1.【暴食】の覚醒。
(*'▽')b 応援よろしく!
「あ、あああああああ! あああああああああああああああああああ!?」
「な……なんだ、何が起きやがった!?」
「アニキ、どうしたんすか!」
ボクが異様な熱に苦しむ最中、彼らの会話が聞こえてきた。
「俺の……俺のスキルが、使えなくなってやがる!?」
「そんな、馬鹿なことが!?」
どうやらリーダーのスキルに、何かしらの異変が起きたらしい。
もしかしたら、自分の身体に知らない感覚があることと関係あるのか。そう考えていると心臓が脈打って、先ほどまでのことが嘘のように熱が引くのを察知した。
全身から吹き出した汗を拭い、ボクはゆっくりと身を起こす。
すると、リーダーは慌てた様子でこう叫ぶのだ。
「お前、俺のスキルに何しやがった……!?」
「アンタのスキルに……?」
それを聞いてボクはふと、とある変化に気付く。
さっき【暴食】を使った際に宿った『熱』が、いまだに自分の中に存在していることを。自分以外の何かを燃やし尽くすことはできないが、これはもしかして……。
「ボクが、食ったのか……?」
相手の、スキルを。
その可能性に行きついた時、なにかが自分の中でストンと落ちた気がした。
理屈はまだ分からない。けれど、どうやら正解らしい。ボクは相手のスキルを喰らって、自分の中に宿した。
だったら、他の何かを燃やし尽くすことはできなくても。あるいは――。
「ぐ、うううううう!?」
「なん、だと……!」
そう考えて、熱を自身の右腕に移動させる。
するとボクのそれは熱を発して、異様な蒸気を立ち昇らせた。
全身からまた、汗が噴き出してくる。それでも、この拳があれば……!
「おい、あのデブの力を【抑制】しろ!!」
「わ、分かりました!!」
そう思った矢先、取り巻きの一人――ボクを足蹴にしていた男子が、何らかのスキルを使った。直後に右腕の熱は急速に冷めていって、通常のそれに戻る。
先ほどリーダーは【抑制】と言った。
だとすれば、そのスキルを『喰って』しまえば良いのではないか。
「ぐ、う……!」
「ひっ……!?」
そして、ボクはさっきのように。
取り巻きの男子の方にも、自身の【暴食】を向けた。すると、
「か、は……!?」
また、心臓が脈打って。
ボクの中に、新しい感覚が生まれた。
それでようやく、予感は確信へと変わっていく。
「お、おい……なんだよ、こいつ……!!」
「今まで、好き勝手やってくれたよな……?」
「な、に……」
その確信を胸にボクは、いつになく強気に出た。
慣れないけれど、こういう時はハッタリだって必要だろう。そう考えてボクは再度、右腕に熱を纏わせて彼らへと歩み寄っていった。そして、
「……これまでのお返し、させてもらうよ?」
「ひっ……!」
思い切り、右の拳を振り上げる。
すると彼らは血相を変えて、
「う……うわあああああああああああああああああああああああああああ!!」
尻尾を巻いて逃げ出すのだった。
その後姿が見えなくなるのを確認してから、ボクは全身から力を抜く。膝から崩れ落ちて、地面の上に大の字になって夕暮れ時の空を仰ぎ見た。
「勝てた、のかな……?」
いまはまだ、実感が湧かない。
それでもこれは、ボクにとって初めての勝利に他ならなかった。