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第2話 能力測定

「朝か……」


 日が登り始めた早朝、家のベランダで康介は空を眺めていた。

 昨日、教室を出て後は、そのまま学校を早退し、ずっと上の空だった。



 ――何なんだ、この感情は。 心に靄が掛かっているような感覚。

 原因は分かってる。

 あの転入生だ。

 くそっ、何なんだあいつは、なんであんなに似てるんだよ。

 八つ当たりでしかない事を考える。氷上彩華に非はない。

 そう理解していても毒づかずにはいられない。

 そんな複雑な感覚が延々と渦巻いていた。





 気づけば、日は完全に登り、学校に行く時間になっていた。

「……行くか」

 そう呟き家を出る。



 遅刻ギリギリで教室に入ると、直ぐにホームルームが始まった。


「昨日言った通り、今日は能力測定を行う!気合いを入れて頑張るように!」

 担任、進藤の声が響き、教室がザワつきだす。

 皆、能力測定について話している。

 能力測定と言っても、校庭で自分の能力を使い、その強弱、発動までの時間を測るだけ。することは簡単だ。

 ただ、自分の能力の強さが分かる。自分の今の力はどのくらいなのか、その期待に胸を躍らせているのだろう。



 校庭に移動し列を作る。

 その最後尾に康介の姿があった。

 そして視線の先には、氷上彩華がいた。無意識のうちに、目で追っていた。

 すると、名前を呼ばれたのか、氷上は測定場所へと進んでいく。



 その時になって、ようやく康介は、自分が氷上の事を見ていたことに気付く。


「氷上はあいつとは違う、別人だ…」

 どうしても、あの時の少女と重ねて見てしまう。そんな自分に、言い聞かせるように、消え入るような声で言う。



 そんな時、測定が済んだのか、担任の声が聞こえて来る。


「氷上彩華! 能力、氷! 発動速度、B! 規模、B! 最大能力値、B! 総合、Bランク!」


「スゲー!」

 等と、皆が口にする。

 高校2年でBランクと言うのは、なかなかいないのだ。



 康介は、と言うと……。


 ――氷、能力まであいつと一緒かよ……。

 まぁ、あいつは能力と言うか、得意な属性だったが……。


 等と考えていた。



 しばらくして、名前を呼ばれる。

「次!和田康介!」

 順番が来たのだろう。


 康介は担任の所まで進み、口を開く。

「和田康介、能力は雷です」


「よし!始め!」


 その声と共に、康介は電撃を打ち出す。


 担任が機械の数値を読み取り、結果を読み上げる。


「和田康介! 能力、雷! 発動速度、B! 規模、B! 最大能力値、A! 総合、Bランク!」


 皆がザワつきだす。

 同じクラスにBランクが2人もいたのでは、騒ぎたくもなるだろう。

 高校2年生だと、大体はDランク。良くてCランクだ。Bランクは学年で200人中、2~3人位しかいないだろう。

 それ程少ないのだ。




 測定が終わって、教室に戻ろうとする康介に、翔太が話し掛けてきた。


「康介スゲーな!Bランクとか学年トップだぞ!」


「翔太はどうだったんだ?」


「あれ、お前が人の事気にするのって珍しいな!」

 茶化すように言う。


「……戻る」

 不機嫌そうに言い、教室に戻ろうとする。

 だが実際は、他人と深く関わりたくないのに、何故聞いてしまったのか。そんなことを考えていた。


「ちょっ、待って待って!教えるから!ほら、これ!」

 翔太は焦った様に、1枚の紙を差し出す。


 その紙には、測定結果が書いてあった。


 尾崎翔太 能力、風

 発動速度、C 規模、D

 最大能力値、C 総合、C



「へぇ、凄いじゃん」

 興味なさそうに反応する。


「ありがと!」

 普通なら厭味や皮肉と、取られそうな言い方だが、翔太は気にした様子もなく笑顔で返す。


 そこに氷上が話し掛けてくる。


「翔太君、康介君。この後、予定ある?

今日は学校これで終わりみたいだし、ご飯でも食べ行かない?」


 そう、提案してくる。


「ご飯!?行く行く!康介も行くよな!?」

 そう、翔太が答える。


「行かない」

 即座に切り捨てる。


「たまには行こうぜー」


「だから行かないって、2人で行けば良いだろ」

 ごねる翔太を突き放す。


「そんなことを言うなよ。俺と康介の仲だろ?」

 諦めずに説得する。


「勝手に親密そうな仲にするな」

 そう言いながら立ち去ろうとした時、氷上が話し掛けてくる。


「康介君も行こうよ!ね?」

 そう言って、上目遣いで康介を見る。


「だから行かないって!」

 思わず、声を荒げてしまう。

 ――あいつと同じ様な顔で話し掛けるな!



「!!」

 ビクッ、と肩を縮ませ、怯えた表情の氷上。


「……帰る」

 康介は少しバツが悪そうに歩いていく。



 そんな康介の背中を眺めながら、氷上が口を開く。


「康介って……なんで、あんなに他人を遠ざけるんだろう?」


「……、なーんか抱えてる気がするんだよねー、康介って」

 翔太が答える。ただ、自信はないのか、心なしか声が小さい。


「いつか話してくれるかな?」


「さぁ?難しいと思うよ。俺は1年の頃から康介に絡んでるけど、何も聞けてないからな。

まぁ、今はこっちから歩み寄る努力をするしかないよ」

 翔太は、何か考え込む様に言う。


「そっか、わかった!」

 氷上は元気良く答える。


「なになにー?彩華は康介の事が気になるの?」

 からかう様に問い掛ける。


「えっ、いや、気になるとかじゃなくって、その……」

 林檎の様に顔を染めながら口ごもる。


「そっかそっか!康介狙いか!あいつの攻略は難しいぞ」

 翔太は更にからかう。


「だから違うってば!もう!」

 氷上は耳まで真っ赤にしながら、そう言うと、どこかに走って行ってしまった。



「あ……、飯は……」

 残された翔太は、そう呟くと、うなだれながらトボトボと、1人寂しく帰って行った。





 その頃、康介は家には帰らずに、学校の屋上で空を眺めていた。



 ――氷上彩華……か。


 なんでこんなに気になるのか……


 他人と深く関わらないと決めたじゃないか。


 なのに氷上と近づきたいと想ってる自分がいる。


 ……分かってる。


 俺は……、あいつの代わりとして氷上を見ようとしているんだ。


 そんなの間違ってる。


 けど……


 1人は辛い……


 どうすれば……、どうすればいいんだ?







 康介は思考の渦に呑まれ、自分に問い掛ける。


 あの少女に似ている氷上を見ている事で、誰かに触れたいという気持ちが浮かんでくる。


 彼は、人と関わるのが嫌な訳じゃないのだろう。

 本当なら友達を作って馬鹿みたいに騒ぎたいのだろう。




 尾崎翔太――今、1番友達に近い同級生。

 康介から歩み寄れば、直ぐにでも友達になれるだろう。




 氷上彩華――あの少女に似ている転入生。

 康介が、あの少女の代わりとして見ようとしている同級生。

 康介から歩み寄り、関わっているうちに、氷上彩華を個人として見れる時が来るかも知れない。




 それでも、康介は……




「俺には、誰も護れない……。

だから、深く関わっちゃいけないんだ」

 そう呟くと、考えるのを止め、屋上を後にし、帰路につく。




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