~知られざる歴史~
【修正版】
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夢の中だからか。
部屋の中だからか。
はたまた夢の中でしか会えない人物が居るからか。
亡き母との思い出の場所に居ても、孤独感に襲われるのとはなかった。
しかし、知らぬ間に自分が抱える問題が大きく膨らんでいた所為で、穏やかな気持ちというわけでもない。
マゼランと三度目の再会を果たしたが、正直なところ今は会いたくなかった。
「何かあったの〜? お爺ちゃんが話を聞くから何でも言ってごら~ん? 」
マゼランは無抵抗の私を自身の膝の上に座らせると、子供をあやすような口調で接してくる。
見た目が二十代後半にしか見えないのに、自分をお爺ちゃんと呼ぶのどうなんだ。
お父様の方が老けて見えるのに、何を言ってるんだ。
なんて、そう思ったところで指摘する気力も無い。
体内にある魔力が具現化した存在であるとはいえ、言動から察するに、恐らく私が起きている間の出来事を知らないようだった。
実年齢に関してもそうだ。
止まった時間の中で日付を毎日数えない限り、実際の時間の流れを把握するのは難しいだろう。
夢の中では幼い子供の姿でも、中身は十七歳。
過去に戻ったとは言え、それでも十六歳。
飴玉や抱っこで喜ぶような歳でもなければ、大人から見ても私が抱える悩みは十分深刻な内容だ。
「ねぇねぇ~折角また会えたんだからお喋りしよーよ? ほら、前回の続き! 魔力とかさ! 」
「……申し訳ないのですが、今は新しいことを覚えられる余裕がありません」
過去に戻った理由や魔力という未知の力は気になる。
だが、脳が新たな情報を拒絶してるのか、思考が上手く回らず、ローテーブルに置かれたティーカップに視線を落とれば、口が半開きのまま呆けている自分の間抜け面が紅茶に映っていた。
魔力について情報が極端に少ない現代で、マゼランから詳しい話を聞けるのは貴重で有難いと理解していても、どうしても今日は何にもやる気が起きない。
「……はぁ」
「溜息が多いね~? どうしたの~? 嫌いな野菜を克服する方法を伝授しようか~? 」
「いえ、結構です」
たかだか野菜の好き嫌いで、ここまで深刻に悩む子供も居ないだろう。
町で起きた出来事を思い出し、どうせなら人間関係を円滑にする方法を伝授して貰った方が有難い。
常々思うのは、勉強より人の心の方がずっと難しい。
「廃太子か……」
「え? 歯が痛いの? 」
「いいえ、全く」
不誠実な言動を繰り返す殿下に問題がある。
その一方で、上手く立ち回れなかった私にも、少なからず落ち度があったのではないかと感じていた。
周囲から侮られている状況を覆せず、ただ耐えるしか出来なかった自分では、皇太子妃の座は荷が重すぎる。
“ 皇后 “ や “ 皇太子妃 “ は、帝国の頂点に立つ女性。
そして、他国から見た国の顔のような存在だ。
勉強が少し出来るだけでは到底、務まらない。
度胸も人脈もない自分には無理だと感じていた。
濡れ衣を着せられる未来を回避する為には、さっさと縁を切って離れたいのに、両陛下の予想外な行動で問題が拗れている気がしてならない。
以前は助けてくれる気配が全くなかったのに、なんて両極端な人達だろうと思いながら、また溜息を零した。
「はぁ……普通に座りたいので、降ろして下さい」
「良いじゃな~い? また凄く会えて嬉しいんだ! それに、娘が欲しかったんだよね~」
「そうですか」
「そうだ! 服とか玩具とか何でも出せるよ! 欲しい物はない? 」
「降ろして欲しいです」
「それ以外で! 」
「特にありません」
憂鬱な気分の私とは反対に、マゼランはニコニコ笑いながら鼻歌まで歌っていた。
ここで腹を立てるのは理不尽だと理解している。
なので怒るようなことはしない。
ただ、どさくさに紛れて人の頬を揉んだり摘まんだりして遊ぶのは止めてもらいたい。
黙っていても察してくれるような人だとは思えず、流石にそろそろ注意しようかと口を開くと、タイミング悪くマゼランが先に言葉を発した。
