表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この美しくも過酷な世界の中で  作者: た~りぃ
第一章 幼年編
4/22

004話 絵本なめてました

「002話 情報を整理してみた - 家族編」修正しました。さすがに1年身近にいて男爵家と気づかないのはおかしいですので。


結構勢いで書いてます。

「シルフィーナ様、ウォルフ様、入りますよ~」


ドアを開けて入ってきたのはこの家の侍女であるアリーさんだ。


パッと見の年齢は20代前半くらいだろうか。栗色の髪に、愛嬌のある顔立ちで、なかなか素敵な人だ。というかこの世界、顔面偏差値高くね?




「あいー!」


隣で寝ていたはずのシルフィーナが起き出してアリーさんの方に向かっていく。


あぁ、危ない!危ないって!ベッドから降りるときは足から降りようよ!




男爵家の御令嬢、シルフィーナはとても危なっかしい。


歩いているとあっちへよたよた、こっちへよたよた。


愛くるしい外見がある為、本来ならば非常に心和む光景のはずなのだが、


近しい物からするとたまったものではない。


ベッドから転げ落ちそうになるなど日常茶飯事。よく転び、よく物にぶつかる。


その度に泣かれるのだから、同じ部屋で育てられている俺としてはたまったものではない。


子育ての経験なんて皆無の俺だけど、気づけば自分の平穏の為か、どんどん防ぎ方、あやし方が上達していってる気がする。




「あらあら、シルフィーナ様!危ないですわ!ウォルフ様、ありがとうございます!」


「おうふー!やーあー!」


しっかりとシルフィーナの足をつかんでベッドからの転落を防いだ俺に、アリーさんが感謝の言葉をかけてくる。

アリーさんも最近は言葉こそ慌ててるものの、行動は落ち着いている。微笑みさえ浮かべている。


「アリーさん、わらってないで、たすけて」


小さな子どもを抑えているこっちも同い年の子どもなのだ。楽に押えているわけではない。


「おうふー!」


そんなこっちの気も知らず全力でジタバタするシルフィーナ。


くっ、かわいいなんて思ってないんだからねっ!


「はいはい、シルフィーナ様~。アリーですよ~」


「あい~!」


アリーさんが近寄ってきて抱き上げると、シルフィーナは輝くような笑顔を見せる。


アリーさん、顔、顔!子どもしかいないとはいえ、ちょっとだらしがなさすぎるぞ、その顔!気持ちはわからんでもないけどさ!


「お二人とも、今日はお食事を召し上がりましたらメヒティルト様が絵本を読んで下さいますよ」


「あい!まま!えほん~!」


「はい、アリーさん」


アリーさんの言うことを理解しているのか、はたまた母親のメヒティルトさんの名前が出たからだろうか、さらにはしゃぐシルフィーナ。


「それじゃあ、お食事が出来ましたらまた来ますからね~」


そう言ってアリーさんが部屋から出ていく。




実は絵本を読んでもらうというのは結構気に入ってる。


20歳超えてるのに何言ってんだこいつと思われるかもしれないが、絵本といえど侮るなかれ。


まず絵本と言うものには結構世の中の一般常識が詰まっている。

何せ子どもの頃はみんなが親に読んでもらっているからだ。


なまじ前世の記憶なんて持ち合わせている俺は、どうしても前世の常識に引っ張られてしまう。

それを避ける為には絵本ってものは意外と優秀な情報ツールなのだ。




あともうひとつ、俺が絵本を楽しみにしている要因がある。


それはこの世界にある「魔法」だ。


正しくは魔導術。この世界では略されて導術とも呼ばれている。


最初に聞いた時は、どこの世界でも魔法ってあるんだなぁ程度に感じていたが、実際にアリーさんが指先から火を出したときは心の底から驚いた。


当然俺がその後導術の練習に励んだのは言うまでもない。




この世界で導術を使うには導力という、所謂魔力のような物を持ち合わせている必要がある。

つまりある種の才能が必要なのだ。


幸い俺にはその才能があったらしく、割とすぐに導術を使えるようになった。


体の中に何か澱の様な物があるのに気付いたら、あとはそとに放出するだけだ。


ただし、ただ垂れ流すだけではいけないらしい。一度火を出そうとして小火騒ぎとなったのはいい思い出だ。

ファーナム男爵家の皆様、申し訳が御座いません…。


ちなみに上手く導術を使う為には、導力を調整して、自分のイメージを上乗せすることが大事ということが練習の中でわかっている。




導術には魔法と同じで属性という概念がある。


地水火風の基本四属性、雷木の中位二属性、光闇の上位二属性の八属性が存在する。


中位二属性に関しては基本四属性の合成と言う側面があるので、六属性という導術師もいるらしい。


基本四属性は基本と言うだけあり、導術が使える人間であればどれか1つの属性は必ず使える。


中位二属性は合成属性である。雷は火と風、木は地と水が使えれば習得できる可能性が高いようだ。

必然的に中位二属性が使える導術師は八属性中三属性が使えるということになる。


上位二属性に関しては、他の六属性とは完全に独立した特異属性だ。

光属性を持つと神官や僧侶になれ、闇属性を持つと暗殺者や密偵等、アンダーグラウンドな職業への道が開ける。

上位とは言われているが、基本属性が使えなくても上位属性が使える人間は少なくない。

光属性に治癒術が含まれる為、教会という宗教組織が勝手に上位と言い始めたのが始まりらしい。なんとも適当な理由である。




世間一般では、八属性中二属性使えて導術師、四属性使えて大導術師、基本と中位の六属性全て使えた導術師は伝説と謳われ、お伽噺に出てきている。


アリーさんは前述のように火が使える。

ファーナム家は代々強力な火属性の導術を使える家系で、歴代の当主には二属性使える者も多かったそうな。


ちなみに俺は…






全部である。八属性全部だ。

何このチート、と自分にドン引いてしまった。


生まれて1年半で伝説の導術師を超えてしまったのだ。

転生ボーナス恐ろしい…!そういや身体能力はどうなんだろう?

今度ラディスくん相手に張り合ってみようか。




まぁそんなこんなで絵本というのは俺にとって結構、いやかなり実のある書物だったのさ。


まさに魔導書。絵本って素晴らしい!




「シルフィーナ様~、ウォルフ様~!お食事の時間ですよ~」




お、アリーさんが呼びにきた。


さて、腹いっぱい食って、今日も楽しい話を聞かせてもらおうじゃないか!

主人公が導術覚えてました。生後1年半で既に伝説超え。伝説涙目ですね。


読んで下さってありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