屋根裏部屋で死す
2階建ての一軒家の屋根裏部屋の窓を開け放ち、一軒家に向けて坂の下から駆け上ってくる奴等に向けて自動小銃の引き金をひく。
ランドセルを背負った小学生、缶コーヒーの空き缶を握り締めたオッサン、片手に拳銃を握った制服警官、皆ポーカーフェイスと言うか無表情で両腕を前に突き出し駆け寄って来る。
奴等は西の大国の細菌研究所から流出した細菌兵器に感染した感染者たち。
感染者に接触されると数秒で細菌に脳を乗っ取られ、接触された奴も感染者になってしまう。
ただ、映画や漫画の中のゾンビと違って脳を乗っ取られただけで生きているから頭だけで無く、胸や腹等を撃ち抜いても出血多量などで死んでくれるけどな。
この細菌のワクチンを見つけようとしているある研究者の話しでは、奴等、感染者には自我が残っていて非感染者に駆け寄って来るのは感染させる為と言うより、殺してもらう事を目指しているのではと語っていた。
確かに奴等が最初に駆け寄る非感染者は、子供より大人、無手の者より武器を所持している者、鉄パイプやバットを持っている者より銃器を所持している者って言うように、自分を殺してくれる可能性が高い非感染者に寄って来るように感じる。
非感染者を保護し避難させる任務を遂行中だった俺達国防軍の1隊がこの一軒家に立てこもる事を選択したのも、それを期待しての事。
保護した十数人の非感染者は保護した人たちの中にいた私服の女性警察官に託し、ヘリコプターが待機している坂の上に逃した。
一階や二階の窓や扉から押し寄せて来る感染者目掛けて撃ちまくっでいた同僚たちの悲痛な叫び声が、ガラスが割れる音や扉が壊される音と共に響く。
「糞! 触られたぁー」
「嫌だー! 感染者にはなりたくねー!」
俺の隣で眼下の感染者目掛けて撃ちまくっていた同僚も叫んだ。
「チクショー弾切れダァー」
俺の自動小銃も弾切れ、腰のホルスターから拳銃を抜こうとした時、屋根裏部屋に続く階段を駆け上ってくる音がして腕を前に突き出した感染者が屋根裏部屋に入って来た。
同僚が感染者に体当たりして、その感染者や後ろに続いていた多数の感染者を巻き添えにしながら階下に転がり落ちて行く。
感染者と同僚が階段から落ちて行く間に拳銃をホルスターから抜いた俺は、第一弾を最初に階段を駆け上がって来た十数秒前まで同僚だったポーカーフェイスの感染者の顔目掛けて放つ。
続いて自分の顎の下に拳銃の銃口を押しつけ引き金をひいた。