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破鏡の世に……  作者: 刹那玻璃
次第に戦いの風が赤壁へと吹き始めています。
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今は策略を用い、生き抜くための戦いをするしかありません。※

月英げつえい子明しめい、そして後を追いかけてきた子瑜しゆきんは4人で歩いていく。


「…全く…孔明こうめいの病は厄介なのよ!!子瑜兄上、均!!どうしてもっと早く連絡しなかったの!!」


イライラと、それでも月英は追いかけてきた二人に説教をする。


「もう…琉璃りゅうりを追い詰めることが、孔明を追い詰めるってことが何故解らないの!?いい?孔明の責任感と家族と引き離される恐怖感をあおってどうするの!!」

「ごめんなさい…反省してます」


瓜二つの兄弟は、頭を下げる。


「全く…孔明の心の弱い部分をチクチクつついて、どうするの!!本当に、許せなくてよ!!」


少し低めではあるものの、余りにも違和感のない言葉遣いに、子明は混乱する横で月英は、


「本当に、困ったわね…孔明がいないと、臨機応変に対処は無理よ」


頬に手を当て、溜め息を漏らす。


「申し訳ないけれど、孔明程、見極め切り替えが早いのがいないのよ。士元しげんがいれば、何とかなると思うけれど、いないでしょ?それに司馬仲達しばちゅうたつが、向こうの参謀として出ないのがましね」


「えっと…兄上は?」


「やだ」


子明の言葉に子瑜が、言い切る。


「私は墨子ぼくしの城攻めならりょうよりも強いけど、それ以外は絶対勝てないもん!!」


「自慢しない!!」


スコーンと均が兄の頭を叩く。


「全く…これで、よく兄様を騙し通してこれたよね!?」


「日頃の鍛練の結果!!」


「どこが鍛練だ!!そんな方向を鍛えてどうする!!」


均と月英は突っ込む。


「全く…子瑜兄上は厄介だと思っていたけれど…孔明以外はそこらの虫以下…まぁ、虫より動物だけど。それでも、8年もいたんでしょう?いないの?孔明とまでも言わないにしろ、ある程度の知識と参謀としての対処、武将として動けるのは…孔明までは望まないけれど、ある程度の方がいないと役に立たないわ!!兄上は駄目!!」


「月英、それはないでしょ!!私だって、亮をそれなりに育てたんだから、亮までは無理だけど、ある程度役に立つよ!!失礼な。面倒なだけ!!だってさぁ…亮の策略って勘と星見と、今まで覚えた策略を全部使いまくるんだよ!?もう、野生の勘に近いんだよ!!頭の中で計算をして、自分で動くんだよ!?普通片方に才能がある人は多いけど、両方なんて私には無理!!絶対戦い…一騎討ちは出来ません!!」


「まぁ、そこまで望んでないし…」


月英は首をすくめる。


「で、動くのは誰!?」


甘興霸かんこうはどのと凌公績りょうこうせきどの」


子瑜の一言に、月英は切り捨てる。


「無理!!それだけじゃ足りないわ!!もっと、俊敏に動き、判断し、士気を上げられる…もっと強い…味方はいないの!?」


「…そ、それは…」


子瑜は項垂れる。


文官の性格上、武将と反りが合わない…その上、子瑜は元々孫仲謀そんちゅうぼうの側近であり、味方になれそうな武官は解らない。


と、ハッとしたように、顔をあげる。


韓義公かんぎこうどの!!それに、徐文嚮じょぶんきょうどの!!文嚮どのは、同じ郡の出身で…少し交流がある。前回の会議には出席していない!!」


「義公どのは私の兄のような人だ」


子明が声をあげる。


「あの人も出ていない!!」


「それでも二人増えただけ…他に…」


考え込む4人の背後から、細く柔らかい声がする。


「私が、参ります」


振り返り、4人は絶句する。


「琉璃!?な、何言ってるんだ!!お前は!!」


月英は叱ろうとするが、


「私が、諸葛孔明しょかつこうめいの一番弟子であり、趙子竜ちょうしりゅうであります。私が、共に戦います!!」


「駄目だ!!孔明に着いていろ!!孔明はお前たちがいないと…」


「旦那さまも賛成してくれました」


琉璃は振り返ると、両手をとうこうの手に引かれ、きょうと並んだ孔明が立っている。


「孔明!?」


「私も…行きます。策略を練った責任があるんです。そのまま他人に預けるなど、卑怯な逃亡はしません!!口先だけの参謀や武将に堕ちるつもりはありません!!」


「無理だと、無理だと言っているだろう!!お前の病は!!」


月英の言葉に、微笑み…、


「戦いを終えてから…寝込みます。ちゃんと治しますよ。なので、今回だけは…行かせてください。私だって戦う術を知っているんです。それに、病人とはいえ、私のように動けるのは琉璃くらいです…そして、子明兄上。数が少ないんです。今は一人でも戦える者が必要です。ですから…」


「…子瑜兄上」


月英はチラッと義兄弟を見る。


子瑜は首を振る。


「無理…亮は言い出したら聞かない。頑固者。それに、人手は必要なんだ」


子瑜は、弟に近づき見上げる。


「亮。やり遂げるつもりだね?出来るね?」


「はい!!」


「では、諸葛家しょかつけの当主として、お前の兄として頼む…私たちの江東こうとう戦禍せんかに巻き込まれぬよう…手を貸してほしい!!」


「命令だとしても…兄上の頼みなら、必ず、全力をつくし戦い抜いて見せます!!安心してください!!」


孔明は力強く答える。


「それに、月英も安心して…琉璃は危険な目に合わせない。何が何でも守り抜く!!その為なら…この江東を滅ぼしても良いよ!!」


孔明の断言に、琉璃は頬を赤くするが、月英たちは、


「…おい、こら…この江東を守るために戦うんだろうが!?違うのか!?」


「そうだよ!!亮!!今さっき自分で言い切ったでしょ!?本末転倒じゃないか!?」


「兄様!!本心を全部漏らしたら駄目だよ!!漏らすなら半分!!琉璃も江東も守りますって、形だけ言っておけば良いの!!」


「おーい、均にいも亮にいも、腹黒さが出てるぞ~!?どうしてそう腹黒いんだ!?」


子明の言葉に、4人は振り返り声を揃える。


「裏であれこれ画策しない方がおかしい!!正々堂々!?そんなのがまかり通らないのがこの世の中だ!!正しいとか正しくないとかは勝利すれば話は変わる!!正々堂々したところで、馬鹿を見るだけ!!正々堂々したいなら平和な世を作ってから!!今は卑怯でも、何でもやって勝ち抜いたらそれでいい!!」


「…あ、そうですね…すみません」


「でも、本当は、正しいんですよ?子明兄上の意見は。だから、その真っ直ぐさは捨ててほしくないな…」


孔明は羨ましそうに呟く。


「…。もうすぐ着くよ。いいかい?」


子瑜の言葉に、姿勢を正すのだった。

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