今は笑うしかない
どんな状況でも笑顔って大切
「とりあえず、今日はここに泊まってください。後で部屋へご案内します。私達も今、団長から聞いたことが多かったので、これからどうなるのかは分かりかねます」
すみません、と頭を下げるセルファスさんの顔は、髪がかかっていてここからだと見ることはできない。深い緑色の髪がその表情を完全に隠してしまっている。
「あーあ、今日はすぐ解放されると思ってたのにな……。襲われるし、死刑宣告されるし、ホント災難」
思わず不満が口をついてでる。
これからのことを考えると気が滅入る。
部屋の中が思ったよりも静かだったようで、静かな湖面に落ちた波紋のように大きく響いてしまった。
「ちょっと待ってエリー!襲われるってどういうこと?!」
今まで静かに話を聞いていたユリーがガバッと身を起こし、必死の形相で尋ねてきた。
彼女の目尻はほんのりと赤く染まっている。これは後で冷やすよう言っておかないと。
それと、同時にルースの顔が青ざめていく。
……まだ言ってなかったな?
ふと、先程のコントのような状況を思い出す。
さて、第二クールといきますか。
意識して口角を上げる。
にやりとした笑みを張り付けて、喉の調子を調える。
今度はどうなるかなぁ、面白そうだ。
「最初に通された部屋でね~ルースに襲われたんだよ~」
その瞬間、ユリーがルースの胸ぐらを掴んだ。いや、引っ張った。
「ルース?エリーに何してくれてんの?」
「いや、だから誤解っすよ!」
ルースが焦って否定するが、ユリーの目はもう完全に据わっている。全く信じてなさそうだ。
「じゃあなんでエリーはこう言ってるの?言っとくけど、エリーは伯爵家のご令嬢だよ?これがばれたら、ルースは死刑だね!」
ユリーがそう言いきった時に違う方向から、ガタッと大きな音が聞こえた。
「は!?エリーは、いや、エリー様は伯爵家のご令嬢なんですか!?」
見ると、カイトが変な格好で叫んでいた。
「そうだよ。平民になるのは難しくてね。」
ちょっと、カイト。顔を背けないでくれる?
「うわっマジかよ…俺あの女とか言ったわ…」
ぶつぶつとと青ざめた顔で何か言っているが、流石にそれで死刑にするほど貴族は非道じゃない。
一般市民の貴族の印象があまりにも悪いと分かったところで、どさくさ紛れにセルファスさんがのたまった。
「まぁ私は最初から貴族の方だと分かっていましたがね。」
「え。」
思わず声が漏れる。
何故だろう。私もこの三年間で慣れていたはずなのに。
笑っているからといって、その人が楽しいのかなんて誰にも分からない。心の中で傷ついてたりして。




