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(仮)アルドの異世界転生  作者: ばうお


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527.新たな目標

527.新たな目標






ブルーリングへ帰ってから、1週間が過ぎた。

この間はライラを医者に診せたり、祖父さんへ旅の報告をしたりと忙しく過ごしている。


「アルジャナへは辿り着いたし、次は何を目標にするべきか……ファーレーンを目指す? それともトレース大陸のマナスポット解放を本格化させる? ティリシアのルイス達も心配だし、魔瘴石も集めておきたい。でも武器の修行も中途半端なんだよなぁ……あー、そうだ。グレートフェンリルの2つ目の迷宮も踏破しないといけなかった」


中庭で修行するアシェラを眺めながら、これからの行動に独り言を呟いてた所に、返す言葉があった。


「ぱぱ、抱っこ」

「抱っこかー。ほら、パパのお膝の上においで。シャロンはママに似て、今日も可愛いでちゅねー」


「きゃはは」


うーん……幸せだ。正に癒しの時間。こんなに可愛いシャロンも、いつかは嫁に行くんだろうか……いや、シャロンはオレの物だ。絶対に嫁になど出すものか!

でもずっと独身なのもなぁ……いつかシャロンも出ていく……ダメだ、何か悲しくなってきたぞ。泣きそうだ。


くそっ、しょうがない、涙をのんでオレの眼鏡に適えば嫁に出すのを許してやろうではないか。条件は3つだ。1つ、オレより強いヤツ。オレ程度に負けるようなヤツにシャロンは任せられん!。

そんなモヤシ野郎は門前払いだ。帰れ、帰れ! 塩撒いてやる。


2つ、オレより頭の良いヤツ。微分積分は当たり前、出来れば修士を持ってるヤツが良い。

やっぱり院卒はレベルが1つ違う。出世もするだろうし、稼ぎがあってこそ生活も安定すると言うものだ。


3つ、シャロンを大切にするヤツ。1と2は、まぁ多少緩和してやらん事も無いが、これだけは譲れない。

浮気なんぞしようモンなら、根本からちょん切ってやる。でも孫が出来ないとオレが寂しいので、行為の日だけは回復魔法で治してやらん事もない。


勿論、次の日には、またちょん切るが……そんな事にならないよう、相手には誠意をもってシャロンに対してほしい。

1人、シャロンの将来に一喜一憂していると、何時の間にか目の前に眉根を寄せたアシェラが立っていた。


「あ、アシェラ、どうした?」

「アルドの顔が変。シャロンを抱きながら、1人で笑ったり泣きそうになったり……シャロンが真似するから止めて」


おふ……ワテクシの顔がおかしいと申しますか、アシェラさん!

当のシャロンは、オレとアシェラのやり取りを、口を開け食い入るように見つめている。


確かに子供は親の真似をする……万が一オレに似たりしたら……妄想の世界の住人になっちゃうじゃないですか!

ダメだ! シャロンはアシェラに似てほしい。(脳筋以外:これ大事)


結局、メイド2号のパメラがお昼を呼びに来るまで、3人で親子の団らんを楽しんだのである。



◇◇◇



「このパン美味いな。ほんのり甘くて……これはストロの実が入ってるのか?」

「は、はい。ライラ様が食欲が無いので、ストロの実を生地に練り込んで軽く味を付けました。故郷では食欲が無い際、果物を料理に入れる事が多いので……」


「なるほど、エルフの料理か。気を使ってくれてありがとう、ジュリ。ライラ、これなら食べられるか?」

「うん。ほんのり甘くて酸味もある。凄く美味しい。ありがとう、ジュリ」

「そ、そんな、滅相もありません! 私が受けた恩に比べれば、この程度 何もしてないのと変わりません」


メイド1号のジュリは、あわあわと慌てて謙遜している。

ジュリのこんな姿は、初めて見たかもしれない。普段はオレが話しかけると、怯えた顔で縮こまってしまうのに……


いつもこんな感じで接してくれれば、こちらも楽なんだけどなぁ。

アシェラとオリビアも「美味しい美味しい」と言いいながら、シャロンとレオンに小さくちぎって食べさせている。


改めて思うが、レオンはもう普通の食事が出来るんだよな……オレ、子供達の成長する姿、殆ど見れて無いんだけど……まるで単身赴任している日本のお父さんみたいだ。

聞いた話では、久しぶりに我が家へ帰ると、子供がお父さんの顔を忘れており泣かれるって聞いた事がある。


レオンはまだ話せないから別にしても、シャロンに泣かれでもしたら……オレ、立ち直れないかもしれない……

コピーロボット……げふんげふん。エルには我が家へ頻繁に顔を出すように言っておこう!