「じゃ、今日は僕が質問しちゃおうかな~? 」
「どうぞ」
「最後に会った時に比べて体内にある魔力が身体に馴染んでるみたいだけど、会わない間に何かしたの? 」
「え? 魔力が馴染んでいる……? 」
「うん。例えるなら、最初は砂時計の砂みたいな感じでチョロっとしか流れてなかったのに、今は穏やかな川の水みたいに、自然な感じで身体全体に流れてるね? 」
突拍子もない、けれど興味深い話に思わず反応する。
変化を感じてないが、魔力が身体に馴染むとは何だ。
他の人に無い能力を持っている特別感に好奇心をくすぐられ、話の続きを急かすようにマゼランを見上げる。
「今までと大きな変化はありませんし、特に何もしてませんけど……? 」
「そうかい? うーん……前回に比べて段違いで馴染んでるから、何か特別なことをしたのかと思ったよ。ほら、最後に会った時は僕の話をメモするぐらい、魔力に興味津々だったからさ」
「魔力が身体に馴染むと、何が出来るようになるんですか? 今までとどう違うんですか? 」
「お、なんだか急に元気になったね~? 」
「あ……すみません」
「あははは! 好奇心旺盛なのは良いことだよ! 」
つい先程まで、この世の終わりと言わんばかりに絶望していたのに、好奇心だけですぐに態度を切り替える単純さは褒められるようなことではないだろう。
感情がコロコロ変化するから、口を滑らせるのだ。
単純で落ち着きない自分の言動を振り返って、自己嫌悪に陥りながらまた溜息を零す。
「はぁ……」
「また辛気臭い顔しちゃって~君は忙しいねぇ~? 」
「そん……いえ、はい。なんていうか、最近は凄く軽率な言動ばかりでちょっと反省してました」
「あははは! 君って正直者だね! 可愛いね~唇付き出しちゃって~」
「え!? わ、私……そんな変な顔してますか? 」
「ん? 君、自分の癖に気付いてないの? 集中してる時とか、何か落ち込んでる時とか? さっきはなんか口が半開きだったけど、今は唇付き出してるよ」
ギュッと唇を噛むと、マゼランはカラカラと愉快そうに笑った。
誤魔化すように、身体に馴染んだ魔力について話しの続きを急かすと、宥めるように優しく頭を撫でられる。
これでは中身まで子供と同じだ。
流石にマゼランに甘えすぎていると自覚して、普段通りを意識しなが改めて尋ねた。
「魔力について、続きをお願いします」
「ん~……えっとね、体内に魔力を保持している以上、体外的な何かで意図的に抑え込まない限り、無意識の内に使用してしまうんだ。でもそれってハッキリと認識できるものじゃなくて、本当にごく僅かな力だよ。魔力を日常的に使用していたから君の目は陽の光に弱いんだ」
魔力を使用している自覚は全くない。
そもそも使用した形跡もない。
しかし、マゼランは私の考えを見透かしたように、異種族の特徴について話を続けた。
「僕等も魔力を毎回、意図的に使用してたわけじゃないんだ。人間が呼吸をするのと同じ感覚とでもいうのかな? 常に意識して呼吸してるわけじゃないでしょ? 」
「そう、ですね……」
「昔、火を操る精霊が近所に住んででさ、くしゃみした弾みによく火を吹いてたよ。あと、雷を発生させる能力を持った厳しいお婆さんも住んでたね~! お孫さんがヤンチャ坊主でさ、叱る時は文字通りいつも雷を落としてたね。懐かしいなぁ~」
「……誰も怪我しないんですか? 」
「全然大丈夫だったよ? 」
事故をどうやって防いでいたのだろうか。
それとも自分が想像するよりも威力が弱いのか。
想像も付かない当時の状況に混乱して顔を顰める。
現代で無意識に火を吹く雷を落とすなんてことになれば、警備隊総動員の大騒ぎ間違いなしだ。
異種族の中にはマゼランと同じく人間に近い姿だったり、人間の言葉を話す者も一定数存在し、人間と協力し合いながら穏やかに暮らしていたようだった。
「怪力だった鬼は木こりの仕事を手伝ってたし、身体が金粉に包まれた鳥は大切に人間に飼われてた。火を操る精霊は焚火の番をして、人間達がよく食べ物を差し入れていたよ。当時は焚火の火って、生活において凄く大事で皆が有難く共有しながら使ってたんだ」
