第17話 戦いの後
サブタイトルが思いつかない。
そして更新遅くなりました。
「……暇だ」
康介はベッドから上半身だけを起こして、窓の外をぼんやり眺めている。
あの戦いから既に3週間が経ったが、康介達3人は入院生活を送っていた。
佐藤や折田がお見舞いに来たりはするが、基本的には暇な毎日。特に何もする事のない生活が3週間も続けば、誰でも暇を持て余す。
そんな時、急に病室のドアが開いた。
康介は入って来た相手を見て顔をしかめる。
「ノックくらいしたらどうだ?――翔太」
そう言いながら康介はノックも無しに入って来た翔太に不快そうな視線を送るが、翔太は気にした様子もなく近寄って行く。
「細かい事気にしてるとハゲんぞ?」
「ああ、悪かったな」
「え?謝るの!?」
「翔太に常識を求めるなんて、土台無理な話しだった。それこそ指先一つで地球を破壊するくらいにな」
「……康介が俺の事、どう思ってるかわかって嬉しいよ」
翔太はそう言うと、康介の言葉にショックを隠しきれない様子でガックリ項垂れる。
「で、何しに来たんだ?まさか落ち込む為に来たのか?」
落ち込む翔太を鬱陶しそうに見ながら康介が問い掛ける。
「最近言葉に遠慮が無くなったな……まぁいいや。
暇だから来てみただけだよ」
「よし、帰れ。怪我人は暇なのが当たり前だ」
「怪我ならもう治った!ってか俺ら全員、後2日くらいで退院だってよ!」
そう言うと翔太は、治った事をアピールするかのように、大袈裟に体を動かし出す。
「動き回るな、鬱陶しい。ってかその気持ち悪いダンスは何だ?」
「喜びの舞!」
「……調度病院にいるんだ、頭も診てもらったらどうだ?」
康介が言いながらナースコールを手に取り、そのまま押そうとすると、氷上が病室に入って来た。
「ダメよ康介君。翔太君の頭の病気は、どんな医療や能力でも治せないわ」
「氷上か。確かにあのイカレ具合は、医者でも匙を投げるな」
「ええ、不治の病って事ね」
2人は翔太を余所に、諦めた様に首を振りながら話し出す。
「康介康介。彩香にノックしないで入って来た事咎めねぇの?」
「それより氷上。具合はもう良いのか?」
「無視かよ!?」
「ええ。流石は再生の能力ね。傷1つ残ってないわよ」
「彩香まで無視!?」
「まぁSランクの再生能力者は死なない限り、失った肢体ですら再生出来るらしいからな」
「それは凄いわね」
「ちょっ、無視しないで!」
翔太は話しを続ける2人に、縋るように近づく。
すると2人は話しを止め、翔太に向き直る。
「翔太、細かい事気にするとハゲるぞ?」
「無視って細かくねぇよ!? イジメだよ!? イジメ、ダメ、絶対!」
「翔太君、病院で大声出したらダメよ」
「俺どんな扱い!? 俺の事は全否定ですか!? ガラスのハートが砕け散る!」
「よく言うよ。ガラスはガラスでも、銃で撃っても割れない防弾ガラスだろうに」
「俺の心どんだけ丈夫なんだよ!? 図太い神経とかスキップで通り越してるけど!?」
そこまで話すと翔太は叫び疲れたのか、息を荒げる。
そこにドアをノックする音が響いた。
「どうぞ」
康介がノックに応えると、ドアが開き、見知らぬ男が入って来る。
「病院内では静かにした方が良いと思うが?」
男はそう言いながら歩み寄っていく。
3人は男の言葉に、バツが悪そうにするが、すぐに康介が口を開いた。
「貴方は……?」
男は康介の問いに、身なりを整え答える。
「自己紹介が遅れたね。私は軍特務隊所属、嶋田玲志だ。
今日は君達に、先日の事件の件で用があってね」
3人はその自己紹介に息を呑み、表情を強張せ、翔太はボソッと呟いた。
「特務隊……軍の最強部隊じゃねぇか……」
その呟きが聴こえてか、嶋田は柔らかい笑顔で話し出す。
「そんなに緊張しないで良いよ。さて、用件は3つあるのだが、いいかな?」
「ええ、どうぞ」
嶋田の柔らかな態度で、若干ながら緊張が解れた氷上が応える。
「先ずは謝罪。
我々の対応が悪かった為に、救援に行く事が遅れてしまった。軍を代表して謝罪する。済まなかった」
嶋田はそう言うと深く頭を下げる。
その行動に3人は驚くが、その表情はどこか複雑だ。
軍の対応がもっと早ければ助かった生徒も増えたのではないか。そう考えるも、嶋田個人が悪い訳ではない為、責め立てる事もしない。
その結果、病室に沈黙が流れた。
そのまましばらく経ち、嶋田は頭を上げる。
「済まなかった」
「もう良いです。2つ目は何ですか?」
再度謝罪する嶋田に、康介は無表情で言い放つ。
「次は簡単な事情聴取になるのかな。
