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異世界消毒英雄譚~異世界でラーメンを夢見る冒険者~  作者: 作者KK
第1章 路地裏からの異世界転移

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8/8

第8話 汚染スライムと最初の共闘

翌朝。

俺は南門の下水路前で、目を細めながら立っていた。


「……うわ、想像以上に臭ぇな」


下水路の入り口は石造りのトンネル。

そこから立ち昇る異臭は、まるで“鼻で殴られる”感覚。


どぶ臭さに泥、カビ、そして何か焦げたようなにおい。

ああ、これ、地獄のブレンドだ。


「消毒液一本じゃ足りねぇな……」


バッグを覗くと、スプレーは残り半分。

心許ない。

異世界コンビニがあれば爆買いしてたところだ。


「来たわね」


背後から声。

振り返ると、リュミナ=ブラストがいた。


朝日に照らされる赤茶の髪。

昨日ギルドで見たときよりも、表情が柔らかい。

けどその瞳の奥では、常に魔力がちらついている。


「おはようございます。……マジで行くんですか、これ」

「ええ。当然でしょ。放っておくと、村の井戸まで汚染が広がる」


彼女はそう言って、腰の小さな魔導書を開いた。

ページに刻まれた魔方陣が、淡く光を放つ。


「あなたの“消毒液”の効果、改めて確認しておきたい。

どの程度の汚染まで浄化できるの?」


「えっと……だいたい、バクテリア系から小型のスライムぐらいまでっすかね」

「十分。私は殲滅、あなたは浄化。それで完全制圧ができるわ」


「いや待ってください。俺、戦闘力ゼロなんすけど」

「問題ないわ。私が撃つから」


「……その言い方すげぇ不安なんですけど」


リュミナは無表情のまま下水路の闇を覗き込んだ。


「さあ、行くわよ」


その一言で、俺の足は勝手に動き出していた。


◆下水道の闇


足を踏み入れた瞬間、ぬめっとした音。

靴底に泥と何かの混ざった感触がまとわりつく。


「うぅ……菌の気配しかしねぇ……」

「あなた、さっきからずっと文句言ってる」

「この臭気の中で黙ってる方が異常です!」


そんなやりとりをしているうちに、奥の方で水音が響いた。


「聞こえる?」

「ええ、なんかぐちゅぐちゅ言ってますね」


リュミナは足を止め、指先を上げた。

魔力の光がぱっと広がり、暗闇の先を照らす。


そこには、灰色に濁った液体の塊――スライムが群れていた。


「うわぁ、これアカンやつ……」


どろどろと音を立て、壁を這い上がるスライムたち。

数十匹はいる。

光を反射してどす黒く光る身体。

しかも、動くたびに泡をまき散らしていた。


「こいつら、“汚染型”ね」

「名前からして嫌な予感しかしない」


「普通のスライムと違って、溶解液じゃなく“毒素”を分泌する。

倒しても毒が残る。だから――」


「消毒の出番ってわけか」


俺はスプレーを構えた。

プシュッと一吹き。

一匹のスライムに白煙が立ち上がり、瞬く間に干からびていく。


「おおっ……効いてる効いてる!」


「よし。あなたが前を浄化して、私が広域で押し流す」


リュミナの声と同時に、空気がびりびり震えた。

彼女のブレスレットが青く光る。


「展開式魔導陣――核撃魔法コア・バースト、点照射モード!」


蒼白い光が収束し、トンネルの奥に閃光が走る。


――ドゴォォォォォン!!


轟音。

水が蒸発し、石壁が振動する。

爆風と熱風が押し寄せ、俺は慌てて身を伏せた。


「おい! 制御できてるんじゃなかったのか!」

「これでも控えめよ!」


スライムたちは一瞬で蒸散。

だがその煙の中から、ひときわ大きな影が現れた。


「……ボス、か」


体長三メートル。

中心部には真紅のコア。

核のように脈動しながら、毒気を撒き散らしている。


「茂、下がって!」

「いや無理っす、後ろもスライムの残党だらけ!」


退路は完全に塞がれていた。


リュミナの額に汗。

ブレスレットが赤く点滅している。


「……っ、やばい。魔素が暴走する」

「それってつまり……発作が?」


「ええ。魔力を出さなければ、私が爆発する」


「爆発するなぁぁぁぁぁぁ!!!」


俺は即座にスプレーを取り出し、リュミナの腕にシュッシュッ!

アルコールの霧が光に溶けるように吸い込まれていく。


彼女の呼吸が少しだけ落ち着いた。


「……これは……魔素抑制……? あなたの液体、魔力を安定させるのね」


「だから言ったろ、万能なんすよ!」


「じゃあ、いくわよ――“清潔な爆発”を」


「言葉の意味が矛盾してる!!」


彼女が詠唱を始める。

俺はスプレーを両手に構え、ボススライムのコアを狙う。


「同時に行くわ!」

「了解ッ!」


――シュッッ!!

――ドォォォォォン!!


スプレーの霧が光に包まれ、リュミナの核撃魔法と融合した。

閃光が走り、爆風が通路を駆け抜ける。

スライムの核が白く輝き、次の瞬間――


――消えた。


静寂。

焦げた石の匂いと、アルコールの香りだけが残る。


「……終わった、か?」


リュミナがゆっくり息を吐く。

手首のブレスレットが青に戻った。


「助かったわ、茂。あなたがいなかったら、私、今ごろ爆発してた」

「いや、それはこっちの台詞です。爆発巻き込まれるところでしたからね!」


少し笑い合う。

異臭の中で、なぜかその笑い声だけが澄んで響いた。


「あなたの消毒液……本当に、変な力を持ってるのね」

「変って言うな。清潔の結晶です」

「ふふ、そうね。清潔の英雄――悪くない呼び名よ」


……救世主よりマシかもしれない。

リュミナ、正式にバトルデビュー!

茂の“消毒”が彼女の核撃魔法を安定させるって展開、

このコンビならではの噛み合いですね


次回・第9話「爆発のあとに残るもの」

――下水掃除のその後、リュミナが見せる“素の顔”と、茂の異世界での初報酬回です。

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