こうして束の間の幸せを楽しんだのである。



◇◇◇



ブルーリングへ帰って、早いもので2週間が過ぎてしまった。

そろそろ動かないと……そうは思いつつも、甘い毒のような生活に浸ってしまっている。


「そろそろ方針を決めないとなぁ……ファーレーンもいつかは行かないといけないから、ベージェまで足を延ばすのが良いのか? それとも独立が数年後に控えてるなら、フォスタークのマナスポットも解放しておいた方が良い? 独立した後は簡単に国の中を歩けなくなるだろしなぁ。うーん……」


リビングのソファーで横になりつつ独り言を呟いていると、返す言葉があった。


「フォスタークは後で良いわ。独立する際に、「文句を言うなら、フォスターク内のマナスポットは解放しない。魔物の被害が広がるけど勝手にどうぞ」って脅してやれば良いのよ」


こう話すのは安定の氷結さんである。我が家のテーブルでプリンを貪りながらの言葉だ。


「それって使徒としてどうなんでしょう? 世界を救うのが使徒の使命じゃないですか。僕達の次の使徒だって遠い未来に生まれるでしょうし……使徒の評判が悪くなったりしませんかね?」

「アンタねぇ、そんな先の事に責任なんて取れるはず無いでしょ。そもそも人族に使徒の伝承なんて残って無かったんだから。だったら、そんな事に配慮するより実利を取る方が現実的じゃない?」


「それは……そうです」

「それに将来は毟り取るとしても、今現在は無償で世界の危機を救ってるわけでしょ? 対価を払ってない相手の都合なんて考慮する必要無いわ。違う?」


「その通りです……」

「じゃあフォスタークは後回しにしましょ。アルジャナ……人族以外が共存してる国なのよね?」


「そうです。領主の種族の言葉が、街の公用語になっている他種族国家です」

「どんな街なのかしら……きっと雑多な感じなんでしょうねぇ。服の流行も街で違うのかしら? 凄く楽しみねぇ」


ん? その言いよう……アナタ、もしかしてアルジャナへ行きたいから、フォスタークを後回しにしたわけじゃないですよね?

アナタから旅行に出かける前の、浮ついた空気を滲み出てるんですが……本当に信じて良いんですよね? 氷結の魔女さん?


「母様? もしかしてアルジャナを見たいから、フォスタークを後回しにするつもりじゃ?」

「な、何 言ってるのよ! 私がそんな自分勝手な人間に見える? 失礼しちゃうわ!」


とっても自分勝手に見えます……いや、自分勝手が服を着て歩いてるって言うか……

オレだけでなく、アシェラ、オリビア、ライラからのジト目を受け、コイツは逆ギレしやがった。


「な、何よ! アンタ達! ちょっとぐらい楽しみにしたって良いじゃない! だって他種族が一緒に暮らしてるのよ? 少しくらい興味を持つのは当たり前でしょ!」

「あー、母様? 問題はそっちじゃなくて、フォスタークの件を後回しにする方なんじゃ?」 


コイツは動揺した顔から一転、真面目な顔で話し始めた。


「あのねぇ、アル。アナタが優しい人間だってのは痛いほど良く分かってるつもりよ。でもね、フォスタークは敵になるの。一時的か恒久的かは分からないけど、それだけは変わらない。だったら交渉に1枚でも多くカードを用意するのは当然じゃない?」

「母様の言う事は理解できます。確かに交渉で切れるカードは多い方が良い。でもこの国でオクタールみたいな事が起こったら……」


「その時は思いっきり吹っかけてやれば良いわ。以前、アオが言ってたわよね? マナスポットの半分が汚染されて使徒が生まれるって。しかも、それと同時に魔物が活性化して被害が増えるとも。ブルーリングのゴブリン事件、サンドラのマンティス事件、オクタールのオーガ事件、短い間でこれだけの事件が立て続けに起きたのは、きっとその影響なんでしょう。恐らく世界中で同じような事が起きているはずよ。だったら、既に最低限のマナスポットのネットワークを張り巡らせてあるフォスタークより、アルジャナやファーレーンを目指すのはアンタが言う「使徒の使命」に合致するんじゃない? そもそも彼の地で何かあっても、アンタは知る事すら出来ないじゃない。目先の情で目を曇らせるのは、使徒様としてどうなのかしら?」


