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破鏡の世に……  作者: 刹那玻璃
さぁ、臥竜が空を駆けていきます。手には竜珠を握りしめて…
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鳳雛さんがやって来ました、でも働く気0です。※

 新谷城しんやじょう内の奥、会議場である。


 日本で城と言うと、天守閣に二の丸、三之丸とある。

 つい先日勉強した、四国の伊予松山城いよまつやまじょうは、日本三大平山城の一つであり、松山商業高校の校歌の『金亀城きんきじょう』は、伊予松山城の別名である。

 天守閣は、約130メートル上にあり、戦いに備えており、通常はほぼ使われておらず、二の丸に城主や側室、側室の子供達の生活の場で、三之丸が、側近、身分の高い配下の住む区域と政務が取り仕切られる役所もある。

 三之丸は伊予松山城の堀に囲まれた中、現在は県美術館や、図書館等がある。

 で三之丸の外に人々が住む。


 長くなったが、中国の城と言うのは、街全体を取り囲む高い塀の中全体のことである。

 その中は、完全に、人々が住む街であり、田畑などは外にあり、一定の時刻に開門し、そして夕刻決まった時間に閉ざされる為、田畑を耕したり、荷物を運んだりするものはそれを覚えておき出入りする。

 見知った者には、気安いが、見知らぬ者には厳しい。

 斥候せっこうがいれば危険だからである。




 話は戻るが、戦場に出た者、城を守っていた者、主だった者が集まっている。


 そんな中、妊婦の子竜しりゅう……琉璃りゅうりと、猛将として名高い夏侯元譲かこうげんじょうと一騎討ちをして怪我をした孔明こうめいは、一足先に退席している。

 兵士たちの傷の手当ても、疲労の要因である。


 会議場の中央には雲長うんちょうとその娘の関平かんぺい季常きじょう幼常ようじょうが、項垂れ座らされている。

 実は今回の戦闘の罰は、玄徳げんとくにしてみれば内々に行うつもりだったが、益徳えきとくは、


「数をごまかしたり、力を抜いて打ったりするかも知れねぇ!! 勝てる戦いをぶち壊そうとした!! 士気は下がるし、罪は罪に服し、恩賞は与える事を周囲に示すべきだ!! もぐら……『臥竜がりゅう』は、夏侯元譲に言われたらしいぜ。この軍は昔年端もいかねぇ娘を闘わせて、気に入らねぇと殴る蹴るをする、くず軍団だったって。軍規も何もないともな。俺らには元直げんちょくと『臥竜』って言う参謀がいる。軍規も整い始めてる。それを示すべきだし、新谷しんやの民にも自分達の事を守る軍がどんなものか、知って貰うべきだ!! 」


と、言い張る。


「だが、そんなことをすれば、士気は……」

「は? もう、落ちてるんだよ!!こいつの部隊は特に!! それとも、あにぃ? ごまかして、数発軽く叩いて終わりにする気だったのか!? それじゃぁ、こいつの部隊の士気は落ちる。現に……」

「……殿。雲長どのの部隊の大半は異動を希望しております」


 元直は真顔で淡々と告げる。


「一つは、自分の娘を戦闘中に殴る蹴るをし、罵っていた事。一つは、その娘である関平どのの脱走、暴言、罵声……つまり、職務を全うしない。やる気もない。そして今回の功労者であるこ……『臥竜』どのの屋敷に脱走後度々乱入し、物を壊したり、奥方である子竜将軍に暴言、殴打をしていると報告も入っております。最後の三つ目は、季常は奥方の馬に何か仕掛けようとうまやに侵入したり、寸前で警備の者が止めましたが、幼常に命じて井戸に毒を持つ毒草を投げ込んだりしようと画策し、実行させようとしました」

「なっ! 」


 季常は絶句する。

 した事をばらされた事と、自分の傀儡かいらいである元直の裏切り……。

 それは、季常の思い込みであって、元直は無理やりこの軍に入らされたとはいえ、自分自身で策を献じ、将軍の益徳には対等に接し、内政を担当する人物や、兵達にも友と呼べるものも出来た。

 最初は嫌々だったが、自分自身で選んだ事だ。


 今ではそれなりの覚悟で、軍にいる。

 だが、自分を無理やり軍に連れ込んだにしてはこの体たらく、腹もたつと言うものである。


「井戸に毒……井戸は新谷に沢山ある重要なもの。人間は、水がなければ生きていけないでしょう。ですから、戦略として城を攻める時に、水源を突き止め塞いだり、もしくは毒を盛ったり……戦略としては利用します。しかしこの策は最終手段で、こんな策を用いるなど、下の下、参謀と名乗るのも恥ずかしい者の策です。それを、季常は味方である『臥竜』どのと子竜将軍の屋敷に、自分の手を汚さず、弟にさせようとした!! 天才? いいえ、この者こそ天災……いや災いを呼び込む者ではないか!! 」


