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彩―SAI―  作者: 旦那
 
1/15

プロローグ

 かつて、戦士がこの世界を救った。

 魔法を操る彼彼女らは、壊れかけていた世界を救ったのだ。

 しかしその力はあまりにも強大すぎ、戦士たちは耐え切れず、終戦と共にこの世を去った。

 だがその力は戦士らが死んでもなお消えなかった。

 彼彼女らはきっと、その力にまた導かれ、還ってくることだろう。

 そのときにわたしたちは、彼彼女らに伝えよう。




「大切な友人であった、と」


 静寂と暗がりの中、男はおとぎ話として伝えられてきたはずの分厚い書物を、鈍い音を立てて閉じた。

 男は何年も待ち続けていた。この時を、かつての戦士らが還ってくるこの時を。

 男は狂気にも似た嬉々を口元に浮かべ、書物を手に歩き出した。数歩の距離だ。その床にあったのは、鉄板に紛れた重々しい鉄の扉だった。


「さあ、お仕事が始まりますよ。大好きなお仕事です」


 語りかけても返答はない。あたりには機械の呼吸音、電子音ばかりが、脳のシナプスと繋がっているのではないかと錯覚するほど、常に常に鳴り響き続けていた。当然だ、ここにあるのはそういった無機質なものだけなのだから。床下からだけは、しかし異質な呼吸が聞こえてきた。肉を介した呼吸だ。

 男は楽しそうに愉しそうに、まるで親にプレゼントされた絵本を読むこどものように、再び本を開いた。



 戦士らが闘った最後の地とされるシェオル島は、再び戦火を灯すにはあまりにも雑然としていた。

 シェオル唯一の国家、ローマス王国。

 自然と人と物資とに富む集落、サンガルタン。

 機械化した完全中立地域、ライブラリ。

 そして、海沿いを陣取る傭兵集団、アセレート。

 

 しかし魔法と呼ばれた力は、今では『色』と名を変え、ひっそりと残っていた。

 戦士はまだそこで、眠っていた。




――プロローグ――




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