その12 眷属
『・・・い。お・・・・・・。・・・さーい。』
うう、頭がガンガン痛む。どうなってるんだ、これ・・。
『起きてくださーい。おーい!!』
『うわぁっ!?・・・ってクイーンか。どうしたんだそんなに大きな声を出して。』
『いやぁ~少し焦ってしまいました。あなたがなかなか起きないもので。』
『起きない・・・?あっ、そうか、俺は気絶してたのか・・・。どうして気絶してたんだっけ?なんか記憶が曖昧だなぁ。』
『忘れてしまったんですか?あなたはルナに名前を付けた後、彼女にハグをされたときに気絶したんです。要因はいくつかあるんですけど、やっぱり一番大きいのは彼女に血を吸われちゃったことですかねえ。貧血です。それと、もう一つありますね。あなたは何か〝つながり”に関係するスキルは持っていませんか?』
『それらしきスキルは・・・ああ、そういえば運命の赤い糸っていうスキルはあったな。今確認してみるか。』
【運命の赤い糸】
【このスキルは他者に対して何らかの種族特性的、もしくはスキル的な繋がりが形成された時点で発動し、対象者と自分をを決して切れぬ〝運命の赤い糸”で繋げる】
【〝運命の赤い糸”で繋がれた二者は、お互いがお互いの人生の中で大きな役割を持つようになり、またその二者の間に発生する、繋がりを司るあらゆるスキルの効果が大幅に強化される】
【現在結ばれている相手:彩華・クイーン・ルナ】
あっ(察し)。
どうやら俺の自慢の彼女は俺が転生して尚俺の人生の中で大きな役割を果たす予定らしい。こんにゃろ。
『そのスキルで間違いなさそうですね。そのようなスキルが存在したことは知らなかったのですが、効果から予想するに、そのスキルで確実だと思います。それで、そのスキルの効果を踏まえてですが、かなり言いにくいことがあるのですが・・・。』
『どうした?そんなに大変な事なのか?』
『ええ、まあ・・・。あなたが知ってる吸血鬼の性質と言えば何がありますか?』
『そうだな・・・太陽が苦手、流水が苦手、ニンニクや十字架も無理、招き入れられないと建物に入れない、心臓を木製の杭で貫かないと死なない、そんな感じか?』
『あぁ、ほとんど聞いたことがありませんが、まあそこはさて置き。もう一つ忘れていませんか?ほら、吸血鬼が他人の血を吸うとどうなるんですか?』
『それはもちろん、吸われた人も吸血鬼になるん・・・だ・・・あっ・・・。そういう事かぁ・・・。』
『はい、わかってもらえたみたいですね。実は、ルナはそもそも吸血鬼じゃなくてキメラなうえに、吸血鬼としてみてもまだかなり下級の吸血鬼ですので、普通は一回血を吸った程度では吸血鬼にされることはないはずなんですが、その〝運命の赤い糸”というスキルの効果で、吸血鬼化、正確には眷属化の効果が強化されてしまい、あなたは部分的に吸血鬼になってしまったようです。』
『正確には眷属化って言うのか。まあ、いいか。ルナかわいいし、優しそうだし。別に直接的に害が俺に及ぶわけじゃないんならいいよ。それに・・・眷属って響き、なんかイイ。』
『そ、そういうことなら・・・私だって眷属になりますっ!!あなただけ眷属になるのはズルいです!』
『お、おう。じゃあ、今から行って来るのか?』
『はいっ!それでは、また今度会いましょう!』
タタタタタタタタ・・・・・・
行っちゃった・・・。じゃあ、特にやる事も無いし俺は手つかずだった鍛冶にちょっと手を出しに行こうかな。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
というわけで家に到着ぅ・・・からのクイーンに貰った酒をシュパッ!鍛冶屋へGO!場所は周りのキメラたちに聞いたら簡単に教えてもらえた。
という事で無事鍛冶屋に到着できたので、今度は教えてくれと頼まなくちゃならない。クイーン曰く、ノリで押し切れば大丈夫らしいから、そうさせていただこう。
『ジジイ!鍛冶教えてくれ!酒ならたんまりとあるぞ!』
『ああん!?なんだとゴルァ!!この俺を酒で釣れるとでも思ってんのかァ!?』
『思っていなければ来ていないさっ(キリッ!)。』
