語ってくれた。


 ちなみに俺は肌は不自然な真っ黒だがほぼ人間のような姿をしているから、型は人間型の可能性があるが、まだ確認したいことがあるからその時までは確定できないし、多分違うだろうとガズラが言っていた。


 人間型はキメラの中ではトップクラスに珍しい型で、遠距離の戦闘能力と学習能力に大きなアドバンテージを持った型らしい。


 人間型はトップクラスに珍しいと言ったが、当然さらに上もいる。吸血鬼型や天使型、悪魔型、龍型、さらには神型なんてものもいるらしい。


 まあ神型なんてのは伝説上の存在で、実際に存在したのかすら怪しいらしいんだが。


 早く自分の型を知りたいものだ。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



『ここだ。』


 あの巨大な広場の奥には壁にあいている他の穴とは一線を画す巨大な穴があった穴の前にはげきを持って鎧を身に着けた兵士のようなキメラがいる。


 兵士のキメラは最初は戟を構えていたが、ガズラの顔を確認した時点で軽くお辞儀をして道を開けてくれた。実はガズラは結構偉いんじゃなかろうか?


 ガズラが何もないように穴をくぐる。俺もそれについて穴をくぐる。


 くぐったその先には、さっきの広場よりは小さいが、それでも十分に巨大な空間が広がっていた。学校の体育館くらいなら簡単に収まりそうだ。


 部屋の中は虹色の光で溢れていて、自然と背筋が伸びてしまうような、厳かな雰囲気に満ちている。ついでにいうとラブホみたいな雰囲気もある。だって光が虹色だし。別に他意はないんだけど。


 虹色の光の発生源は部屋の天井や壁を覆い尽くす、大量の結晶だ。外にあった魔結晶マナクリスタルにも似ている。色が全く違うが。


 こっちは結晶全体が場所によって別々の色を放っている。一つの結晶が結晶全体で同じ色を放っていることはないし、結晶の一つの場所がずっと同じ色を放つこともない。色のパターンが常に変わり続けている。まあ、こんな時のために鑑定があるんだ。鑑定!


魔結晶マナクリスタル虹励起レインボーカラー

魔結晶マナクリスタルの内部の魔素が何らかの要因によって全ての基本属性の魔力に変化したもの】

【全ての基本属性に対して魔結晶マナクリスタルを超える魔力伝導性を持ち、さらに多少の増幅効果を持つ】

魔結晶マナクリスタルとほぼ同じ方法で産出されるため魔結晶マナクリスタルと同じくそ希少価値はとてつもなく高いが、発見してもまともな状態で回収することすら非常に困難なため、その価値は、国を動かすとさえ言われている】

魔結晶マナクリスタルから人工的に作り出すことは可能だが、その技術は秘匿されている】


 回収が非常に困難というのはどういう意味かはわからないが、今は下手に触ったりはしないほうがいいだろう。


 この空間は割と空っぽで、さっきの魔結晶(マナクリスタル)虹励起(レインボーカラー)以外は特筆すべきことがあまりない空間だ。逆にいうと特筆すべきは1つだけあるんだが。


 それは、この部屋の最奥に佇んでいるのもの、巨大なキメラだ。体育館を簡単におさめる程度のこの空間だが、あのキメラはこの巨大な空間の1/4は埋めている。とんでもない大きさだ。


 そして体の形状が非常に独特だ。スライム型とでもいうのか。


 まず、みんなも良く知ってるような一般的なスライムの体がある。あの表面を滑らかにした青い玉ねぎみたいな形。強いていうならちょっと平べったいかな?そしてその上には人間の女の体のようなものが突き出てる。


 下のスライムの部分は青色の半透明で、その中にはポツポツとキメラの赤ん坊らしきものが見える。


 上の人間の体のような部分を鑑定してみる。


【キメラクイーン】

【キメラ族の女王】

【巣における働きは子孫を生むスライム体を管理すること】

【それ自身の戦闘能力は皆無であるものの、常に魔力を発しており、周囲の魔物を強化する作用を持つことから、キメラクイーンがいる巣は危険度が跳ね上がるとされる】


 あの上にいる人が俺のお母さんなのかな?実は俺のお母さんはとんでもない人なんじゃなかろうか・・・?

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