カナルとの別れ
地元の人たちってみんな優しい。
田舎になるとより仲間意識が強い。
ガタガタと馬車に揺られながら外を見る。
久しぶりに来た王都は三年前と変わらないままの賑やかさをみせていた。
誰も災厄なんて知らず、楽しそうに生きている。
この平和がいつ崩されてもおかしくないことなんて、露ほども思わずに。
出来ることなら、私もこの一人でありたかった。
あの日から三日が経った。
私の予想よりも早く、次の日にはフィエスを立つこととなり、三日かけて王都まで来た。途中で休みを取りながら進んでいたから、急いでいるようには思えない。
まず、カナルによって挨拶もできたしね。
___町の人たち元気かな?
三日前別れた彼らのことを思い出す。
町へ帰ると、皆が心配して出迎えてくれた。
私が騎士たちと一緒に帰ったことを知ると、「こんな良い子に酷いことをしないでください」と真っ直ぐルースたちの目を見ながら言ってくれた。
こんなに騎士を引き連れていたら、犯罪者とも考えれるのに。
まっすぐに私を信じてくれた彼らに、もう戻らないかもしれなことは言えなかった。
言ったたらきっと、彼らは私を逃がそうとするだろう。
だから私は、嘘をついた。
「ちょっと王都まで行ってきますね。お土産をたくさん買って帰りますから。」
笑いながら、何も、気取られないように。一生叶わない約束をした。
自分でも酷いと思ったが、絶対に忘れられたくなかったのだ。
一生、私の約束に縛り付けることを許してほしい。
あんなところで、貴族の時に鍛えたポーカーフェイスが役に立つとは思わなかったなぁ。
町の人たち皆と言葉を交わしながら、私は心の準備をした。
こんな優しい人たちを救うには、私がイケニエになるのが確実なんだ。そう思って、心を決めた。
「おねえちゃん、どこいくの?」
「今からね、王さまが住んでいる町に行ってくるよ。」
「そーなんだ!じゃあえほんにでてくる、おしろのばらもみるの?」
「見るよ。そうだ!お姉ちゃんが取ってきてあげるね。」
「いいの!?ありがとう!」
栗毛色の綺麗な髪をした、小さな女の子との約束。この子がお礼を言って満面の笑みで笑ったとき、ふと泣きそうになった。
約束は叶えられないけど、この子の未来を守りたい。
いつまでもこんなふうに笑っていてほしい。
町の人たち全員とちょっとした約束を交わして、門に立った。小さい町だから、皆が門まで見送りに来てくれた。
最後に村長さんが出てきて私に言った。
「王都は危険なところじゃからのう。用事が終わったらすぐ帰ってくるんじゃぞ?」
「ふふ、はい。では__行ってきます!」
真面目な顔で言った村長さんは、何か王都で嫌な記憶でもあるのか。そう考えると笑えてきて、泣きそうになっていたのが嘘のように笑みが零れた。
村長さんは分かってやってくれてるのだろうか?
私は笑ってお別れを告げることができた。
「おみやげよろしくね!」
「帰ってきたら王都のこと、たくさん話して!」
「「「行ってらっしゃーい!」」」
私は名残惜しさを感じながらも馬車に乗った。向かいに座ったユリーがポツリと言った。
「優しい人たちだね…。」
私はふふっと笑いながら肯定した。
そして、町が見えなくなるまで、いや見えなくなってもずっと手を振り続けたのだった。
その時の私の目に涙が浮かんでいたのは、仕方のないことだろう。
別れは辛いよ。




