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(仮)アルドの異世界転生  作者: ばうお


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514.瞬歩 part2

514.瞬歩 part2






「最初は足の裏からウィンドバレットを出せるようなるんだぞ」


こう話すのはネロである。オレとアシェラからの頼みで、瞬歩を教える事になったための言葉だ。


「分かった。足の裏からウィンドバレットだな……」

「ボクは撃てる」


「は? マジで? アシェラ、お前、足からウィンドバレット出せるの?」

「うん」


マジか……いつの間に……いや、以前のスライエイブの主を倒した際、時間はかかるが足でも魔法拳を出せるようになったと言っていた。

魔法拳を撃てるなら、当然ながら魔法も撃てるのは当たり前だ。


「って事は、お前だけ次の段階に進むのか?」

「うん。ウィンドバレットに乗ってみる」


えー、いきなり置いて行かれるとか……真面目に修行していたアシェラに非が無いのは分かるが、微妙に劣等感が凄い。

しかしオレは器の大きい男なのだ。足を引っ張ったりせず、ドーンと送り出してやるのが出来る旦那と言う物だろう。


「分かったよ。ネロ、アシェラはもう足からウィンドバレットを出せるらしい。次の修行を付けてやってくれないか?」

「え? アシェラって、足からウィンドバレットを撃てるのか? 凄いんだぞ! 流石アシェラだぞ!」


アシェラは胸を逸らし、鼻の穴を膨らませている。あまり調子に乗らせると、何かやらかしそうな気がするんですが……

結局、ネロとアシェラは、次の段階、ウィンドバレットに乗るために、少し開けた場所へと移動する事になった。


くぅ……やっぱり納得いかないぞ! 何故ネロとアシェラが並んで歩くんだ! 悔しい! 妬ましい!

この場にハンカチがあれば、きっと隅を噛みながら涙を流していたに違いない。


いやいや……オレは寛大な夫なのだ、むやみに嫉妬なんてしないんだ。耐えろ、アルド……お前は出来る子だ。

修行など当に放り出し、悶えているオレの背中を叩く手がある。


「ライラ……」

「アルド君、アルド君には私がいる。安心して」


この場にはルイスやカズイだけでなく、ドーガや騎士達がいるわけで……全員がオレ達を呆れた目で見ていたのであった。



◇◇◇



気を取り直して、足の裏からウィンドバレットを出す修行を再開した所、30分ほどして何故かアシェラが戻ってきた。


「どうした? もうウィンドバレットに乗れたのか?」

「修行は家に帰ってからする」


「は? 何で? もしかして怪我でもしたのか? それともネロに何か言われたのか?」

「ううん。怪我はしてないし、ネロも丁寧に教えてくれた」


「じゃあ何で?」

「……」


アシェラは何も答えず、そっとオレから視線を逸らしてしまう。

何だこの反応は……もしかしてネロのヤツ、アシェラにセクハラでもしやがったのか!?


あのエロネコ! ふざけるなよ! もし本当なら、ぶっ飛ばしてやる!

そんな怒り心頭のオレへ、ネロが寂しそうに話しかけてきた。


「アシェラがオレの靴を履きたく無いみたいだぞ……」

「は? 靴?」


靴って……あ、オリハルコン仕込みの靴! そうだ。ネロの靴底には、瞬歩を使うためにオリハルコン板を仕込んであるんだった!

ネロはシュンと小さくなり、アシェラはバツが悪そうに顔を背けている。


これは一体どういう事だ? 確かに他人の靴を履きたく無い気持ちは分からなくも無い。

しかし、少しぐらい我慢すれば良いと思うのだが……


「アシェラ、どうしたんだ? 折角、ネロが貸してくれるんだぞ? お礼を言って使わせてもらえば良いだろ?」


アシェラはオレの言葉を聞いても、何も言わず俯いている。幾ら何でも、流石にこの態度はネロに失礼だ。

ネロは善意で貸してくれるのに、それを理由も無く拒絶するなんて仲間同士と言えども許される事では無い。


「アシェラ、あんまり言いたくは無いけど、その態度は無いんじゃないか? 流石に失礼だぞ」


少し怒気を込めて口を開くと、アシェラは小さな声で返してきた。


「だって……あの靴、洗って無い……何かヌルっとした……」

「え? 洗って無い? そりゃ迷宮探索で暫く洗ってないだろうけど、それはしょうがないだろう」


更にアシェラへ苦言を呈そうとした所で、今度はネロがバツが悪そうに口を開く。


「洗って無いぞ……」

「ん? そりゃこっちに来て1ヶ月になるんだ。少し汚れてるのはしょうがない。それよりアシェラの態度が……」


そう口にした瞬間、ネロは食い気味に話を割り込ませてくる。


「一回も洗って無いんだぞ!」

「は? 一回もって……もしかしてボーグに作ってもらってから一回も洗ってないのか? 嘘だろ……あれから2年以上経ってるぞ……本当に一回も?」


ネロは顔を背けつつ、ゆっくりと頷きやがった!

うげぇー、おま、それはダメだろ。そりゃアシェラも嫌がるわけだわ! こんな物をオレのアシェラに履かせるわけにはいかない。アシェラの足が水虫になってしまう!


