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その1 死

 突然ですが問題。

   -私は今体の前面が肋骨ごと開かれていてサイコパス解剖医顔負けのダイナミック解体が行われているのですが、それは何故でしょう?-


 え、知らん?まあまあそう言いなさんなって。俺が話したいんだ。


 そうだな、正解発表の前にこうなった経緯でも話させてくれ。まあ、死に際の人の最後の願いってことで、面倒臭がらずに聞いてくれると嬉しい。


 それは、そうだな・・・俺を殺した張本人、彩華(さいか)との出会いまで遡ろうか。




 ・・・・・・・・・・・・




 いや、やっぱいいや。そんなに遡るの面倒だしそんな長くかかりそうなことしてたら俺の残り少ない命の灯火が搔き消える。


 うーん、まあ、俺がこうなった直接的な原因、今朝のショッピングモールまで遡るか。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 今朝、俺は重大な使命と、彼女にプレゼントしてもらったリュックを背負って家を出た。


 その使命の重大さたるや、エベレストの高さ、そして太平洋の広さをもをも遥かに凌駕する。


 彼女にプレゼントを買う。


 失敗すれば、待っているのは・・・まあ、多分ちょっと怒られるだけなんだけど。せっかく手にした縁なんだ。大事にしたい。


 という事で強力な助っ人に来ていただいた。俺の彼女と仲が良い俺のクラスメイトだ。この最強の布陣で最高のプレゼントを買ってやる。


 ・・・・・・・・・・・


「こんなんどう?あいつに似合うと思うけど。」


「うーん、それもいいけど、こっちが良いっちゃない?彩華はこういうの好きやん。」


 クラスメイトが指差したのはカラフルな髪飾り。確かに彩華の黒髪には似合いそうだ。


 彩華は、艶のある長い黒髪が似合う、まあ、正統派な日本美人という表現がいいだろうか。


 身長はかなり高くて175センチ以上は普通にありそうな感じ。スタイルも完璧で他の女子から羨ましがられる存在だが、持ち前の社交性とコミュ力で敵を作らずにみんなと上手くやってる。


 さて、そんな彩華だが、結構厳しい家庭に育ったらしくその反動なのか、普段は礼儀正しく控えめな感じなのだが、私服で出かけたりする時は結構鮮やかなものを身につける事を好む。


 つまりクラスメイトの提案は的確で彩華にぴったりだと言えるわけだ。流石だ、敵わないな。


「まあ、カイが1番良いと思った物ば買えば良いと思うよ。彩華もそれが1番嬉しかやろ。」


「そうか・・・そうだな。じゃあこの2つだけ買って帰るか。・・・今日は有難うな、正直かなり助かったぞ。じゃあ会計済ませてくるからこの辺で待っててくれ。」


「どういたしまして。じゃあ、待っとるね。」


 そうそう、それで俺が会計をしにレジに向かおうとした時だったな。


 すぐそこにいた。彩華が。こっちを見てた。驚きを隠せない様子で。悲しそうな顔で。


 彩華があそこまで悲しみと苦悶に満ちた顔をしたのは初めてだ。


 一気に涙目になる彩華。


 待て、違う。そうじゃないんだ。お前が思っていることは単なる誤解だ。


 いくらそう思っても声を出すことができない。とっさの事態に脳が追いつかない。


 そして俺がもたついてる間に彩華が駆け出してしまう。


 畜生っ!


 心の中でそんな声を発しつつ追いかけ始める。ここで彩華を逃してしまったら2度と同じ関係には戻れないだろう。そんな事は恋愛ど素人の俺でも察しがつく。だから死ぬ気で追いかける。


 特に足が早いというわけではないが、それでも女子に負けるつもりはない。着実に距離を詰めていく。これならすぐに追いつけそうだ。


 と、そこで彩華が方向を転換、隣にあった店に入っていく。


 これはかえって好都合。店の中で説明して誤解を解こう。少し早いが誕生日のプレゼントも渡してしまおう。お金はまだ払ってないが、そんな事はこの際どうでも良い。


 今は何としてでも彩華との仲を繋ぎ止める!


「彩華!待ってくれ!こう言っても信じてもらえないかもしれないが、これは誤解なんだ。」


 彩華がそこに立ち止まって振り向く。話を聞いてくれるようだ。誤解を解くなら今しかない。


 彩華に歩み寄りながら話し続ける。


「今日は、お前にこれを買うためにここまで来たんだ。どうか、受け取ってくれ、な・・・。」


 ドサッ


 何だこれ、体に力が入らない・・・


「彩華・・・何を?」


「私のじゃないカイくんは、いりません。他の人の物になってしまうようなカイくんは、死んでしまってください。私も一緒に、来ますから。そしたら誰の邪魔も入らない、ずっと一緒ですね。ふふっ。」


 グサッ、グサッ


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 とまあ、こんな感じのことがあった。アドレナリンとかが出すぎて俺自身は気づかなかったんだが話してる途中に刺されちゃったっぽい。


 出血多量のせいか体の感覚はもう無い。むしろ今まで意識を保っていられたのが不思議なくらいである。


 さて、割と本気でもう残り少なそうだからさっさと正解発表といこうか。


 改めて、正解は

「彼女の誕生日が近づいてきたけど誕生日何買えばいいかわかんないからクラスメイトの女子と一緒に買い物に行ったんだけどそこで彼女とばったり遭遇、彼女に浮気してると勘違いされ、急に何処からか取り出したトンデモナイフで俺をグサグサしたから」だ。みんな、正解したかな?


 ちなみにその彼女はというと現在俺の心臓を持ち上げてあははと笑っております。元気なのは良いことだよ、うん。


 さて、もう死ぬのはほぼ確定みたいなもんだから一思いに殺しておくれよ。もう諦めもついたし、ヤンデレの彼女に殺されるっていう一大イベントも体験できたんだし。


 最初はまだ頑張って抵抗してたんだけどね。ほら、彩華途中からいろいろとお構い無しに俺の体解体してたし・・・嫌でも諦めがつくってもんよ。


 そうこう話してるうちに、限界が来たようだな・・・ヤバい・・・もう、意識が保てな・・・

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