第4話 消毒スプレー vs 野良犬型モンスター
夕暮れ。広場がざわめいた。
「グルルルルル……!」
村の外から、牙をむき出しにした野犬の群れが雪崩れ込んできた。
数十匹。
毛は油で固まり、ノミが飛び跳ね、ヨダレは糸を引いて地面に滴る。
「ぎゃあああ! 野犬だ!」
「誰か助けて!」
村人たちは一斉に逃げ散った。
気がつけば、広場に残っているのは俺と、助けたばかりの子供だけ。
「ちょ、待てよ!? なんで俺が残ってんだよ!」
野犬たちは低い唸りを上げ、背中の毛を逆立てながら迫ってくる。
完全に俺をターゲットにしてる。
距離はもう十メートル、八メートル……。
「……やるしかねぇか」
俺は消毒スプレーを握りしめ、構えた。
――シュッ!
一匹目――毛がピカピカに輝いた。
「え?」
二匹目――体臭が消えて、代わりに爽やかなアルコール臭。
「……芳香剤かよ」
三匹目、四匹目――シュッシュッ!
犬たちは鼻をひくつかせ、よろめきながらバタバタ倒れていく。
「お、おぉぉ! 救世主様が野獣を退けたぞ!」
「すげぇ! これが神の力か!」
「いやいやいや! これただの消毒液だから!」
……でも実際、かなり効いてる。
「雑菌まみれ」の相手には特効。
これ、もしかして最強かもしれない。
「俺のチート……地味だけど、案外万能?」
俺は犬臭さとアルコール臭でむせながら、そんなことを思った。
犬がフローラルになって倒れる異世界。
書いてる本人も「何やってんだこれ」ってなりました(笑)。
でも、消毒チートが本格的に強いってわかる回でしたね。