雷や火を操るなんて、信じられない。
まるで絵本の読み聞かせをして貰っている気分だ。
実在したというのだから尚更、好奇心を刺激されて、憂鬱な気分が吹き飛び、口角が自然と上がる。
「へぇ……凄いですね。マゼランは具体的にどんな能力を持っているんですか? 」
「うーん……僕自身も能力についてよく知らないけど、経験した限りだと、怪我や病気を治せるみたいだよ? 」
「何で、自分の能力について知らないんですか? 」
「同じ種族と出会ったことないし、僕は赤ん坊の時にブラウン一家に拾われて婿入りしたからね。二代目まで続いたのにブラウン家の記録はなーんにも残ってないみたいだね? 寂しいなぁ……僕が当主になってから改名されただけで、ここは元々ブラウン家だったんだよ! 」
「……集落、ですよね? それに当時から家門に対する認識があったんですね? 」
「あちこちに集落が沢山あって、交流の一環として他の集落に引越しや婚姻を結ぶ際、自分の出身地を分かりやすくする為に各集落には必ず名前が付いてたんだ。当時は具体的な地名なんて無かったからね。僕を拾ってくれた人は住んでた集落の長を務める一家だったから、集落の名前を名乗っていたんだ」
マゼラン家が存在する前の記録は残っていないので、初代当主の生い立ちに関する話は初耳だった。
赤ん坊の頃からブラウン家の初代当主に育てられ、後に一人娘だったメアリー・ブラウンと婚姻を結んだマゼランは、三人の息子に恵まれた。
しかし、平穏な日々を送っていた彼の人生は、そのままハッピーエンドでは終わらなかった。
「ブラウン家の二代目当主が着任した頃から、各地で人間同士の戦争が勃発し始めちゃってね。集落も巻き込まれて、ブラウン家はそこで一度没落しちゃったんだ」
「創生期時代ですね」
マゼランが実際に生きた創生期時代は、各国の基盤ができたとされ、後に壮絶な大戦乱の世の幕開けとなった時代だ。
国の定義が明確にされておらず、国境線も非常に曖昧だったことで作物を巡る小さな衝突から始まり、徐々に争いが大きくなって、次第に土地の奪い合いが各地で繰り広げられるようになったと伝えられている。
ブラウン集落も大戦乱の最中に攻め込まれ、敗北と同時に土地から追い出された彼等は、生き残った人々と共に泣く泣く新たな土地へと移り住んだ。
「大戦乱が起きる前に異種族は隠れるように姿を消したと授業で教わったのですが、実際はその後も共に戦っていたんですね? 」
「そうだね。なんていうか…… ” 異種族 ” と ” 人間 ” っていう考え方じゃなくて、 ” 仲間 ” か ” 敵 ” って区別してたから、正直そこは誰も気にしてなかったかな? 争いが起きる前から普通に同じ集落に住んでたし。第一、僕等から見れば人間だって立派な異種族だよ? 」
「そう……ですね」
「各地を転々とする内に、戦争がちょっと落ち着いてね。広範囲の土地が一つの国になって、王様っていう身分の高い存在が出現したんだ」
王命によって、複数の集落が合併した事で村が誕生し、魔族でありながら人間と見た目が変わらないという理由で、マゼランは村長に抜擢された。
起きた出来事から推測して年代を計算すると異種族と人間の共存も含めて、教科書と内容がやっぱり違う。
妃教育に使用される教科書は、王宮に保管された記録を元に作成した物だったが、大昔の話で当時を知る人物が居なかった為、後世に残された記録の内容にズレが生じても、訂正出来る人が居ないので仕方ないだろう。
また、大戦乱の世とも呼ばれた創生期時代は、およそ四百年も続いたとされているにも関わらず、現在住んでいる国が興るのは創生期時代が過ぎた後で、二代目マゼラン当主が生まれたのもディヴァルガン帝国が誕生した後だと記録されていた。
「平定後も他国からの侵略とかちょいちょいあったんだけど、曾孫が成人した頃、メゼラって呼ばれる異種族の割合が多い集団からの侵略によって、国が一度滅んでしまったんだ。まぁ、滅んだとは言え、王様が変わっただけで新たに土地を移ることは無かったけどね。ここも授業で教わった内容と違ってる? 」
