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その47 遭遇-2

 んー、さっきからよくわからんやつらが次々に来てなかなか前に進めないな。一人一人の戦力はほんと大したことないんだけど、倒し終わったら既に次のが来てる、みたいな感じだ。仕方ないから俺とルナの戦闘の練習相手になってもらってる。


 俺が武器やら何やらの切れ味を確認したり、ルナは未だに三魔法球を完全には使いこなせてないようで、その練習相手がどんどん奥から来てくれるとむしろ喜んでる。俺はむしろ少々面倒だと感じてるんだがな。まあ、ルナが楽しそうで何よりだ。


 だが、こんな状況でじりじりと歩を進めるのもやはり面倒だ。もうここに陣取って相手の戦力が尽きるまで待つか。仮にそうならないにしても相手がしびれを切らして何か行動を起こすだろう。


 それにしても、さっきから来る奴らの様子が尋常じゃない感じなんだが。目は血走ってて時々泡を吹いてるようなのまでいる。俺はその手の話にそこまで詳しいわけではないんだが、まるで危ないお薬をキメてるかのようだ。


 攻め込んできてる奴らがみんな同じ服を着てて装備も統一されてるのを見るに、軍のようなものに所属してる人たちなんだろうが。だとすると兵士を薬物でハイにして戦場に送り込むなんてまるでどこぞやの戦時中のニポーヌ軍じゃないか。ハッハッハ!・・・もともと食べようと思ってたんだが、薬物をキメてるような人を食べるのは果たして安全だろうか?


 まあいいや。俺らは食べる種族だし、食べてヤバかった時は・・・全力で逃げれば何とかなるだろ。多分。死んだどころで生存に向いてない遺伝子が遺伝子プールから淘汰されるだけだし。俺は自然淘汰とかそういうところに関しては割と目に見えない上位の力、的なものは信じてるんだよな。


 どうか俺を遺伝子を後世に残すに値する個体だと認めてくださいなーってな訳で、いただきまーす。


「む?このトロッとした舌触り、口の中でほどけるようでそれでいて口の中に噛んだという実感を残す絶妙な食感、上品な味わいででさっぱりとした油、そして何よりこの甘み!甘み!甘み!!何でもかんでも甘いと言っておけば良いみたいな最近の食レポの風潮が理解できない!」

「・・・カイはさっきから1人で一体何を叫んでるの?すっごくバカみたい。」


 おぉルナ・・・そんなに無邪気な笑顔で毒を吐くのはやめてくれ。心がゴリゴリと抉れていってしまうだろう・・・。


「まあまあそれはさて置き、この肉本当に美味いからルナも食べてみ?」

「でも・・・明らかにこいつらヤバイわよ?本当に大丈夫なの?」

「大丈夫さ。多分死にはしないだろうというのは俺が保障してあげよう。」

「全く保証になってないわ!まあ、いただきます。・・・食べれないこともないわね。」


 そう言いながらも驚いたように目を見開いて肉を頬張っていくルナは非常にかわいい。


「俺の言った通りのうまさだろ?お、次のが来たぞ。あっちまで行くのめんどいから、処理は頼めるか?血抜きまでしてくれると嬉しい。」

「・・・。」

「おーい、ルナ?」

「いや、なんかアイツ、おかしいと思わない?服装も微妙に他のと違うし、例の魔獣人形ビーストパペット引き連れてるし、それにさっきからブツブツと呟いてて様子が変よ?」

「いや、何とも思わないけど。強いて言うなら口元が血でぐちゃぐちゃになったルナたんは可愛いな〜、と。口元の血が猟奇的な感じを醸し出して、それとルナのもともとの神秘的な可愛さのギャップが何とも言えない萌え萌えハーモニーを奏でている。ような気がする。」

「・・・え、そんなに汚れてた!?何で言ってくれないの、恥ずかしいわ・・・。」


 ・・・ごしごしごし・・・


 はぁ〜和むわ〜。可愛いな〜。


「お前ら。そこまでにして頂こうか。」


 ん?何だこの俺とルナの超☆絶☆幸せ空間に水を差す無粋な声は。


 とりあえず直雷ライトニングでも食らっとけ。


 ズガァァァァン!!!!


 よし。これで片付いただろう。飛び散ったであろう肉片の残りカスを拾うのは後にして、今はルナとの会話に戻ろう。最優先事項はルナだからな。


「おい...挨拶にしては随分と荒々しいな。お前の国では皆こうなのか?それに、この戦いの途中に敵のことを忘れて女との会話に夢中になるなど、許されないことだ。ましてやお前が俺の仲間に行った仕打ちを考えればなおさら許すことはできない。」


 おお、自分の仲間をお薬ニポーヌ戦法で戦場に送り込んでたやつの台詞とは思えないな。


「・・・えっと、さっきまで随分と怒ってたのに、かなり、冷静です、ね?」

「当然だ。私はお前らを滅ぼすため、そして同士の無残な死を弔うためにここに来た。真剣勝負でなければ私の同士は報われない。さあ、早く武器を構えろ!」

「えー、結構です。」

「どうしても嫌だというか。では、仕方ない。おい!お前の隣にいるその女・・・ブスだな。いや、正直言ってお前に対して憐みの感情すら抱くぞ。そんなにブスな迷惑女と一緒に居なくてはならないんだからな。」


 ふむ、ルナに対する侮辱で俺に戦う気を起こさせるという作戦か。まあ実際客観的に見てもかなり効果はあるだろうな。だが、相手が悪い。あいつが何と言おうが俺はそれを見る目の無い馬鹿の戯言だと割り切れば全く怒りもわいてこない。しかも言い方が下手糞だ。そんな取って付けたように言われても何も感じるはずがないだろう。


「あんなので俺を怒らせようなんてあいつも馬鹿だよな。なあ、ルナ?」

「・・・。」

「おい、ルナ?どうしたんだ?」

「うっ、ぐすっ・・・なんでっ、なんでそんなにひどいこと言うの!?・・・うわあああああん!!」


 あ、ルナが泣いた。


 ・・・・・・あのクソ野郎絶対殺す。殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺・・・・・・・

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