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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編ホラー

学校

作者: 壱原 一

籠もり切りだったうちの子が、学校へ行くようになりました。


碌でもない連れ合いと別れ、独りであの子を育てようと決めたのが遅かったらしく、親子2人になる手前から、部屋に籠もり勝ちだった子です。


ひとたび顔を合わせたり、声を掛けたりしようものなら、表情で言葉で手で足で、きつく責められてばかりでした。


学校へ行くようになって以降、ぐっと落ち着き、静かになり、とても安心しています。


□学時代のお友達1人が、別の1人と一緒に、心配して会いに来てくれて、それで、行く気になったようです。


□学時代のお友達は、比較的近所に住んでいて、部活や習い事も同じで、家族ぐるみで仲が良く、しょっちゅう遊んでいました。


そのうち、音沙汰が絶えていましたが、少し前、訪ねて来てくれました。


話し声を聞き付けたのか、珍しくあの子が部屋を出て、階段の上で立ち止まり、じっと、聞き耳を立てていました。


結局、降りて来なかったものの、そこは一応親ですから、気配で、ちゃんと分かりました。


□学時代のお友達が、別の1人と一緒に、揃ってあの子を気遣うのを、動かず、黙って、聞いていました。


2人が帰った後、ごそごそと出掛けて行って、それから外へ出るのが増えて、学校へ行くようになりました。


以降、ぐっと落ち着き、静かになり、とても安心しています。


ですから、くれぐれもよろしくと、念を押してお願いしました。


あの年頃の子供と来れば、家の外で何があったか、何をしているかなんて、碌すっぽ話しやしません。


たとえ家の中に居たって、何を考えているのか理解し兼ねるほどなんです。


それが、学校に行ったとなったら、それはもう、自明の事ながら、親の目は届きようがありません。


親の手を離れたと言って良い。


そう思ってお願いしたんです。


あの子に学校で何があっても、親には分からないですから。


そのうち、音沙汰が絶えていたのは、どうしてなのか、不思議でした。


かつて、親の目が届いていた頃、学校で何があったのか、少しも取り零さない構えで、嬉しそうに話してくれていた頃は、あんなに仲が良かったのに、いつの間にか、疎遠になって、部屋に籠もりがちになっていって。


名前もぱったり出なくなって。


なにか、あったのかなって。


でも、ひとたび顔を合わせたり、声を掛けたりしようものなら、表情で言葉で手で足で、きつく責められてばかりでしたので。


□学時代のお友達1人が、別の1人と一緒に、心配して会いに来てくれて、本当に、助かりました。


訪問支援員の方と一緒に、どうもお久し振りですって、非常勤の□□セラーをやっていますって。


今は、ご結婚されて、近々お子さんが生まれるそうで、掛け持ちでかつての母校にも、定期的に詰めているんですって。


充実感ただよう物腰で、訪問支援員の方と一緒に、親身に、うちの子を心配し、親を労ってくれました。


あの子は何も言わないし、親の目は届きようがなくて、それだけが原因じゃなくて、親の不和も影響したとしても、此方だって一応親なんです。


動かず、黙って、聞いていました。


気配で、ちゃんと分かりました。


やっぱり、そうだったんだなって、そこはちゃんと分かりました。


だから親に出来る限りの義務として、うちの子が学校へ行くようになった後、どうか、くれぐれもよろしくと、念を押してお願いしました。


そのあと各所がどうしたかは、それはもう此方には分かりません。


籠もり切りだったうちの子が、学校へ行くようになって、ぐっと落ち着き、静かになり、とても安心するだけです。


確かに似ているようですが、こんな巧妙に避けた風な、殆ど見切れてしまっている、俯いた不鮮明な画像では、ちょっと判別が付きません。


うちの子は今日も学校へ行って、まだ帰宅しておりません。


もう良い歳をしていますから、このまま帰って来なくても、特に心配いたしません。



終.

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