顎に手を当てて、授業の内容を思い出す。
全く違っているわけではない。
ただ、異種族に関する内容だけが、出だしから所々違っていて、それが後半にまで影響してしまっているからズレが大きく感じてしまう。
「ちょっと違いますね。それに誕生した年代からして、屋敷の歴代当主の記録の内容も違ってます。二代目マゼラン当主は、マゼランの息子だと記されていたんです」
「え!? 全然違うよー! 村に移る前に妻子と初孫は他界したし、残された孫の子供達を引き取って僕が村長になってからその子達も老衰で他界したし、今度はその孫を引き取って育ててた頃に爵位を貰ったんだから~」
想像以上にマゼランが長生きだったことに驚いたが、それよりも子育てや家族との死別を何度も体験したと知って、切なくなった。
一体どれほどの苦悩を背負っていたのだろうか。
「人間より寿命が長い分、死別は悲しかったけど、彼等が遺してくれた可愛い孫が居たから、あんまり寂しくはなかったかな。それにもっと長生きの種族は沢山居たよ? 鉱山の住人とか……あ、ドワーフって呼んだ方が分かりやすいかな? あとエルフとか、オーガは……僕より寿命が少し短いか」
” エルフ ” と聞いて、エイリーンが頭を過る。
ケイプ家に代々受け継がれた血を考えると、直接会ったことも無いエルフに苦手意識が芽生えてしまい、名前を聞くだけで不快感を覚えた。
しかし、すぐに首を左右に振って気持ちを切り替える。
先入観だけで物事を判断するのは止めよう。
混同せずに切り離して考えるよう。
全員がエイリーンと全く同じとは限らない、と自分に言い聞かせてマゼランの話に集中する。
その後の経過を聞く限り、どうやら創生期時代の後期に入っても、異種族はまだ人と共存していたようだ。
「王様が変わったタイミングで、村長から領主になって、最終的には爵位を貰って貴族に立場が変わったんだ。本当はブラウンの名前を使おうと思ったけど、没落した名前を名乗るのは不吉だって言われたから、そこでブラウン家をマゼラン家に改名したってわけさ」
「つまり、マゼラン・ブラウンから、マゼラン・マゼランに改名された……っていうことですか? 」
初代当主に取って、 “ マゼラン “ は後世に残したい程、思い入れのある大事な名前だった。
「ブラウン家の初代当主……つまり親代わりになってくれた人なんだけど、父さんの弟の名前だったんだって。赤ん坊の頃に流行り病で命を落としちゃって、赤ん坊の状態で拾った僕と弟が重なって見えたから名前をくれたんだってさ」
「そんな経緯があったんですね。話してくれて、ありがとうございます」
「どういたしまして! 昔の話を知りたいならまだまだ沢山ある……というか、今まさに僕と長話が出来るこの状態こそ、身体に魔力が馴染んでる証拠だよ! 」
「……はい? 」
魔力の話から自然な流れで歴史の話になり、聞き入っていると突然また最初の話題に戻されて、思わず素っ頓狂な声が出る。
まるで並行しながら同じ速度で走っていた相手が、突然方向転換して一人置いて行かれた気分だ。
最初に話していた話題を半分忘れかけていたこともあって、眉間に皺を寄せながら思い出していると、マゼランはカラカラと愉快そうに笑う。
「あははは! まーた唇付き出してるよ~? 可愛いね~」
「茶化さないで下さい」
「前回と比べて夢に留まってる時間が長いと思わない? 」
「言われてみれば……」
「今回は君の動きが遅かったり止まったりしてないし、夢の中で意識がハッキリするのに時間はかかってたみたいだけど、僕と長く接触できる理由は多分、魔力が身体に馴染んだからじゃないかな~? 血液や内臓と同じように、自覚はなくても魔力を ” 保持してる ” って身体で分かってるんじゃないかな? 」
「……………………なる、ほど? 」
「ぶっふふっあははは! もう、本当にか~わいいおチビちゃんだね~君は! 」
気恥ずかしさを紛らわそうと話題を変える為に口を開いた瞬間、夢の終わりを告げる声が部屋中に響いた。
