002話 情報を整理してみた - 家族編
俺が“こちら”で産まれて2年が経った。
何故“こちら”だって?そりゃあ空を見て太陽が2つもあったら明らかに地球じゃないだろ?
馬鹿馬鹿しい話だが、どうやら俺は異世界とかいうところに転生(笑)してしまったらしい。
正直前世ではアニメとかゲームとかは好きだったし、黒歴史の中にはそれをネタにした小説が書かれたおぞましいノートとかもあった。所謂オタクである。
だけどまさか自分が本当に異世界なんてところに来るなんて想像できるだろうか?
異世界に来たのが厨二病真っ盛りの頃の俺なら「ククク…、やはり我は選ばれし存在(暗黒微笑)」とかアホな事をして無駄にはしゃいだのだろうが、今の俺は「見た目は赤ちゃん、頭脳は大学4年生」。
純粋に自分の置かれた状況を楽しむより、自分がこの世界で無事に暮らせるよう、情報を集めるのに重きを置くことにする。
そう、世の中情報を集め、整理し、使用したものが世間で生き残れるのだ!
まず、今の自分の事をおさらいしてみる。異世界での俺の名前はウォルフ。ウォルフ=ライガルド。
自分ではまだ確認できていないが、俺を見る人々の話によると白銀の髪に、サファイアブルーの瞳をもつ男の子だそうだ。
なにその厨二設定と思わんでもないが、母が金髪にサファイアブルーの瞳、父が銀髪にグレーの瞳を持っているからには、まぁこちらではそんなに変な色ではないのかもしれない。
母はメリッサ=“ドラグニアス“=ライガルド。金髪碧眼の超絶美人だ。
正直自分が大人だったら土下座してでもお近づきになりたい。そう思ってた時期が私にもありました。
スタイルよし、美貌よし、優しいし。ただ母親としてはちょっと問題ありだと思うんだ。
父はアッシュ=“ドラグニオス”=ライガルド。銀髪灰眼のこちらも結構なイケメンの親父である。
ただ父親の方はちょっと異様な威圧感があり、こちらは大人であったらなるべくお近づきになりたくない感じではある。
こちらもやはり親としてはちょっと問題がある。
ミドルネームとかどこの貴族様だよと思ったが、これは両親が“竜殺し”を成し遂げた際に国から与えられた称号らしい(父親が自慢してた。赤ちゃんの俺に)。
そう、“こちら”の両親は冒険者だ。
冒険者というとテンガロンハットを被って、悪の組織と戦いながらお宝をゲットするおっさんをイメージするが、あながち間違いでもない。
それだけじゃなく化け物を倒して素材を入手する某ハンティングゲームのような事もやるのが冒険者という職種のようだ。
この辺はRPGとかライトノベルとかに出てくる冒険者と変わらないとみていい。
しかし“竜殺し”と言ったら普通は国に召し抱えられて、それこそ貴族並みに良い生活を送れそうなものだが、現在我が家はどこかの村の外れに建てられたログハウスの様な物だ。
質素な生活が好みなのか、他に理由があるのか。
その辺りはまだ2歳になったばかりの俺には情報を仕入れようがない。
あと大事なことだ、冒険者と聞いてジョブや装備は何だろう、と確認してしまうのはオタクとしてはしょうがないよね?しょうがないんだよ!
母親は出かけるときに弓矢を背に、腰に短剣を佩いていた。恐らくゲームでいうアーチャーとかレンジャーの様なジョブなんだろう。
美しい金髪を靡かせて、華麗に弓で敵を倒す美女。
うーん、想像するだけで絵になる。
対して父親は自分の背丈程もある大剣を担いでいた。こちらは間違いなく剣士だ。
しかし今の自分の視点からじゃよくわからんが、周りの家具から想定するに父親の身長は1メートル80センチ程。
どう考えたってそんな金属の塊振り回すのは人間には無理でしょ…。
僕のお父様は本当に人間なのでしょうか…。
そんな両親は、俺が産まれて最初の1年は揃って育ててくれていたが、今は二人ともいない。
俺があまり無駄に泣いたりしない為、手のかからない子どもだと判断したのか、それからはどちらかが、もしくは揃って長期間家を開けて、村の人間に俺を預けて帰ってこないという事もざらだった。
預けられる先は大抵この地域を治める男爵家で、俺と同い年の子どもがいる為、まとめて育ててもらおうというのが親の腹積もりだろう。
男爵様と両親は仲が良いようだが、いくらなんでも貴族様に子供を預けっぱなしってのは失礼極まりないと思う。
しかも、手のかかる同い年の赤ん坊がいたら、普通は実の子どもを優遇して、他人の子どもなんて二の次だろうに、俺の両親はそういうことに気が回らないんだろうか。
幸いなことに男爵家の方々は俺を蔑ろにすることはなかったけど、俺の両親の俺の扱いにはあんまり良い印象をもってないようだ。
まぁ普通はまだ乳飲み子の我が子預けて両親揃って化け物退治だの宝探しだのはしないよなぁ。
実は今現在も俺は男爵家に預けられていて、今回は既に1カ月近く親に会っていない。この辺が俺が両親に親の適正云々という評価を与えている要因となっている。
「シルフィーナ様、ウォルフ様、入りますよ~」
と、天井をぼんやりと見つめながら考え事をしていると、部屋の扉がノックされ、一人の女性が入ってきた。
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