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その31 人はそれを大爆発と呼ぶ

 女王の討伐が完了したところで少々余裕ができたので、何が起きたのかわからなかった人たちのために何が起こったのかを解説しよう。


 まずはあの『・・・シャッ・・・。』って部分。この音は俺の魔爪槍のギミックが正常に作動した音だ。


 魔爪槍は簡単に言うと魔爪を束ねたものだという事はもう言ったと思うが、ここでポイントはその束ね方にある。


 俺の指は5本なので(キメラでも人間型なら5本だ)魔爪も5本作ることになる。


 じゃあ束ね方を説明しよう。


 束ね方は非常に単純だ。まずは1本中心に置いて、その周りに残りの4本を配置、形を整えて槍のようにすれば完成だ。


 元々は爪程度の大きさしかなかったものを槍程の大きさを持つものにするんだからかなり細くなってはしまうが、それでも体に刺されると考えれば相当太いもんだ。半径2センチといったところだろうか。


 さて、この時、強度を出すために魔爪槍の5本の魔爪は同化させるが、ある2箇所だけを同化しないようにする。完成図は、槍に長い方向に沿ってぐるりと一周傷を入れたようになる。


 この傷がポイントだ。魔爪槍は純粋な魔力だからかなり不安定で、何か処置を施しておかない限り手を離すと一定時間後に爆発するんだが、この傷があると爆発のエネルギーが全てその狭い傷から出て行く事になる。


 爆発によるエネルギーも狭い隙間を通れば強大な切断力を持つ。


 具体的に言えば、仮に魔爪槍の中で10気圧の魔力があったとすれば、それが出てくる頃にはおよそ10000気圧とかになっている。もちろん、全ての魔力が同時に吹き出すわけでは無いしかなり大雑把な計算だから実際の値はもう少し低いものになるだろうが、非常に増幅されるというのはわかってもらえたと思う。


 逆に、ものすごく噛み砕いて言うと、時限式ハイパー切断機、だ。


 まあ、これで分かっただろう。


『ズズズズズズズズ...』が切断された女王の頭の一部がずり落ちる音で、『ドゴォォォォォォン!!』がその破片が地面に落ちる音だ。


 我ながら素晴らしい技だと自負している。


 まあ、この技の発想は俺ではないのだがな。スライムたちがこの技のアイディアを俺に教えようとした時は本当に焦った。


 スライムが唐突に体に小さな穴を開けてそこから物凄い勢いで体液を噴き出し始めたからな。びっくりするなという方が無理な話だろう。


 さてと、技の説明も終わったことだし他の匠さんたちの処理に取り掛かるとしようか。


 あいつらが今まで何をしてたかって?女王が死んだのを見て呆然としてるよ。未だに。


 まあ、もしすぐに駆けつけたとしても間に合わないがな。女王を本隊から離しておくことで守ろうとしたのかも知れんが完全に裏目に出たな。その距離じゃ不測の事態に対応できない。


 あいつらに女王の死を悼んだりするような感情があるのかは個人的に興味深いと思うところだが、今はこのチャンスを生かすことに集中しようか。


 ちょうど今、俺は残った匠さんたちの背後にいるから弓士を片付けるには丁度いい位置にいるわけだ。


 あいつらが呆然としてたおかげで魔力もやや回復して来た。魔法一発分はありそうだ。できればさっさと片付けたいところだな。どの魔法を撃とうか・・・。


 こうやって余裕があるように言ってるが実際はそこまで無い。少ない魔力で大量の敵を倒す、そのための魔法の選択の最適解を弾き出すのに必死だ。


 そう、俺の脳はフル稼働していた。俺の耳が聞き取った音を脳で処理する余裕がなかった。だから聞き逃していた。絶対に聞き逃してはならない音を。女王の体から聞こえる。ジジジ・・・という破滅への足音が。


 気付いた時にはもう遅い。


「来い!『土壁(アースウォール)』!!」


 ありったけの魔力を込めて壁を作っていく。今までで最大級に大きく、分厚いやつだ。腕が魔力で飽和して、それを超えていくのを感じる。


 関係ない。


 身体中、隅々からありったけの魔力を回収して更に腕に込めて、土壁(アースウォール)を大きくしていく。


 ・・・魔力が無くなった。体の中にもう魔力はない。


 ダメだ、こんなちっぽけな壁じゃ足りない。でももう魔力はない・・・ならどうすれば・・・最早ここまでなのか?


 とてつもないスピードで思考を巡らせていく。瞬間、天啓のように舞い降りるアイディア!


 どれほど微々たるものでも、少なからず空気中にも魔力は充満してるはずだ!ならばそれを回収するまでだ。


 意識を周囲の空間に集中させていって、魔力を掴んでいく。よし、いける。このまま土壁(アースウォール)を大きくしていって・・・。


 しかし、終わりというものは案外呆気なく訪れるものだ。


 遂にその限界を迎えた女王の体は膨大なエネルギーを発散しながら崩壊する。


 俺の感覚が最後に捉えたのは、鼓膜を突き破る轟音と、視界を埋め尽くす閃光だった。

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