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この美しくも過酷な世界の中で  作者: た~りぃ
第二章 学術院編
15/22

014話 絡まれました

今朝チラッとアクセス解析見た時にユニーク5000のお気に入り登録80超えてて、すげぇ!と思っていたんですが、帰宅してみたらユニーク8000超えのお気に入り300件。


思わず自分の目を疑いました。


原因はなんだと調べてみたところ、総合日間ランキングで21位に。


自分の書いた文章が多くの人に読んでもらえて、楽しんで頂けてるというのは大変嬉しいことです。


読んで下さり、評価して下さる方々にはありがとうの言葉では足りないくらい感謝しております。


これを励みにこれからも書き続けていきたいと思います。


それではこれからも宜しくお願い致します。




第二章開始です。

「おぉ~!」


正面の背の高い建物を見上げて、三つ編みにした銀髪を一房、肩甲骨まで伸ばした少年は歓喜の声を上げる。


「これがフラミティス学術院か~!」


「ふふ、ウォルフったら、はしゃぎすぎよ。」


その様子に微笑みながら、ウェーブのかかった髪を背中まで伸ばした紅毛の少女が隣に並ぶ。




銀髪の少年――ウォルフは白い布地の詰襟タイプの制服に黒革靴。


襟の縁や肩部分は空色が入っており、襟には学年を表わす記章が付けられている。


紅毛の少女――シルフィーナは白い布地のワンピースタイプの制服に、こちらは黒い編上げのブーツを履いている。


空色のスカーフに1本黒いラインが入っているのは初等部1年のみとなっている。


学年が進めば本数が増え、中等部に上がると、専門によって異なる制服が指定される。




彼らの周囲には同じデザインの制服を着た少年少女が溢れ返っており、正面の入学式会場に入っていく。


彼らはほとんどが人間だったが、中には精霊族の眷属エルフや、鍛冶の一族ドワーフ、獣の体の一部を持つ獣人など、亜人と呼ばれる種族もいた。


「しかし、思ったより新入生って多いんだなぁ」


「今年は全部で250人くらいいるらしいわ」


「それ凄くない?いつもは大体100人かそこらなんだろ?」


ちなみにこの年の初等部新入生は卒業後「奇跡の年」と言われるほど優秀な人材を数多く輩出し、一目を置かれることとなる。


「まぁ今年はウォルフが入学した時点で『凄い』年なんだけどね」


「まー、『凄い』かどうかは別にして、そうそうある年ではないよなぁ」


転生した異世界人が入学してくる年が頻繁にあったら、それはそれで問題である。


ウォルフとシルフィーナがそんな他愛のない話に花を咲かせながら入学式会場へ向かっていると、突然後方が騒がしくなり始めた。








―――――――――――――――


―――――――――――


―――――――








「お待ちなさい、そこのあなた!」


(なんかタカビーなやつがいるなぁ。あぁいうのに絡まれる不幸な人に幸あれ。)


「お待ちなさいと言ってるのが聞こえないんですの!?」


(おぉ、無視しているのか。偉いぞ。それが正解だ。)


「おいっ、そこの銀髪のやつ!リリー様が貴様の様なやつに声をかけて下さっているんだ!無礼だぞっ!」


(って、俺かよ…)


他人事気分でいたウォルフは一つ溜息をつくと、極上の笑顔を顔に張り付けて振り返る。


「僕のことでしたか?すいません、気づかなかったもので。」


その笑顔に、振り返った先にいた少年少女は顔を赤くして呆ける。


「………っ!ま、まぁいいわ。あなた、光栄に思いなさい!私の従者にしてさしあげますわっ!」


中央にいた金髪の少女が我に返り、ウォルフに指を突き付けて、堂々と言い放った。


「はぁ?」


思わず笑顔が崩れ、今度はウォルフが呆けてしまった。


(何を言っているんだ、こいつは?)