「ごめん……ネロ……ボクは帰ってからアルドに教えてもらう……」

「分かったぞ……こっちこそ、ごめんだぞ……」


え? なに2人で話を纏めてるの? って事は、もしかしてオレってその靴履かないとダメなの? マジで?


「ちゃんとアルドに教えるんだぞ。アルド、早く足でウィンドバレットが撃てるようになるんだぞ」


ネロさん……その穢れ無き目で見るの止めてもらって良いですかね? これじゃ、絶対に嫌って言えないじゃないですか……

結局、全員が見つめる中、オレは足からウィンドバレットを出すため、修行に励んだのである。



◇◇◇



瞬歩の修行を始めて3日が過ぎた。

発動まで時間はかかるものの、オレは何とかウィンドバレット(魔物用)を出せるようになったのである。


「ネロ、待たせたな。最低限は出せるようになったと思う。次の段階に進んでくれるか?」

「分かったぞ。ちゃんと防具も洗ったんだぞ」


「おお! それは助かる! でも鎧は定期的に洗って油で手入れしないとダメだぞ」

「ごめんだぞ……チビの皮は何もしなくても壊れないから甘えちゃったんだぞ……」


確かに地竜の中でもチビさんの皮は、殆ど劣化もせず手入れは非常に簡単だ。

でも、洗いもしないのは違うと思うのですよ。だって臭いじゃん! アシェラやライラ、母さんやナーガさんの女性組なんて、旅先でも時間があれば洗って匂い袋を仕込んだりしてるのに。


まぁ、オレも匂い袋までは仕込まないので、強くは言えないのだが……


「ふぅ……まぁ良い。じゃあ次はウィンドバレットに乗るんだったよな?」

「そうだぞ。色々なウィンドバレットに乗って、感じを掴むのが良いんだぞ。そしたら足の裏からウィンドバレットを出して速く動く修行をするぞ」


「なるほどな。分かった。じゃあ、悪いけどネロ、靴を貸してくれるか?」


ネロは良い笑顔で自分の靴を脱ぎ、オレに手渡してきた。

うーん……洗ったとは言え、やっぱり人の靴は抵抗があるなぁ……ん? 靴下越しでも何かぬるぬるするんだが……


まぁ、人の足は1日で、コップ1杯の汗をかくと言うし……無理を言って貸してもらっている手前、文句は言えない。


「あ、ありがとな、ネロ。じゃあ早速やってみる」

「最初は(そよ風バージョン)からやるのが良いぞ。慣れたらちょっとずつ強くしていくんだぞ」


「分かった」


先ずはネロの言う通り、ウィンドバレット(そよ風バージョン)を足から出して、空中に待機させた。

今は乗るだけなので、普段通り手から出しても良いのだが、これも修行だ。


先ずは軽くだな……空間蹴りでウィンドバレットの真上まで移動して、真っ直ぐに降りていく。

お、何か柔らかい物を踏んだ感じか……なるほどな。これは少し面白い感覚だ。


ウィンドバレットを(そよ風バージョン)から(非殺傷)、(殺傷型)へと変えていく。


「当たり前だけど、徐々にしっかりした感覚になっていくんだな」

「そうだぞ。次は(魔物用)に乗ってみるんだぞ。凄く強いから気を付けるんだぞ」


「分かった。じゃあ、行くぞ」


足から(魔物用)を出し、同じように空中へ待機させる。早速、乗ってみたのだが、足にかかるチカラが今までの物とは明らかに違う。

例えるなら、(そよ風バージョン)は柔らかい布団のよう。(非殺傷)は跳び箱の踏切台。(殺傷型)はトランポリンのようだった。


しかし(魔物用)は、まるで足下で何かが爆発したような衝撃が襲ってきたのだ。


「うぉ!」


これは慣れるなんて生易しい物じゃない。踏ん張って耐える事だけに全神経を集中するが、結局オレは地面を転がされてしまった。

考えてみえば当たり前の話である。(魔物用)は、当たりさえすれば大抵の魔物は即死するのだ。


それに乗るなんて考えが、そもそもおかしいのだから。


「アルド!?」「アルド君!」


アシェラとライラが走り寄り、心配そうな顔で覗き込んでくる。


「大丈夫だ。想像以上の衝撃だっただけで……ちょっと甘く考えてたかもしれん」


ルイスと共に少し遅れてやってきたネロへ、改めて話しかけた。


「ネロ、お前、こんな物を技にまで昇華したんだな。どれだけ努力したんだ……凄いよ、尊敬する」

「そ、そんな事ないんだぞ! お、オレはバカだから……出来る事を一生懸命やるしか出来ないんだぞ」


「出来る事をやる」か……流石はジョーとパーティを組んでいただけある。しっかり教えを受け継いでいる姿に、思わず笑みが零れてしまう。


「そうだよな。今、出来る事をやるしかないよな。ネロ、もう一回やるぞ。コツがあれば教えてくれ」

「コツ……なるべく遠くを見て、そっちに向かうようにするとバランスを取りやすいぞ。足元を見てると、色々なチカラが来て転んじゃうんだぞ」


「なるほど……確かに自転車や車、スキーやボードでも遠くを見た方が安定するよな(ぼそ)」

「ん? 良く聞こえなかったんだぞ」


「いや、良い。独り言だ。目線だな。やってみる」


こうしてオレは、王都のマナスポット解放までの間、ネロから瞬歩を学び続けたのであった。





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