3.弟子入り志願の少女。
(*'▽')コメディーパート!
面白かったら、是非★評価など!
創作の励みとなります!
――『少女』はその光景に、興奮を覚えていた。
自分の窮地を救ってくれた同級生が、あの貴族たちを数的不利さえものともせずに撃退してしまったのだから。しかも、スキルを使わずに、だ。
彼は正真正銘、その鍛え上げた力のみをもってして勝利した。
華奢な彼女にとって、その逞しさは理想そのもの。
「すごい、私もあんな風に……!」
少しでもいい、彼の強さに近付きたい。
どのようにすれば、あの境地へと至れるのか。
知りたいことや、湧き上がる感情が頭の中で混ざり合っていった。そして、
「あ、あの……!」
「……ん?」
貴族たちが立ち去った後に、少女は無意識にこう口にする。
「私を弟子にしてください……!」
少女を助けた同級生は、その精悍な顔に微かな困惑を見せた。
だが、しばしの間を置いてからこう言う。
「えっと、友達からなら……?」――と。
◆
弟子入り志願なんて、まったく想定していなかった。
だから思わず、訳の分からない返答をしてしまったのだけど……。
「師匠! 今日から、よろしくお願いします!!」
「あー……うん」
ボクが助けた少女――ミラ・リンウェイルは、了承と受け取ったようだった。
そんなわけで彼女は、先ほどからずっと自分の後ろをついてきている。小柄で華奢、そして小動物のような顔立ち。栗色の髪を肩ほどで揃え、青色の無垢な眼差しをしている年下の女の子に『師匠呼び』されるのは、どことなく居心地が悪かった。
というか、周囲に変な勘違いをされるのではなかろうか。
だが、そんな心配をよそにミラは言うのだ。
「毎日、可愛がってくださいね!!」
「ぶふっ!?」
――吹いた。
それは完全に勘違いされる。
そう思って、嬉々とした少女の言葉を訂正しようとした。だが、
「今日から、毎日……可愛がるぅ……?」
「あ、アクト……!?」
偶然に通りかかった同級生に、聞かれてしまったのだ。
しかも、思い切り勘違いされる部分を重点的に。
「えー……あ、ふーん……」
「いや、違うんだ。アクトくん、待ってくれ」
何やら距離を置かれるが、どうにか誤解をとこうと試みた。
すると、そんなタイミングで……。
「ねぇ、師匠。いつになったら、私の身体をイジメてくれるんですか?」
「だああああああああああああああああああああああ!?」
ミラが新たな火種を投下した……!
ボクはとっさに声を上げる。だが、時すでに遅しだった。
「…………あ、お取込み中みたいだな」
アクトは表現しがたい表情を浮かべ、去って行ってしまう。
ボクはそんな友人の背中に、大きな声で叫ぶのだった。
「違うってええええええええええええええええええええええええっ!!」
――夕暮れ時の王都立学園。
ボクの声が、とても広く響き渡るのだった。