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破鏡の世に……  作者: 刹那玻璃
始まりの始まりはいつからか解らない、とある一日から。
3/428

強烈な個性を持った兄弟の中では全く太刀打ち出来ません※

 孔明こうめいはひとまず、3人を安全な場所とおぼしき元、畑だった場所に座らせ、枯れ葉や小枝を用いて火をおこすとたきぎをくべる。

 そして、


「ここで大人しくしていてください。姉上方。それに……」


 姉達から離れ、ぷぅうっと頬を膨らませた可愛らしい桃色の衣を纏った少女を見る。


きん。そんなにしかめっ面の上に頬を膨らませたら、不細工になるぞ。可愛くなるんじゃなかったのか? 髪の毛は後で整えてあげるから、衣の汚れを叩いて身綺麗にしておいで」

「……っ」

「返事ははい、だろう? 兄さんは礼儀のなってない子に、お前を育てていないよ」


 孔明の一言に、均と呼ばれた少女は顔をあげる。

 女の子……と思いきや、眼差しはキリッとしており、顔立ちは少年……中性的でもない……。

 しかし、違和感なく女の子の格好ができるのは、二人の破壊魔神である姉たちのお陰である。


「返事は? 」


 再び問いかける孔明の声に、小声で告げる。


「はい……兄様、ごめんなさい」

「よろしい。じゃあ、ここにちゃんといなさい。家の中から鍋とか、野宿に必要なものを取ってくるから、均はそこの菜もの取ってきて。均、出来るね? 」

「はい」


 今度はハッキリと返事をした可愛らしい弟の頭を撫で、そして、怖じ気づくこともなく破壊された家の残骸ざんがいに入って行った。




 しばらくして、鍋だけでなくかき集めて来たらしい日用品を抱え孔明が戻ってくると、均が井戸で汲んだ水を沸かし始める。

 その間に孔明は、姉たちが仕留めた豚をさばく。

 さばいた肉の特に傷みの早い部位が、次々鍋に入れられていき、他の部位は燻したり、塩漬けにする。

  鍋の様子を見ながら、手慣れたように解体していく。

 そして、鍋が美味しい匂いを漂わせ始めると、さっさと3人の器によそう。


「はい。3人とも。食べてください。お腹すいてるでしょう? 」

「うんっ! いただきます」


 嬉しそうに食べ始める均の頭を撫で、姉たちを見る。


「どうしたんですか? 食べないと無くなっちゃいますよ? 」


 首をかしげる弟に、躊躇いがちに晶瑩しょうえいは、


「り、りょうの分は? 」


「あぁ、先に食べててください。私なら先に寝る準備に、薪を一晩分は置いておかないといけないでしょう? 取りに行ってきます」

「で、でも……亮は朝……」


 躊躇う紅瑩こうえいに、にっこりと


「一食抜いても大丈夫ですよ。それに、姉上たちは3人で全部食べる気ですか? いくら大食漢の姉上達でも、ここの肉の山までペロリっと食べる気ですか? 」

「失礼な!! そこまで食べないわよ。晶瑩じゃあるまいし」

「なんですって? 姉様と一緒にしないで、失礼だわ」


 睨み合う姉たちの頭をよしよしと撫で、


「はいはい、大人しくしててください。行ってきます」


と、完璧な廃墟はいきょに入っていく。




 雨漏りのする屋根の残骸を剥がし、中に潜り込んだ孔明はその場にしゃがみこみ溜め息が、零れそうになる唇を噛む。


 解っている。

 解っているのだ、3人が本当に悪気がないのだということは。

 二人の姉たちはお転婆で、末弟がただひ弱で気が小さく、可愛らしいもの、綺麗なものに興味があるのだと……。

 だが、これは酷すぎる。


 自分はごくごく普通の一般の人間で、兄のように遊学出来るような優秀な人間ではないと、自覚している。

 星を読むのは、田畑の大根などの成育の為だし、計算は、市場で買い物をする為に充分役にたっている。

 読み書きも自分や家族が関わることすら理解できれば、それで充分満足なのだ。

 衣食住の心配がない。

 のんびりと田畑を耕し、雨の日には内職、暇があれば故郷から何とか持ち出した書物を読んだり、昼寝をしたり……それで良いのだ。


 それなのに今、自分は何をしているのだろう。

 何かが滲みそうになる目をまばたきをして隠し、唇には何とか笑みを作り、まずは数日程度生活に必要なものを探し出そうとし始めたのだった。

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