まだ聞きたいことが沢山あった私は、そもそも待つだけではなく、自分からマゼランに会う機会を増やせる方法が無いか尋ねる。
「魔力が身体に馴染んだから夢に長く留まれているかもしれないんですよね? なら、意図的に魔力を使用出来ればマゼランと会う回数が増えるのでは? 」
「え? 無意識ならともかく、あんまり人間が持っている魔力を意図的に引き出そうとするのは勧められないかな? 使用しちゃうと代償を払うし……」
不思議な力を持つ特別感に、明るく楽しい気分から一変して、物騒な単語が飛び出たことに思わず硬直する。
代償が伴うと聞いた途端、急に怖気づいて先程とは違った意味で胸がドキドキしていた。
「まぁ、種族によって多少の違いはあると思うけどね。僕の能力は回復というか……回復を促すタイプ? だから人体への影響が出ちゃうんだよね。過去に何人もそれで犠牲になってるし」
「過去に犠牲……? それってどういう……」
言いかけたところで、部屋に響く声が段々大きくなる。
前回と同じ状況に焦りを覚えながら、急かすように説明を求めると、マゼランもあわあわと慌てたように話を続けた。
「そもそも人間は魔力を持ってない状態で生まれるのが正常なんだ。つまり、人間にとって魔力は害になるというか……君がその眼鏡を日中外せないように、必ず何かしらの悪影響を与えてくるんだ。例えるなら、深い川の中に重りを付けて入る状態? 」
例えを交えながら説明するマゼランを急かす。
知らぬ間に大量の火薬を保持して、何の気なしに触れた火で大爆発するようなものだ。
命に関わる以上、今はとにかく情報が欲しい。
「あ、あ、えっと……僕の能力は怪我や病気を治すって言ったでしょ? その仕組みは、治したい相手の身体の回復を早めるよう、魔力で刺激して上げるんだ。でも人間の治癒能力だけじゃどうにも出来ない怪我や病気を無理に治そうとすると、魔力が足りない能力を補うんだ! 言わば万能な薬みたいなものというか……」
最後に気になる質問をしてしまったことを後悔しながら、二人して無意味に身振り手振りを繰り返す。
急かしている罪悪感はあったけれど、生命を脅かす可能性があるのなら、対策の為にも詳細が気になる。
扉の音がギィギィと鳴り始め、私に感化されてマゼランの焦りも上昇した。
「は、早く早く! 」
「えっと、えっと、保持してる魔力が不足した場合は体内で魔力が自動的に生成されて、保持者本人の生命が材料になっちゃうんだ! 見た目は変わらなくても、身体の中だけ老化が急速に進んで、寿命が縮むってこと! 」
「えっ!? 」
「人間と違って僕等は元々体内で魔力を生成する機能が備わってるけど、君達にはその機能が備わってないから代償を払うんだ。だから無暗に使っちゃダメだよ! 」
「わか、りました……ありがとうございます」
「ふぅ~間に合った~! あ、あと少しで扉が開ききっちゃうね? 」
閉められた扉が独りでにゆっくりと開く様子を見つめながら、なんとか説明し終えたマゼランはやり切ったと言わんばかりに笑った。
さっきまではあんなに大慌てだったのに、私まで釣られて笑っていると、安堵したような優しい表情で見つめられる。
「元気が出たみたいだね」
「はい? 」
「何を悩んでるのか知らないけど、自分一人でどうにも出来ない時は周囲に助けを求めて良いと思うよ? 大丈夫だって思っていると、知らず知らずの内に心を病んじゃうからさ」
「でも……」
「ヴァルなんか真面目過ぎておかしくなっちゃってさ~」
「…………ん? 名前をもう一度教えて下さい」
「ヴァルガン・ディ・ヴァルガン。生きてた頃、最後に見た王様で、僕が大好きで大嫌いになったドラゴンさ! 」
口を開いた瞬間、同時に閉まっていた扉も完全に開いてしまい、真っ白い光に包まれて何も見えなくなってしまった。
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※修正箇所※
字下げ、誤字脱字、一部言葉の言い換え、記号の変更。