『なんで(キリッ)って口で言ってんだ意味わかんねぇぞコラ!ああもう面倒くせえなさっさと入れや!』
『うぃっす。』
よし、無事潜入に成功。後は教えてもらうだけだ。ちなみに、ジジイは誰もが想像するような髭もじゃの、いかにもドワーフな見た目をしてた。ひねりがない。
『で、その酒ってのは何の酒だ?まさかその辺の市場の安いところで買えるようなまずい安物じゃないだろうな?』
『これだ。クイーンから直接貰った。文句は無いだろ?』
『ッ!?・・・まあいい。さっさとその酒をこっちに寄越せ。酒貰うついでに鍛治を教えてやる。』
『よしよし。はい、これが酒だジジイ。』
『確かに受け取った。中身も・・・ちゃんと入ってるようだな。よし、今日は鍛冶の基本を教えてやろう。まあ、教えると言っても薬を渡すだけだが。ちなみに一応聞いておくが、鍛治スキルは持ってるか?』
『持ってないな。やっぱりあるのか。』
『当然だ。それじゃ、鍛冶スキルが手に入るまでこれを一口ずつ飲め。手に入ったら来い。俺は奥で待ってる。』
『了解。いただきまーす。』
・・・とは言ったものの、ナンダコレハ。こんな得体の知れない液体を俺が何の確認もせずに飲むわけがなかろうて。
【鍛治の秘薬】
【秘薬という名前ではあるものの、作るのは非常に簡単であり、希少価値は限りなく低い】
【鍛治スキルを使用した際に高確率でいくつか生成される】
【作成した物をこれをたくさん集めたものに浸すと、作成者の適性、鍛治スキルのレベル、潜在能力、加護などにより、作成した物にスキルや神話生命体が宿る事がある】
【生物の体に害は無いものの、味は想像を絶するほどまずいとされる】
【これを飲むと低確率で下級の鍛治スキルが手に入る】
【神話生命体】
【全ての世界の神話の中で語られる生物の総称】
【他世界では神と呼ばれているものもあるが、実際の神はあらゆる神話生命体の上位に位置する】
【これらの生命体は神話世界に住んでおり、その伝承だけが、各世界において神話として残り、宗教を形成している】
いやまあ、確かに飲めば手に入るとは書いてあるけども。明らかに飲み物じゃ無いよね!?
でもこれ飲まなきゃ教えてくれないんだろうなぁ・・・。ちょっとだけ飲んでみるか。
・・・グビッ・・・
・・・うまい?・・・いや、普通にうまいんだが・・・何出鱈目書いてんだよ。めっちゃうまいわ。
・・・よし、全部飲んじゃえ!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
1時間後・・・
ふぃー、飲んだ飲んだ。あれうまいね、ホントに。しかも色々と手に入るんだよね。これもっと譲ってくれないかな?そろそろある分は全部飲み干しちゃいそうなんだけど。
ちなみに手に入ったのは、
【下級鍛冶】
【鍛治スキルの中でも最低ランクの物】
【鍛冶作業をするときにスキルによる補助を少しだけ得られるようになる】
【鍛治神の加護】
【鍛治を司る神に気に入られた者に送られる加護】
【鍛治能力に大きな補正】
【作られた物が製作者の思った性質を持ちやすくなる】
【魔剣創造、鍛治確率強化を入手できる】
【魔剣創造】
【鍛治の際に特定のタイミングでこのスキルを通して魔力を込めることで魔剣を作る】
【魔剣は他の刀剣と比べてスキルや神話生命体が宿りやすく、武器そのものに生命が宿ることさえある】
【鍛治確率強化】
【鍛治の際に、思ったことが起きやすくなる】
これで無事、俺は武器を打てるようになったようだ。魔剣とかいうロマンロマンしいこともできるようだし、これも鍛治の秘薬をくれたジジイのおかげだな!
ちなみに、下級鍛冶と鍛治神の加護は割と早い段階で手に入ってて、それでも鍛治の秘薬を飲み続けたおかげで、下級鍛冶は6、あと2つのスキルは4までレベルが上がった。
というわけで・・・
『ジジイ!ちゃんと飲み終わったぞ!無事スキルも手に入った!』
『おー、ちょっと待ってろ。すぐにそっちにいk...飲み終わった!?お前正気かよ!?あのクソまずい鍛冶の秘薬だぞ!!何なのお前馬鹿なの!?死ぬの!?』
いや・・・それ男に言われても1ミリたりとも嬉しく無いんだけど・・・。