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社畜転生?

作者: まあ

 ネタです。転生はしません。

「……けた」


 月の残業時間が60時間を超えるのが3年を過ぎた日、重い体を引きずって何とか帰宅し自分のベッドに倒れ込んだその時、何かが聞こえた。


「……幻聴か? とうとう、そこまで来たか?」


 残業や休日出勤続きで悲しくなるがとうとうおかしくなったんだなと頭はなぜか冷静に理解しているようでため息が漏れるが明日も休むわけにはいかないため、幻聴などにかまっている時間はない。

 さすがにスーツのまま寝るわけにもいかないし、洗濯くらいしないと着て行くものが無くなる。眠いがまだ力尽きるわけにはいかず、すでに停止しようとしていた頭と体を起こし、何とか立ち上がる。


「……幻聴だけじゃなく、幻覚もありか? シャワーでも浴びるか?」

「げ、幻聴でも幻覚でもありません。こ、こんなところで脱がないでください!?」


 ふらふらした足取りで洗濯場に行こうとした時、ここ最近、使った記憶の無い居間のテーブルの前に見た事もない女性が立っているのだ。

 その姿にこれはダメだと思ったようでシャワーでも浴びてすっきりしようと考えたわけだがスーツを脱ごうとした時、女性は慌てて首を振る。


「……不法侵入か? どうやって入った? ストーカーか?」

「ストーカー? シャドウストーカーがここに!? こんな世界まで追手が」


 女性の反応に少し考えてみる。止まりかけた頭でも幻覚ではないのなら女性が勝手に自分の自宅に入ってきている事は犯罪だと認識することができる。

 警察に通報しようとスーツのなかのスマホに手を伸ばすのだが女性は見るからにひ弱そうに見えた。話を聞いてみるべきかと言う考えが頭をよぎるのだが最近は女性ストーカーでもナイフなどの武器を持ち込んでいる可能性もあり、ゆっくりと距離をとる。

 しかし、彼女はわけのわからない事を言うと慌てて周囲を見回す。


「……可哀想な人か? この場合は病院に連絡か? それでも警察に連絡した方が良いのか?」


 周囲を見回す女性の姿に精神的におかしくなっているのだと判断したようで、どこか自分の近い未来を重ねてしまったようで女性を優しい目で見てしまう。

 ただ、どこかで共感してしまっても女性は明らかに不法侵入者であり、このままにしていくわけにはいかない。何より、自分自身、疲れている。早く眠らないと明日の仕事があるのだ。


「……魔力は感じませんね」

「魔力? やっぱり、いろいろと可愛そうな人か……あれ? 故障? いや、買ったばかりだぞ。どっかの国の爆発するスマホじゃないんだから、こんなにすぐに壊れるわけがないだろ」

「お願いです。私の世界を救ってください。勇者様」


 周囲を見回していた女性の心配事は杞憂だったようでほっと胸をなで下ろすのだが彼女の言っている事は明らかに中二病的な何かであり、理解などは出来ない。

 このままにしていては彼女の家族などが心配すると思い、警察に引き取って貰おうとスマホを取り出すのだが、なぜかスマホはうんともすんとも言わない。

 購入したばかりのスマホが反応しない事にあせっていると女性は俺の顔をまっすぐと見て、またもおかしな事を言う。

 その言葉にキチガイの女性に絡まれたとため息が漏れるが付き合ってなど居られない。


「悪いけど、勇者ごっこなら余所でやってくれないか」

「勇者ごっこ? ち、違います。冗談なんかではありません!!」

「冗談じゃないって言うなら、異世界にでも行けと言うのかよ? どこかのネット小説みたいに」

「ネット小説というのはわかりませんが、その通りです」


 バカな事を言わないでくれとため息を吐いて見せるが女性は真剣な表情で詰め寄ってくる。

 その様子に一瞬、怯んでしまうのだがだからと言ってバカげた話にはいそうですかと頷けるわけなどない。

 スマホもつながらないし、不法侵入は置いておいて一先ず、お帰りいただこうとするのだが彼女は大まじめな表情で頷くのだ。


「……」

「お願いです。あなたにしか頼めないんです」


 どうやって、このキチガイを追い出そうかと頭を動かそうとするのだが疲れ切っている頭は簡単に動きそうもない。

 そんな思いとは裏腹に女性は真剣な様子で頭を下げるのだ。


「俺にしか頼めないって言うけど、俺はただの人間だぞ。なんで、俺なんだよ」

「はい。めちゃくちゃな重労働で昼夜問わず、働いてくれるあなたなら、きっと、魔王を倒せるはずです」

「……おい」


 追い返す方法を探ろうと少し話に乗ってみる。

 女性は俺の生活状況で選ばれたと言うのだ。その言葉がカチンときてしまい。

 彼女を睨み付けるのだが彼女は自分達の世界の人間ではできない事だと真剣に語るとまっすぐにこちらを見る。


「お願いできませんか?」

「……断る」

「どうしてですか!?」

「お前、俺の事を社畜だから選んだって言っているだけだろ!! 誰が社畜だ!! ふざけるのも大概にしろ!! さっさと異世界に帰りやがれ!!」

「そ、そんな事を言わないでください!! お願いします。世界を救ってください」

「うるせえ。お前の世界より、俺にとっては明日の納期の方が大切だ。自分の世界なら、自分達でどうにかしやがれ!!」


 真剣に頭を下げる彼女だが選ばれた理由は明らかに自分の事をバカにしているのだ。

 蹴り飛ばして家から追い出そうとしてやろうとするが女性相手にそんな事をするわけにはいかないため、玄関に引きずって行こうする。

 女性は泣きつくのだがそんな事は知った事ではない。


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