君達はあの時に武器を持っていたと他の生徒から聴いた。けど武器なんて普段から持ち歩く物じゃない。つまり、君達はあの襲撃を予見していた。違うかい?」
「あれは予想外でした」
質問に康介は毅然とした態度で答える。
「ならば何を予想していたのかな?」
「……俺達は以前にもバケモノに襲われました。その時にトロイの氷炎と接触し、恐らく狙われています」
「つまり君達は護身の為に武器を携帯していた、と言う事かな?」
嶋田が康介の言葉に続けて言うと、3人は頷いた。
「その時に軍に通報しなかった理由は?」
「通報したとして、俺達子供の言うことを軍の末端が信じたと思います?」
康介がそう言うと、嶋田は目を細める。
「嶋田さんなら信じたかもしれませんが、俺達の話しを聞くのは軍の末端の人。いきなりトロイなど大事を訴えても、笑われて一蹴されると思うのですが」
「そう……かもね。いや、そうだろうな。
しかしトロイ、そして氷炎か……。厄介だな」
嶋田は苦々しい表情を浮かべる。
「特務隊でも氷炎を捕まえられないんですか?」
氷上が問い掛ける。
「……特務隊員でも、氷炎を単体で相手取る事は難しい。恐らく相打ち、最悪殺される」
嶋田が言うと、氷上と翔太は固唾を飲む。
特務隊は最強の部隊。その隊員でも勝てないかもしれないと言う事実に緊張が走る。
「そして氷炎には相棒がいる。情報では女性らしいが、そいつも氷炎と同等と見た方がいいだろう。
氷炎とその相棒は危険過ぎる。特務隊も全員が召集され、全力で事に当たるだろう。が、トロイの規模、実力は共に未知数。軍で対処しきれるかどうか」
嶋田が話し終わると、氷上と翔太は不安そうな表情を浮かべ、康介は手を顎にあてて考え込む。
「どうかしたのかい?」
「……何故それを俺達民間人に? 余計な混乱を招く情報でしょう?」
康介の言うことは確かだ。強大な相手の存在、その情報が広まってしまえば人々は少なからず恐怖するはず。
「軍の今後の動向を話す……俺達に協力させる気ですか?」
康介がそこまで言うと嶋田は驚いた顔をする。
「……そうなんですか?」
氷上が恐る恐る問い掛ける。
「和田くん……だったかな、君は聡いね。
それが次の話しだよ。もっとも協力させる、なんて強制的な物じゃないがね」
嶋田は康介に感嘆したような表情を見せるが、すぐに真剣な顔になり、話しを続ける。
「君達は強い。たった3人で大量のバケモノを殲滅出来るほどにね。軍でもすぐに通用する実力だよ。
――軍に入らないか? そうしたら学校もすぐに卒業させよう。軍でもある程度の優遇を約束する」
その言葉に3人は驚く。
「どうだ? 悪い話しではないだろう?」
嶋田は返事を促すように3人を見る。
「……卒業するまで考えたいですね」
康介がそう言うと、嶋田は残念そうな表情を浮かべる。
「そうか。君達は?」
「俺もまだ学校に通っていたいので」
「私もです」
「……残念だ。今は卒業後に期待するとしよう。
それでは時間を取らせて済まなかったね。失礼するよ」
そう言うと嶋田は病室から出て行った。
ドアが閉まったのを確認してから翔太が大きく息を吐く。
「あー、緊張した」
「私も肩が凝ったわ」
そう言うと、翔太と氷上はグッタリと姿勢を崩す。
「とんだ狸だったな」
康介が小さく呟くと、氷上がそれに反応した。
「そうね。危うく自発的に動くように誘導されるとこだったわ」
「氷上もそう思ったか」
「どういう事?」
2人の会話に翔太は首を傾げる。
「あいつはトロイの情報、危険性の大きさと軍で対処しきれない可能性を俺達に示しただろ? その時翔太はどう思った?」
「どうって言われても……」
「こう思わなかったか? 自分に何か出来ることはないか? ってな」
「まぁ思ったな……あー、そう言う事か」
「そう、あいつは俺達が自発的に協力を申し出るように誘導してた。それに俺が気づいたと分かったら、次は俺達の実力を讃え、高待遇って餌で引き込もうとした」
「……それで狸って事か」
康介の説明で翔太は理解したように頷く。
「けど、それ程切羽詰まった状況なのかしら?」
「さあ? それはどうだかな」
氷上の問いに康介は首を横に振りながら答える。
しばらく3人は考え込んでいたが、不意に翔太が口を開く。
「まぁこの話は終わりにしよぜ! 気が滅入っちまう」
「そうだな」
「ええ、今はもう止めましょ」
翔太の言葉に康介と氷上は頷くとその会話を打ち切り、雑談を始める。
しかし康介だけは、難しい顔で何かを考え込んでいた。
前半の翔太の会話がめっちゃ書きやすい!
どうやら翔太は弄られキャラらしい