おかしな経緯
丁寧な対応はいつでも大事です。
「どうぞ、こちらにお掛けください」
セルファスさん私に椅子を勧め、その前の椅子に自身も座った。チャラ男改めカイトさんはドアにもたれて腕を組んでいる。どうやら座る気は無さそうだ。
入った部屋はこれまでの部屋と比べると片付いておて、調度品等もおかれていた。ソファーもあるし、多分だが、ここは応接室だろう。
「ありがとうございます」
お礼を言って椅子に座ると、私が椅子に座ると、セルファスさんが話を切り出してきた。
「お茶もなくてすみません。何分急だったので…。この度はうちのルースが失礼をしてしまい、大変申し訳ありませんでした」
セルファスさんが深々と頭を下げる。う、りょ、良心が痛む。
本当は殺されそうになったなんて絶対言えない。
「なぁー俺はルースが襲うなんて到底信じられん。何があったか一から説明してもらえないか」
カイトさんがいぶかしむような目付きでこちらを見た。それもそうだ。仲間がいきなり女性を襲ったなんて誰でも信じられないだろう。
どこから話そうかと悩んでいると、セルファスさんが、
「カイト、失礼ですよ。まずは自己紹介といきましょう」と返していた。
「改めまして、私はセルファスと申します。そしてそこにいるのがカイト。貴方のお名前を伺ってもよろしいですか?」
「はい。私の名前はエリといいます」
「エリ様、ですか。ではさっそくですが、何が起こったかを話せるだけ話してください。無理はしなくて大丈夫ですから」
「分かりました。ですが、様は止めてください。私みたいな一般市民には恐れ多いので…」
「分かりました、エリさん」
どうやらカイトさんは話を聞くだけで、基本的にセルファスさんが話を進めていくようだ。
色々質問したいこともあるが、私自身も情報を整理したいので、セルファスさんの言葉に従って今までにあったことを少しずつ話していく。
「私が仕事が終わって帰宅しているとき、私の町__カナルへ近衛兵がやって来たんです。そして、説明も何もないまま、馬でここに連れて来られました。町の人達も必死に助けてくれようとしたのですが、逆らうことはできず…。この町に着いてから近衛兵に先程の部屋へ連れていかれ、あの男に、
「今からお前に死んでもらう」
と言われたのです。私は本当に驚いて声を上げ…。その後はセルファスさんもご存知のとうりです。」
私はこれまでにあったことを全て話した。
改めて考えてみると、違和感しかないな…。
もし、私が何かをやらかしていたとしても、一市民を捕まえるのは衛兵だ。それに罪状も言われる。何でこんなことになったのか___?
それはお二人も不思議なようで、思案顔で考え込んでいる。セルファスさんが顔を上げ私を正面から見つめた。
「とりあえず、「襲った」が暴行でなくて安心しました。それでも「死んでもらう」ですか。死刑になるような人ならば、私たちも知っているはずですし……。何か心当たりはありませんか?」
この場合の心当たりとは、殺されるような、かな?
ああ__この言い方だと殺人犯になるなぁ。
死刑になるような罪を犯したか、だよね。正直言って心当たりは全くない。だから困ってんだよなぁ。
もし私自身の出自に関係していたら厄介だ。
「いえ、ありません」
「そうですか。私たちもそういう案件に心当たりがないので…。とりあえず、質問などはありますか?」
その言葉を待ってました!
わけ分かんない状況過ぎて、聞きたいことしかない…。