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(仮)アルドの異世界転生  作者: ばうお


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520.クララの道

520.クララの道






カムル王子の下から戻って、1ヶ月が経過した。

瞬歩の修行も、新しい靴のお陰で何とか安定してウィンドバレット(魔物用)に乗れるようになっている。


ネロのように瞬時に足の裏で発動するには至っていないが、後は日々の修行で少しずつ自分の物にしようと思う。

それに加え、短剣術と騎士剣術の修行も順調であり、オレが如何に武器の扱いを軽視していたか身を持って思い知らされている。


「ハァハァ……す、少し休ませてくれ……」

「分かりました。では10分休憩を取りましょう。その後は今の動きについて考察した後、もう一度 模擬戦です」


「わ、分かった……ハァハァ……」


お、鬼のベレット教官から、やっと休憩を許された……何かだんだん、厳しくなってる気がするんだけど……

当のベレットはと言うと……オレが大の字になって寝転んでいる中、騎士達と議論を交わしている。


内容は騎士剣術と短剣術の融合? 要はお互いの良いとこ取りが出来ないかを話し合っているのだ。

あのー、確かにオレは魔力武器が使えるので、理屈としては分かりますよ? でも何ですか、その技は?


相手に短剣を突き入れてから刀身を伸ばして片手剣に変化させるって……完全にオーバーキルじゃないですか! しかも殺意が高すぎるでしょ!

あー、そこの騎士、「形状が変えられるなら、いっそ突き刺した後、相手の体の中で四方八方に刃を伸ばせば良いんじゃないですかね?」とか……お前等、絶対 面白がってるだろ!


言っておくが、魔力武器はそこまで万能じゃないからな?

まぁ、騎士の言う事は、コンセプトとして氷結さんが使う「魔王の一撃」と同じではある。


もしかして氷結さんと同レベルの魔力操作が出来れば、可能なのかもしれない。

しかし今のオレには無理だ。何より付け焼き刃の魔力武器では、武器として強度が足りない。


やっぱり一歩一歩出来る事をやっていくしかないのだ。

もう少し休みたい所ではあったが、鬼のベレット教官から呼ばれ、再び騎士と魔力無しの模擬戦へ連れ戻されるのであった。



◇◇◇



「ただいま……」

「お帰りなさい。ベレットさんの修行はどうでしたか?」


「無茶苦茶 絞られた……体中、筋肉痛だ……」

「そうなんですか……きっとアルドの事を思って、厳しく接してくれてるんですね」


「ふぅ……それはオレも分かってる。ただ、魔力無しの修行は地味にストレスが溜まるんだよなぁ。直ぐ筋肉痛になるし……」

「筋肉痛なら回復魔法を使えば良いのでは?」


「ベレットが筋肉痛に回復魔法は使うなって言うんだ。何でも自然治癒の方が筋肉が付きやすいらしい」

「そうなんですか?」


これは言われてみて思い至った事である。

確かに筋肉が成長する原理は、運動なりで筋繊維が断裂し、再生する際に以前より太くなるためだ。


この筋繊維の断裂の痛みが、いわゆる筋肉痛である。

しかし、これから超回復しようという時に回復魔法で治してしまっては、筋肉が付かないのは当たり前の話だ。


この世界の医学で、筋肉の付くプロセスなど分かるはずも無い。

恐らく長い間の経験則として、騎士団の中で受け継がれてきたのだろう。


「どおりで学生の頃、ルイスやネロより筋肉の付きが悪かったはずだ……てっきり種族差か体質だと思ってたけど、回復魔法が原因だったとは……」

「学生の頃ですか?」


「いや、何でも無い。長年の疑問が解けただけだよ」


オリビアは不思議そうな顔で首を傾げている。


「レオンはどうしてる?」

「今はパメラが寝かしつけてくれています。私は気分転換も兼ねて、久しぶりに昼食を作ろうかと」


「そっか。ずっと子守りばかりだと、滅入っちゃうからな。たまには息抜きもしないと。ジュリやパメラには感謝だな」

「ええ、本当に……あの2人にはとても助けられています。特にパメラは弟や妹の面倒を見ていたらしく、子供の扱いがとても上手いんですよ」


「そうか……じゃあ、パメラが見てるレオンの寝顔を見て来るか。昼食、楽しみにしてるよ」

「大した物は作りませんが……愛情を注いで作りますね」


オリビアの頬に軽くキスをして、2階で寝ているレオンの下へ向かったのであった。



◇◇◇



話は変わるが、ブルーリング家の者は独立を数年後に控え、全員が毎日を非常に忙しく過ごしている……いや、約一名、食っちゃ寝しているだけの魔法使いがいたか……

ヤツは良い……本当は良く無いのだが、文句を言えば3倍になって返って来る以上、どうしようもない。


父さんと祖父さん、オレとエル、そしてぐうたら魔法使いの氷結さん……ブルーリング家には、もう1人家族がいたのを忘れていないだろうか? 

