その10 ぺろぺろ
進化も終わったて魔法も手に入ったし、次は何をしようか。
そうだな・・・一回クイーンに会いに行くか。その後にでも俺がクイーンの部屋から出たときにすれ違いで入ってきた子にちょっと挨拶しておこう。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
というわけで家から出て広場に来ました。実際見るのはこれで数回目になるんだがいつ見ても壮観だな。洞窟の中だからかなりの閉塞感を感じると思うかもしれないが、空間があまりにも巨大なせいでそんなものは感じない。むしろ、地中深くだからだろうか、空気が程よくひんやりした温度に保たれていて、かなり快適な生活環境になってる。
そうだな・・・折角だし行きながら念話を試してみるか。ガズラとはもう俺が自分から話しかけてもちゃんと念話が通じることは確認してるんだが、一応ほかの人でも試してみたい。
ちょうどお隣さんの半人半馬のキメラがそこにいるから六感の念話で話しかけてみよう。ガズラが話してるのは見たからちゃんと念話が通れば話自体はちゃんと通じるはずだ。
『なーなーケンタさん、最近生まれたもう一人の子がどこにいるかわかる?』
『なに?某に聞いておるのか?奴ならばまた女王殿の所に行っておるぞ。最近は専らあそこに居るのを見る。あと、その方のその、ケンタさんとやらの呼び方は何なのだ?某にはきちんと名前が・・・無い・・・だと!?』
『じゃあねーケンタさん、助かったよ。』
『お、おい!待つのだ!某の名前を考えておけと作syフゴォッ!?』
『ケンタさん、それ以上は絶対に言ったらだめだからね。』
ふー、危うくメタくなるところだった。危ない危ない。ちなみにだけど、ケンタさんっていう名前は半人半馬といえばケンタウロスっていう安直な思考の結果だ。もう一つの半人半馬は考えてはいけない。絶対に。
さて、そうこうしてる間に無事クイーンの部屋に着いた。
ガズラはここでは結構偉いらしいから、前回はガズラのおかげでほぼ顔パスで簡単に入れたが普通はそうはいかないらしい。なので、門番に入る許可を取らなくちゃならない。
てなわけで以下俺と門番の会話。ついでにすごいものを見てほしい。
『Hi, how is it lately? I'd like permission to get into the queen's room.』
『Oh, hi. Sure thing. Just wait a minute.』
『Take all the time you need. I'm not in a hurry or anything.』
『Here you go. I'll be out here if you need me.』
そう、ここの門番は英語がペラペラなのである。すごい。
ちなみに門番だけじゃない。ここに来る間にあと何人かに話しかけたが何語で話しかけてもきっちりその言語で帰ってきた。こっちに転生したことで何らかの影響があってこうなってるんだろうが、やっぱり不思議なものだ。
ちなみに今の会話は、
『こんにちは。最近どう? クイーンの部屋に入る許可が欲しいんだけど。』
『おう、全然いいぜ。ちょっと待ってろ。』
『時間は好きなだけ取っていいぞ。別に急いでるわけじゃ無いし。』
『はいどうぞ。何かあったらここにいるからな。』
・・・てな感じだ。
まあ無事に許可も得た事だし入りましょうか。
おじゃましまーs・・・え、何これ・・・?
クイーンの目の前の地面の上に虹色に輝く玉がある・・・。まあ、わからないことはとりあえず鑑定する。この手に限る。
【リトルレインボーキメラ・魔法種(進化中)】
うーん、進化中?誰かが進化してる・・・?もう少し鑑定してみる。
【リトルレインボーキメラ・魔法種(進化中)】
【リトルレインボーキメラ】
【リトルキメラの中でも魔法に特化した能力を持つもの】
【進化特典の魔法が2つになる】
【進化時点で魔法特化を獲得できる】
【魔法特化】
【魔法使用時の魔力消費が半減】
【魔法の威力倍化】
【攻撃力が半減】
【魔法種】
【魔法の神に愛された者が進化した時に与えられる副種族】
【進化時に固定砲台、移動砲台のうち、適性が高い方を得る】
【固定砲台】
【魔法使用時の魔力消費が半減】
【魔法の威力倍加】
【攻撃力が半減】
【防御力倍化】
【移動砲台】
【魔法使用時の魔力消費が半減】
【魔法の威力倍加】
【攻撃力が半減】
【敏捷性倍化】
チート!!先生!ここにチートがいます!なんなんだよこの出鱈目な魔法威力倍化と消費魔力半減は!?
