013話 フラミティス学術院
第二章プロローグ
舞台となる学術院の説明になります。
王立フラミティス学術院。
クレディフ王国の首都、タバックに建つその学術院には国中から王国の未来を担う若者たちが集う。
双陽暦200年に設立されたこの学術院は、剣の国における優秀な人材を育てることを目的としている。
外部からの人間を受け入れやすい体制の整っているクレディフでも、いつ入ってくる他国の人間よりは生え抜きの自国の人間を育てる方が、良い人材を得る方法としては確実である。
その為当時の王家は国の持つ財産を他国に売り払ってまでして、設立の為の資金を集めた。
国の為、優秀な人材を育てる事を目的としたこの学術院は、王国民であれば身分に関わらず誰にでも入学資格があり、王国民であれば在籍中の学費は無料となっている。
クレディフ王国の教育制度は身分によって異なる。
幼年部、初等部、中等部、高等部からなり、それぞれ期間は3年。
一番若い幼年部は6歳から入学することになり、以降9歳、12歳、15歳と上の段階へと進む。
身分により義務教育の期間が存在し、決められた期間を学術院で学ぶことになっている。
王族や一部の高位の貴族の子弟は幼年部から9年。
大多数の貴族や平民の中でも富裕層と呼ばれる者達の子弟は初等部から6年が、義務教育期間となり、余程特殊な理由がない限りは通わなければならない。
ちなみに―――高等部への教育義務はない。
それまでの専門分野について学を深めたい人間が進む場所であり、大抵は中等部を卒業した段階で各界で活躍するため社会に飛び立つことになる。
義務教育が課せられている身分以外の者達も、試験を突破できるだけの能力があれば入学が認められる為、学術院の生徒には平民の子も多い。
だが早くから入学して来た者達は、それを成しえてきた身分や能力に誇りを持っており、得てして途中入学者を見下す傾向にある。
その為学院内には、同じ学生という立場にありながら、社会と同じく派閥や身分が存在し、その格差は子ども特有の遠慮のなさも相まって、大人社会よりも激しいものとなっていた。
双陽暦482年。
その年は学術院、いや、国に関わる全ての人間にとって忘れられない年になる。
初等部に入学してくる銀髪碧眼の美しい少年が巻き起こす出来事は、良くも悪くもそれまでの世間の常識を覆した。
ある者はその少年を悪魔と呼び恐れ、ある者はその少年を天使と呼び崇めた。
悪魔と天使の呼び名を持つ少年の学術院生活は目前に迫っていた。
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