幼馴染みのユリー
数日ぶりの投稿です。
思い出した。ゼフィラスは王家が所有する家名のひとつだ。
「もう!エリーも酷いよ!久しぶりに会った幼馴染みへの第一声が服装のことなんて」
ユリーが頬を膨らませて私に詰め寄ってきた。いや、だって、もう十年以上会ってないけど、こんなに変わってるなんて…。
誰でも驚くし、心配するよ!
「にしても…エリーは全然変わらないねー!」
「貴方は全く面影がないわね。それと、十年以上も全く変わらないなんてあるわけないじゃない」
相変わらずの失礼さにいらっとする。まあ、これも含めてユリーは面白いんだけど。
十年経ってもこの性格は変わっていないみたいだ。
私達が久々の再会を喜びあっていると、ユリーが部屋に入ってきてからずっと固まっていた三人のうち、ようやくカイトが復活した。
「ちょ、ちょっと待ってください。これはどういうことですか?」
「ん?あ、いたんだ」
ちょっとユリー。それは流石に三人が可哀想だよ。
そういえば…。
「ユリー、貴方、そういえば何故ここに?」
こんなところにユリーがいるなんておかしい。
年齢的にもう社交界デビューは終わってるはずだし……。色々と忙しい時期のはずだが。
私の尤もな疑問に対して、ユリーがそれはね…と話し出そうとしたのを遮って、カイトが食いぎみに答えてくれた。
「それは当然ですよ!その方こそがこの部屋の主であるユーリス様なんですからっ!」
私はゆっくりとユリーに顔を向ける。
「カイト!何で勝手に言っちゃうのかなぁ。言うのを楽しみにしてたのに」
ユリーは半分本気で気分を害したようで、不機嫌な顔をする。それを見たカイトは顔を青くして直ぐ様ルースの後ろへ隠れた。
ってことは……。
「ユリー、貴方ユーリス様なの?」
いや、ほんと、信じられないんだけど。
「あんなに泣き虫だった貴女が?嘘でしょ?それに貴女がそんなことをする必要はないはずだわ。だって貴方は__この国の王女殿下なのだから」
私が彼女と仲良くなったのは、私と彼女のお母様が仲が良かったからだ。
幼い頃引き合わされ、お互い年齢が同じで名前が似ていたこともあって直ぐに仲良くなった、私の数少ない友人の一人。
お母様が亡くなってからは一度も会っていなかったが、なかなか強烈な子だったので良く覚えている。
性格的には騎士団長をやりたいと言い出しても不思議ではないが、周りが許さないだろう。
それにここは実力主義だと聞いている。女であるユリーにそんな実力があるのだろうか。
私が混乱していると、ユリーが笑って言った。
「王女、だからだよ。この騎士団は特殊でね、王族にしかまとめられなかったんだよ。ふふっ!驚いた?」
「そりゃあ驚くわよ。王族にしかまとめられないとしても、他に王子もいたでしょうに」
「私以外弱くてこの三人に負けちゃった。だから父上も心底嫌そうな顔で私を団長に任命したんだ」
やはり陛下もユリーにやらせたくなかったんだ…。
陛下の苦労した様子が目に浮かぶ。
それはそうだ。嫁入り前の娘に傷はつけたくないだろう。
「ユリー、陛下を虐めすぎたら駄目よ。貴方とても強かったのね。この三人もそれほど弱そうでもないのに」
ユリーが強いことには驚きだ。いや、あまり意外ではないが……
「俺たちだってあんな手を食らわせられなかったら負けてねーし」
ルースがボソッと呟く。
やはり正攻法で勝ったわけではないようだ。
絶対に、どうやって勝ったかだけは聞きたくない。ユリーのことだからとんでもなくえげつない手だろう。
「ルースゥ…何か言った?」
ニコッと笑うその姿は典型的な貴族の例といえる。ユリーは貴族の頂点にたつ王族らしく、貴族の中の貴族だ。
まあ本人はそれを認めていないが。
「いえ、何も言ってないです」
冷や汗をだらだら流しながらルースが答える。
そこでそれまで黙りっぱなしだったセルファスさんが口を開いた。
「とりあえず皆さん、席について話を進めませんか?」
セルファスさん、ありがとうございます!
この意味不明な状況を回収できる人がいてくれて助かった。
腹黒は、怖い…(笑)
イミフな状況って回収できず、スルーしてしまう!