 珍しく憤る元直の声に周囲の文官も、顔をしかめ季常を見る。

 その見下したような蔑む眼差しに、


「わ、私はしていない!! 私は、敬兄けいけい……いや、孔明殿の敬弟けいてい!! 敬兄をおとしいれるなんて!! 」

「ほぉ? では誰を陥れようとしたのです? ご存じですよね? 貴方が投げ込もうとした毒は女性が口に入れると苦しむだけでなく堕胎だたいの効果があると。確か、数年前貴方は邪魔だった孔明殿の姉を脅すだけの為に、この毒を他の人間に使わせ、孔明殿の姉上は倒れ、その上丁度身ごもっていた姉上は子供を失いました。その為に馬家ばけを勘当されたのではなかったですか? 」

「っ! 」


 痛い所を突かれ、口ごもる季常を見下ろした元直は、


「そして、現在子竜将軍は妊娠中。過去と同じ手で今度は孔明殿の嫁を、子供を殺す気ですか? そして、井戸は水源は同じ……つまり、同じ水を口にするのは甘夫人様も同じ……殿の子供を身ごもっている、御方おんかたを殺そうとした事になりますよ。違いますか? 」

「ち、違う!! そ、そんな、奥方を殺すなど考える訳が!! 」


 蒼白になり首を振る。


「わ、私は、あのお……子竜将軍を、ただ……脅かす……そう、戦ってもいないのに戦ったように自慢げに振る舞う、その図々しさに腹が立って……」


 益徳は太い眉を寄せる。


「図々しい? あのりゅ……子竜が? あいつは戦う部隊を心配して、自分も戦うと身ごもっているにも関わらず、出ていこうとしてたぜ? それを、軍の者が引き留めてた。そして、戦いの後、怪我人の手当てに見舞い、励まし……やってたなぁ!? 自慢? してたのは子竜の部隊の人間だ!! 優しく美しい、親身な戦の姫だってな。士気は上がるし、俺はもぐらがてめぇらがしくじった囮をかって出てる間も、二人の竜殿の為に勝つぞと、子竜の軍の者が叫んでたのを目の前で見てたぞ。それのどこが図々しい? 失策を元に戻すか、もしくはお前か、幼常が囮になれば良かったんだよ、季常。そうすれば、二頭の竜どのの活躍はなかっただろうになぁ? もしくは、すぐに次の手をうてばなぁ? それすら出来ねぇだけで、てめぇは参謀の資格はねぇ!! その上、逆恨み!? 図々しいにも程がある。ヘドが出るぜ!! 」


 益徳は、主であり義兄を見る。


「兄ぃ……いや、玄徳様!! 軍規にのっとり処罰はなされるべき!! そして、井戸に毒を入れようとした……玄徳様の奥方にまで及ぶような危害をさせようとした、季常と、その策を実行しようとした幼常にも処分を!! 」

「そうです!! 玄徳様!! 厳しい処断を!! 」

「今回の功労者の夫人への暗殺未遂など、曹孟徳そうもうとくに伝わっては遅いのです!! 」

「玄徳様!! 」


 次々と口を開く部下に、


「わ、解った。では、元直、季常と幼常への処分は……」

じょう50が妥当かと。未遂に終わったといえども、将軍……つまり上司を殺害する計画をたてたのです。そして、弟である幼常に毒を持たせたのです。そして、目先の事しか考えられない、参謀とは片腹痛い存在は、辞めさせるより、ここに残し徹底的に軍略とは何か叩き込むべきでしょう。そうすれば、ある程度まで育ちます」

「誰にやらせる……」

「彼です」


 元直が示したのは着古したボロボロの旅支度に、ボサボサ頭をガリガリかきながら酒瓶片手にやって来る男。


「おい、おっさん。人を罪人扱いしやがって追い回すんじゃねぇよ!! おら、どけ。この馬鹿弟子が!! 」


 季常を蹴り飛ばし、劉備の前にたつのは、顔を完全に横切る傷を負った青年。

 姿はひどいが、瞳は強く輝いている。


「おら、来てやったぜ、おっさん。てめぇが欲しがってた『鳳雛ほうすう』だ。あぁ、そうだ。俺は、おっさんの幕下ばくかに入るが、おっさんの為に献策しねぇ。俺は、追い回されて面倒だから入っただけで、仕事もやらねぇよ。面白い事をさせてくれるのは別だがな!! 」

「面白い事? 」


 益徳の問いに、振り返った鳳雛はにやっと笑う。


「俺は、負けず嫌いだ!! 特に、『臥竜』に負けるのは絶対に嫌だ!! だから、臥竜以上の策略を考えて策略対決させてくれるなら、いてやってもいい。駄目なら、曹孟徳んとこにでもいくか? あぁ、最近有名な司馬仲達しばちゅうたつってのがいるらしい。司馬仲達は8人兄弟の次男で、兄が曹孟徳に出仕したのにしたくねぇとごねてたらしいが……『馬家の五常ごじょう』は、特に『白眉はくび』はハッタリだったが、『司馬家の八達はったつ』は出来が良いらしいぜぇ?あぁ、俺は『臥竜』との対決させてくれねぇなら、司馬仲達んとこにでも行ってやるさ。もしいるとしたら、その間この馬鹿を徹底的に躾直してやるさぁ」


 どうだぁ?


 にやっと笑う士元しげんに、玄徳は渋々頷いたのだった。

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