その21 3日目、4日目
3日目
今日は鍛治に費やそうと思う。試練の洞窟の管理者(笑)が素材をくれたからな。
ちなみに昨日ボーナスとして送られた手紙は2つあったと言ったがもう一つの方は実際はただの白紙だった。何だろうか?まあ、考えても仕方のない事なのかもしれないな。
だが何で樽いっぱいの水があったのかがわからない。確かに打った刀を水につけると硬くはなるが。(ちなみに石の場合は急激に冷やすと結晶ができてそこを起点にして壊れやすく、つまり脆くなる。だがこれは石(主成分は二酸化ケイ素)の話だ。金属の場合は知らん。結晶を形作る結合の種類も全く違う上に結晶の構造も体心立方格子、面心立方格子、六方最密構造と複数あるしな。)
しっかりと強くするためには焼き直す必要がある。もしかしてその辺も考慮したうえでこの水をくれたのか?意外と気が利くじゃないか。
じゃあ、今日のボーナスを確認したうえで鍛治でもしようか。
今日のボーナスは・・・白紙が1枚だけだ。いったいこの白紙はどんな意味を持ってるんだ?
それは後で考えることにしよう。とにかく今はまともな武器を作らなきゃな。ミノタウロスのハルバードは俺がこの洞窟内で扱うには大きすぎる。
鉄と銅があるが鉄の方は普通の武器として使っていこうと思う。銅は別の用途を考えてある。
その用途は、銅の電気伝導性と熱伝導性が全金属の中でトップクラスであるということを利用したものであるとだけ言っておこう。
では、先に簡単な銅をやってみようか。
某有名なRPGにどうのつるぎなんてものもあったが実際実用性はどうだったんだろうか?銅というものの単体の結晶はかなり柔らかくて、武器として使えたものじゃないと思うんだが。もしかして何らかの合金だったんだろうか?まあ、この際はどうでもいいか。
と、刀を作る前にひと仕事。ジジイが言ってたんだ。素材に魔力を合成したらどうかって。この際、電気伝導や熱伝導に優れた銅なら魔力伝導にも優れてるんじゃなかろうかということで、合成。実際にしてみた感じ、合成する魔力の量は自分じゃ操作できないようだな。銅の単位体積あたりで持って行かれるっぽい。
そんで完成したのがこれ。
【魔銅】
【魔力が練り込まれた銅】
【その製法は秘匿されており、一部のドワーフしか作れない】
【天然の物も産出するが、銅の産地と魔物の巣などの魔素濃度が高い場所が重ならなくては生成されないのでかなり希少】
【魔力が自由電子に似た役割を果たし、驚異的な熱伝導性、魔力電導性、電気伝導性を誇る】
・・・なんかすごいの出来たけどスルー。普通の銅と見做して扱おうか。
ということで鍛治スキルを利用して武器をカンカンやっていく。それと同時に魔剣創造も発動。
このときに込める魔力は闇属性と光属性の魔力だ。光属性の魔力を魔法として発現させるのはほとんどできないが、光属性の魔力を操るだけならなんとかなる。この時、闇属性の魔力は刀身の背と芯、光属性の魔力は刃の部分に込めるようにする。
魔銅を使った事で魔力が浸透しやすくなって、少なめの魔力で魔剣創造が発動できたのは嬉しい誤算だ。
あとは鞘を金属で作るような技術力は俺には無いから代用として刀身の手元付近に穴をほがしておいてそこにスライムにリングになってもらって腰に巻きつけることで持ちやすくする。
作る材料として金属しかなかったせいで持ち手まで金属で作ってかなり重くなってしまったが、まあこの刀は振り回すわけでは無いし問題ないか。
それで完成したのがこれだ。
【聖魔銅刀】
【魔力や魔法の伝導に特化した刀】
【光属性と闇属性の魔力を帯びた銅を使い分ける事で魔力、魔法の吸収、放出能力が大幅に高められている】
【物理攻撃性能はそこまで無い】
【基本的な物理攻撃手段は刀に魔力、魔法を纏わせた属性攻撃である】
【攻撃力30】
【魔力増幅2倍】
【魔法増幅1.5倍】
よっし。狙ってたものが作れたな。
想定外の性能だけどね・・・。これで、この刀を通して魔法を使えばずっと効率よく運用できるはずだ。
まあいいや。今日は魔力を大量に使ったから疲れた。また明日。
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4日目
今日のボーナスは
手紙×2
だった。
1つは案の定ただの白紙。もう1つは試練の洞窟の管理者からの手紙だった。
そんで内容は、
【試練を受けているものへ】
【なんなんだよお前!?せっかくお前の苦しむ顔が見れると思ったのに!覚えとけよ!!】
【試練の洞窟の管理者より】
いやお前がなんなんだよ性格悪いな。
まあ試練の洞窟の管理者(笑)の事は忘れて次の刀を打とうか。
今日は鉄を使うつもりだ。
鉄は金属として比較的硬いイメージだが実際は純鉄は柔らかくて刀として使い物にならない。そこで基本的に炭素を混ぜて使う。
普通は酸化鉄と蛍石の混合物をコークスと一緒に強熱する事でコークスの炭素が酸化鉄のの酸素を受け取って純粋な鉄が得られる。この過程で反応せずに残った炭素が鉄に混ざる事で硬い鉄になる。ただし普通はこの炭素の濃度が高すぎて鉄が脆くなって使い物にならないから酸素を吹き込む事で炭素を受け取らせて、炭素濃度を調整する。
この鉄はかなり柔らかいから純鉄だと考えていいだろう。考えてみるとなかなかの技術力だな。こんなものをポンと出せるなんて。感心感心。
それで話を戻すが、その炭素を魔力で代用しようと思う。果たして魔力がうまく機能してくれるかはわからないがとにかく試さないことにはなんとも言えないからな。
そんじゃ、合成。
【魔鉄】
【魔力が練り込まれた鉄】
【その製法は秘匿されており、一部のドワーフによる市場の寡占状態が長い間続いている】
【魔素が金属結合を強化する役割を果たしており、強くしなやかである】
【通常の鉄よりも熱伝導率、電気伝導率、魔力伝導率が高い】
原理はちょっと違うかもだけどちゃんと機能してくれたようだ。じゃあ鍛治と魔剣創造を発動。
今回は炎属性の魔力と雷属性の魔力を浸透させていく。次は昨日やらなかった行程をやっていく。
まずはありったけの炎属性の魔力を炎として発現させていく。で、それを完成した刀身に浴びせていく。いい感じに熱されたら樽の水にドボン。最後にもう一度加熱したら完成だ。
こうする事で金属がどうたらこうたら。理屈は知らん。これでいい刀ができるらしい。
ちなみに俺の浅い知識によるとこの工程は温度の都合上水じゃなくて油でやる方が良いらしい。それはさておき。
完成品がこれ。
【雷炎鉄刀】
【物理攻撃に特化した刀】
【魔法攻撃も可能だが威力は半減する】
【未知の技術により武器として強い力を得ている】
【込められた炎と雷の魔力により高熱を発しており、有機生命体に対して有効】
【武器自体が魔力を帯びているため僅かではあるが実体のない敵にも少なからず攻撃可能】
【電気に対する耐性が低い敵は感電させる事も可能】
【込められている魔力の効果により、魔力を込めると新たに込めた魔力は即座に熱エネルギーや電子の運動エネルギーに変換され、刀身がさらに高温になり帯びている電気も大きくなる】
【攻撃力250】
【感電効果:小】
よし!もう何も言うまい!
じゃあ魔力ほとんど使っちゃったしもう寝よう。明日は魔法の開発かな。