「間抜けな声を出すんじゃありません!私の従者たる者、常に凛々しく、聡明でなければ…」


「いやいや、いつ僕が君の従者になったの?」


「今さっきですわっ!」


「僕は従者になるなんて一言も言ってないけど?」


「えっ?」


「いや、僕が従者になったところで何の利益にもならないでしょ?」


「えっ?」


再び金髪の少女たちが呆ける。


「この(わたくし)の従者になれる栄誉を与えられるというのに…」


「いや、ていうか誰?」


「「「「「………は?」」」」」


「………ウォルフぅ…」


信じられない物を見たという顔をする少女たちと、頭を抱えるシルフィーナ。


「あなた…本気で言っていますの…?」


「いやー、どこかで見かけたことがある様な気がするんだけど…」


「はぁ、気がするんだけど…じゃないわよ…」


何やら俯いてプルプルと震えだす少女を哀れに思ったのか、シルフィーナが助け船を出す。


「あのね、この方はこの国の第三王女、リリー=イルヴァ=シュバルト様よ」


「王女様、ねぇ…」




目の前で打ちひしがれている少女を観察しながら、ウォルフは記憶を掘り返す。


確か現国王フォルト=テオフィル=シュバルトには6人の子がいて、王子が2人、王女が4人。


確か王子二人は既に成人して国務をこなしているし、王女も上二人は嫁いでいて、一番下はまだ3つか4つだったような。


第3王女が同い年って話は聞いてたような気もするし、顔も昔肖像画で一度見た。


あの画はまだ4つになったばかりの頃の物だったが、言われてみれば確かに目の前の少女にその面影が感じられた。




「成程。んで、その王女様が何で僕を?」


「それはあなたのそ輝く銀色の髪と、宝石のような瞳、彫刻の様に整ったその容姿。全てが私の従者に相応しいからですわ!」


ようやく王女と認識してもらえた少女は、勢い良く顔を上げ捲くし立てる。


「はぁ…」


一気に気が抜ける。そんな理由でいきなり人を従者呼ばわりとは、王族とは勝手なものだ。


「で?」


「で、とは?」


「僕が姫様の従者になることで、僕に何の得が?」


「無礼者!リリー様の従者に選ばれること自体、貴様の様な平民には過ぎたことだと理解できんのか!?」


「んなこと理解できてたまるか」


取り巻きの一人が上げた罵声に冷ややかな視線と言葉を返すと、凍りついた様に動かなくなり黙ってしまう。


「………何が不満なんですの?」


「いや、だって自由を縛られるだけで何も得しないじゃないですか。」


「いつでも美味しい物が食べれますわ!」


「いや、今でも十分美味い物食べてるし」


「お金や宝石も思いのままですわ!」


「興味ないし」


「んぐぐぐぐ…!あっ、美しい女性も思いのまま…」


「え?マj「ちょっ!ウォルフはそんなものに興味はありません!!」


ウォルフが答えるより先にシルフィーナが慌てたように割って入る。


「なんであなたが答えるんですの?」


「何か不都合がありまして、姫様?」


何やら視線で火花を散らし合う二人。




正直前世であまり恋愛というものに縁がなかったウォルフは、最後の条件には若干心惹かれるものがあった。


が、イケメンチートに生まれ変わったからには、ここで誘いに乗らなくてもきっといいことがあるに違いない!と信じて、この場は引き下がることにした。




ウォルフが考え事から復帰しても、まだ二人は睨み合っていた。


このままでは埒が明かない、とウォルフは間に割って入る。


「フィーナ、その辺にしといたら?」


「………まったく、誰のせいだと…」


何やらぶつくさと呟きながら引き下がるシルフィーナだったが、取り敢えず無視する。


「ということですので、姫殿下も僕を従者にするのは諦めて下さい。」


「何が『ということ』なんですの!?」


「だって、貴女が提示する条件はどれも僕を納得させるものではなかったじゃないですか。」


「貴様っ!分を弁えろ!それともその身に叩き込んでほしいのか!?」


取り巻きの中でも一際体格のいい少年が腰に佩いた剣に手をかける。


「へぇ、いいですよ?力で屈服させられると思うのならやってみな?」


それを見てウォルフは戦闘態勢へと入り、言葉が荒くなる。


空気が張りつめ、それまで事態を傍観していた他の新入生が後ずさる。








―――――――――――――――


―――――――――――


―――――――








「こら!そこっ!何をやっている!?」




突然響いた声に緊張が霧散する。


取り巻きの方は未だに敵意むき出しだが、ウォルフは声の主を認めて敵意を収めたのだ。




「初等部の新入生はこれから入学式だろう!こんなところで油を売っていないでとっとと会場に向かえ!」


「「ラディス兄さん!」」


「やぁ、フィーナ、ウォルフ」


そこにはシルフィーナの3つ上の兄、ラディス=サカリ=ファーナムがいた。


「ラディス兄さん、中等部の入学式は明日では?」


「おい、ウォルフ、可愛い妹と弟分の晴れの日に兄が来てはおかしいか?」


「いや、おかしくはないけど…」


「だろ?ほら、お前らもとっとと会場に行けって」


シッシッと手を振るラディスに苦笑しつつ背を向ける二人。




だが、その場には他にもまだ当事者がいた。




「ちょっと!何ですの、あなたは!?いきなりしゃしゃり出てきて無礼ですわよ!」


リリー王女である。置いてけぼりにされた彼女は顔を真っ赤にして地団駄を踏んでいた。


「これはリリー王女殿下。ご挨拶が遅れました。私、グレン=ロジェ=ファーナムが長子、ラディス=サカリ=ファーナムと申します。この度は私の妹と弟分が大変失礼を致しました。どうか寛大な御心でお許し下さい。」


ラディスの挨拶と謝罪は12歳という年齢を考えると、満点と言ってもいいだろう。


それに対するリリー王女の返しは、王族という意味では赤点だが、9歳の子どもとしてはある意味年相応だったと言ってもいい。




「ファーナムって、あの『腰抜け』ファーナム?」




その言葉にラディスは表情を変えず、


シルフィーナは眉を跳ね上げ、


ウォルフは








嗤った。

~幕間~


シルフィーナ「………。(殺意の籠った目)」


ウォルフ「………。(ヤバい笑顔)」


ラディス(あぁ、なんか一悶着ありそう…)


――――――――――――――――――――


第一章では名前しか出てこなかったお兄様登場。

第二章ではそこそこ出てくる予定です。


世話焼き体質の気苦労体質。妹と弟分に振り回されます。


頑張れラディスくん!




読んで下さってありがとうございます。

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