そう、オレとエルの妹、クララだ。


学園を卒業して半年、居を王都からブルーリングへ移し、今は領主館の1室で過ごしている。

普通、貴族家の淑女の多くは、学園を卒業した後、実家で花嫁修業に励んで結婚に備える事が多い。


これは貴族家だけあって、子供の頃から既に婚約者が決まっている事から起こる。

それ以外……婚約者のいない者も誰かに見初めてもらうため、主家や王城などでメイドの職に就く者が多い。


どちらも「結婚」を強く意識した行動であり、この封建社会ではごく一般的な女性の行動だといえる。

そんな中、我等の妹殿はと言うと……何故か領主館の厨房で普通に働いていた。


将来 独立するとは言え、現在のブルーリング家は領地持ちの男爵家だ。配下の騎士爵家をいくつも持ち、クララを「是非ウチに……」と言う家は数え切れないほどあると聞いている。

しかし当のクララは学園を卒業し、ブルーリング領へ帰ってきたと同時に、「私も働いてみたいです!」と爆弾を落としたそうだ。


オレは国外追放中だったため、帰ってから聞いた話なのだが、その一連の流れに1人の男の影がチラついていたのだとか……

クララ曰く「女性であっても独り立ちするべきです!」から始まり、「働いてこそ民の気持ちに寄り添えると思います」、終いには「だってアル兄様の作る料理を、好きな時に食べたいんです!」と言い放ったそうだ。


クララの考えに多大な影響を与えた男……そう、オレである……

あー、クララが小さい頃から、プリンやシャーベットを食べさせたのがいけなかったのかなぁ……いや、でも、そんなに食べたいなら料理人に作らせれば……


結局、どれだけ説得しても聞く耳を持たず、ローザの娘サラと一緒に料理長へ弟子入りしてしまったのだ。

そもそもの話、クララはオレの妹である前に氷結さんの娘だぞ? 素直に貴族の淑女に収まるわけが無いだろ!


兎に角 クララは今、何故か料理人の道を歩み始めたのだ。


「何がどうなって、こうなったんだ? 意味が分からん(ぼそ)」

「アル兄様、何か言いましたか?」


「いや、何でも無いよ。それよりプリンの作り方だったよな?」

「はい。沢山プリンを作って、孤児院に持って行くんです!」


「そうか。ガキ共、喜ぶぞ。オレも久しぶりに顔を出してみるか」

「アル兄様は来なくて良いです。兄様が来ると、たぶん騒ぎになっちゃうので……」


はうん……クララに振られてしまった……確かにオレは、ここブルーリングの街ではちょっとした有名人である。

一か所に長くいると、「ブルーリングの英雄」を一目見ようと人が寄ってきてしまうのだ。


「えー、直ぐに帰るから行っちゃダメか? それにお前とサラだけだと危ないだろ」

「大丈夫です。私もサラちゃんも空間蹴りの魔道具を使えますから。それにアル兄様ほどじゃないですけど、私は強いんですよ? 暴漢程度に負けません!」

「アルド様、クララちゃんの言う事は本当です。ラフィーナ様から習った風の魔法を、10個も纏えるんですよ」


「は? お前、ウィンドバレット10個、待機状態に出来るの? マジで?」


クララはアシェラのように胸を逸らし、鼻の穴を大きくしながら口を開く。


「アル兄様も、13歳の頃には同じ数を待機状態に出来たと聞いてます。私だって母様……氷結の魔女の娘です。舐めないでください!」

「マジか……そう言えば子供の頃、お前も途中からだったが、母様の授業を一緒に受けてたんだったか……もしかして実戦を経験した事も?」


「ふっふっふーん! 何度か母様の依頼に同行させてもらった事があります!」

「嘘だろ……あの人、貴族の娘に何やらせてんだよ……因みに依頼は母様と2人だけで?」


「いえ。ギルドマスターのナーガさんとリーザス夫人も一緒でした」

「あー、あの悪友3人組か……でもリーザス師匠、冒険者を引退するって言ってたのに……」


「リーザス夫人は冒険者を引退しても、戦わないと勘が鈍るからって言ってました。たまには、命のやり取りに身を投じないと負けてしまうって……」

「あの人、何と戦ってるんだよ! ハァ……唯一の救いは、そのメンバーにナーガさんがいる事か……」


「あ! ナーガさんと言えば、最近、熱心に言い寄って来る男の人がいるそうです。先日、母様と一緒にお茶を飲んだ時に話してました。不思議な事に母様は少し怒ってましたが……」

「マジで?! ナーガさんに春が?? ここ最近で一番ビックリしたニュースだぞ……そうか……ナーガさんに男が出来たのか……でも母様が何で怒るんだ?」


「さぁ? でもナーガさんも微妙な感じでしたよ。母様ほどじゃなかったですけど……」

「そうなのか? もしかして、相手がいい加減なヤツだったのかもな……じゃあ、プリン作りの続きをするぞ。クララ、サラ、先ずは卵を30個割ってくれ。殻を入れるなよ? ゆっくりでも良いから、慎重にな」


「はい、アル兄様」「はい、アルド様」


クララとサラにプリンの作り方を教える間、料理長が真剣な顔でしきりにメモを取っていた。

お前、絶対に後で自分でも作るつもりだろ……採点してやるから、オレの所にも持って来いよ? ウチは家族が多いから、少し多めにだぞ? 





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― 新着の感想 ―
いつも楽しませていただいてます。 クララのエピソードも嬉しいけれど、氷結さんの活躍に飢えてます( • - •` )
クララの話は良い。ちょっと影が薄かったしね。 アルドたちより年下の「かわいい成分」が不足してると思ってたんだ。
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