『いえいえ、あなたも似たようなものですよ?方向性が違うだけで。』
まじですか。そう言われると結構嬉しいんだが、実感はないな。
『彼女は完全に魔法能力に特化していますね。吸血鬼型のキメラは魔法寄りのステータスになるんですが、今回の進化で彼女が魔法特化のスキルも手に入れたので、これで彼女は完全に魔法使いですね。あなたはオールラウンダーですが悪魔型なので彼女の影響を受けて魔法の成長も早まるかもしれませんね。楽しみです。』
そうなのですか!俺も楽しみです!先s・・・って誰!?
『あら、ひどいですね。私の声も忘れてしまったのですか?』
あっ、クイーンか。ここクイーンの部屋だもんね。当然か。
『もしかして考えてること声に出ちゃってた?』
『いえ、現在進行形で記憶を読むことで、間接的に思考を読む事ができるんです。自分の巣に住んでる相手にしか通用しない技ですが、さすがに思考を読まれるのは嫌でしょうか?』
『いや、問題ないよ。クイーンに読まれるのは別にいい。ところで、今進化してる吸血鬼型の子って、名前はなんて言うの?』
『キメラに名前は基本的にはありませんよ。ガズラに名前があるのは、少し前にこの国にやってきたセルゼイという魔族が彼に名前を与えたからです。だから彼はこの国で最強の戦士なのですが。』
『え、でも俺の名前の欄にはちゃんと「カイ」ってあるぞ?』
『それはキメラとしての名前ではなく魂に刻まれた名前です。基本的には異世界からの転生者しか持っていないとされていますね。』
『じゃあこの子も名前は無いのか。なんか呼ぶときに不便だな。仮にも一緒に星龍を倒しに行く仲なのに。』
『ではあなたが・・・いえ、この話はもう少し後でいいでしょう。進化が終わったみたいですよ。』
虹色の玉が急に光を失ったかと思うと、崩壊を始めた。形を作ってた虹色だった黒い物質が割れていって、地面に落ちたものから淡く光る粒子に還元されて中心にいる子に吸収されていく。俺の時もこうだったのだろうか?
まあ、何はともあれ進化は無事完了したようだ。中から眠そうな顔をしてあくびをしながら出てきたのは、人間のような姿をした女の子だ。歳は10歳くらいか。非常にかわゆい。
ちなみにここで、人間のようなって表現を使ったのは、普通の人間とは、細かな差がいくつかあったからだ。たとえば、肌は少し青がかった薄い灰色だし、目は真紅と呼ぶに相応しい、真っ赤だ。髪の毛も綺麗な銀髪で、普通の人間ではありえない色だ。それに、さっきあくびをしていた時に見えたんだが、犬歯が異様に長かった。吸血鬼型という名前は伊達じゃないらしい。
それにしてもまあ、綺麗だな。何というか・・・完璧、としか形容できないような見た目だ。まるで精巧に作られた人形のような・・・。
「ちょっと!?あんた何言ってんのよ!?あんたみたいな誰だかわからないような奴にそんなこと言われたって私はうれしぐふうっ!?・・・・・・クイーン、舌を噛んじゃったわ・・・ぐすん。」
そうしてちょっとクイーンに慰めてもらった後にこっちに向いてこう言い放つ。
「あ・・・あなたのせいで舌を噛んじゃったじゃない。どうしてくれるの?」
理不尽だ。俺は何も悪くない。お前が勝手に噛んだんだろ。そう言いたい衝動を抑えて返答する。俺は紳士だからな。小さい女の子には優しいんだ。
「ああ、申し訳ない。そういう時は傷口を舐めるとすぐに治るらしいぞ。試すといい。」
「そうなのっ!?あなた意外といい人なのね。感謝するわ。ぺろぺろぺr・・・あれ、自分の舌って舐めにくいわね。」
『さてクイーン、今日ここに来たのはこの子に会うためでもあるんだがそれはついで。今日は、謝りたいことがあってここに来たんだ。』
『・・・え?』