う゛……この人は確実に痛い所を突いてきやがる……確かに母さんの言う事は理に適っている。

ぶっちゃけ、オレが思っていたのは、少しでもフォスタークに恩を売って、独立の際に流れる血を少なくしたい……そんな気持ちからだ。


しかし母さんはそんな「情」より「大局」を見ろと言う。

本気で戦えば、オレ、エル、アシェラ、母さんの4人でフォスターク軍など蹂躙出来てしまう以上、こっちに時間をかける意味は薄い。母さんはそう言っているのだ。


そんな事よりアルジャナとファーレーンに伝手を作り、何かあった場合に備えろと氷結の魔女は言う。

本当にこの人は……普段はやる気0のくせに、少し頭を使っただけで物事の本質を簡単に見抜きやがる。


少しの悔しさと大きな呆れを胸に秘め、オレは観念したように口を開いた。


「母様の言う通りですね……僕が甘かったと痛感させられました……次の目的地はアルジャナのベージェ。そこからファーレーンに向かうかは、ベージェに着いたら改めて考えましょう」


普段なら鬼の首を取ったかのように振舞うのだが、オレが気落ちしているためか、母さんは肩を竦めただけで何も言う事は無かったのである。



◇◇◇



母さんに説教されて3日が過ぎた。今は指輪の間の前に立ち、これからアルジャナへ飛ぶ所だ。


「さあ行くわよ! まだ見ぬ国アルジャナへ!」


頬を染め鼻息荒くこう叫ぶのは、我らが母、氷結の魔女こと氷結さんである。


「母様、今回の旅は少数なんですから、あんまりカズイさんに迷惑かけないでくださいよ……」


色々と相談した結果、今回の旅のメンバーは、オレ、氷結さん、カズイの3人で向かう事が決まった。

ライラは妊娠中であり、旅などさせられないのは当然である。


問題はアシェラ。まだ2歳にもなっていないシャロンを置いて、旅に出ようとしたのをオレが止めたのだ。

以前のアルジャナを目指す際には、コボルトの主の件があったため悩みつつも同行してもらったが、そう何度もシャロンから母親を取り上げるなど許される事では無い。


現にブルーリングへ帰ってきたばかりの頃、シャロンはアシェラよりオリビアに懐いていたのだから……

これは誰が悪いと言う事では無く、全員が精一杯に行動した結果なのは分かる。しかしアシェラの落ち込みようは、言葉に出来ないほど酷い物だった。


夜に1人で「ごめんね、シャロン……悪いお母さんで……ごめんね……」と泣いている姿は、どう声をかけて良いか分からなかったほどだった。

やはり今はまだ、アシェラはシャロンの隣にいるべきだ……この件を皆に相談した所、満場一致で少数による旅が決まったのである。


今回の旅の目的が、マナスポットのネットワークを張り巡らせる事に変わりは無いが、1つ新たな決め事を作った。

それは「このメンバーで勝てる主としか戦わない」と言う事だ。


以前のコボルトの件もある。無理をして、余計な遠回りをするつもりは無い。

これにはカズイだけでなく、母さんからも了承をもらっているので、無茶な行動は控えてくれると信じてる……頼みますよ? 氷結さん。


「じゃあ、向かいましょうか。アシェラ、シャロンを頼むな。オリビア、レオンにオレの分も愛情を注いでやってくれ。ライラ、体には気を付けて……お腹は冷やさないようにな。ご飯も好きな物で良いからちゃんと食べるんだぞ。それから……」

「アル、何時になったら飛べるのかしら? アンタの妻は傑物揃いよ。心配しなくても立派に子供を育ててくれるわ」


「そうですね……じゃあ、本当に行ってくる。アシェラ、オリビア、ライラ、後は任せた。3人共、自慢の嫁だ。愛してる」


結局、そこから飛ぶのに数分を要し、母さんとカズイだけで無く、アオにまで溜息を吐かれたのであった。





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