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(仮)アルドの異世界転生  作者: ばうお


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509.ゴブリンの迷宮 part3

509.ゴブリンの迷宮 part3






迷宮探索の打ち合わせが終わって3日が過ぎた。

今回は迷宮踏破を目標としている事から、騎士達は2個中隊の40名が同行している。


何故そんな数がいるのか? ゴブリン達は、迷宮を踏破した瞬間から出口へ向かう。溢れて辺りに被害が出ないよう、多目に騎士を配置してもらったのだ。

この差配をしたのはドーガ。ヤツは脳筋ではあるものの、アホでは無かったようだ。事態を簡単に説明しただけで、即座に騎士団を動かす事を決めたのである。


改めて考えてみると、アイツって物分かりが良く騎士からの人望も厚いんだよな。更に決断力もあるときた……うーん、言葉で表すと、素晴らしい指導者に聞こえてくる……でもやっぱりドーガなんだよなぁ……

こうしてモニョる気持ちを抱えつつ、騎士達と共に再度「ゴブリンの迷宮」へやってきたのである。


そんな騎士達へ別れを告げ、迷宮に潜ったのは昨日の事だ。予定通り広場は空を飛んで迂回し、1日かけて最後の休憩場所である通路へ辿り着いたのである。


「ふぅ……。ここからは時間との戦いだな。作戦通り交代で休息を取る。最初はオレとネロだ。4時間経ったら起こしてくれ」

「分かった。お前等が起きたらオレとアシェラ、ライラとカズイさん、4人同時に休むんだったよな?」


「ああ、そうだ。それで全員が休息を取り終わった後、1時間の休憩を挟んでから魔瘴石をかっ攫いに行く。起きてからはあまり時間が無いからな。先に軽くでも食事を摂っておけよ」


ルイスの言う通り、起きた後はノンビリ食事を摂る時間は無さそうだ。

軽く頷いて返すと、ルイスは肩を竦めて地面の小石をどかし始めた。


「時間も無い事だしな、先に休ませてもらうぜ。後は頼んだ」


ネロもルイスの隣で横になり、5分もすると2人は小さな寝息を立て始めた。

こうも早く寝るとは……2人共、もうベテランの冒険者だ。何処でも眠れると言うのは、冒険者にとって必須の技能と言っても良いのだから。


「じゃあオレ達は食事を摂っておこうか。ついでに荷物の確認もしておこう」

「うん……でも黒パンは固いし干し肉はしょっぱい……」


「迷宮を踏破すれば、煮炊きも少しは出来るから。帰りは軽く何か作るよ」

「やったー。ボク、甘い物が食べたい」


「甘い物か……流石にそれは……帰ったらプリンを作るから、それで勘弁してくれ」

「むぅ……じゃあ、プリンの上に生クリームも欲しい」


「分かったよ。帰ったらプリンと生クリームを作る。約束だ」


アシェラは嬉しそうな顔で頷き、ライラも鼻の穴を膨らませ、ご満悦の表情だ。

当のオレも、サッサとこんなゴブリン臭い穴ぐらから出て、ブルーリングでノンビリ過ごしたい。


そこからは、お互いのゴブリンキングに対する知識を確認し合い、細かな点を話し合ったのだった。



◇◇◇



休憩を取り始めて9時間ほどが経った。

今はオレ、アシェラ、ライラ、カズイの魔力が満タンで、ルイスとネロが9割といった所だ。


最後の通路はゴブリンが出ないと思っていたのだが、そんなに甘くは無かった。

やっぱり、ボス前に回復ポイントなんて無かったんや。


結果、定期的に沸くゴブリンを最速で倒すため、どうしても魔力を消費してしまったのだ。


「じゃあ、最後の打ち合わせを始めるぞ。聞き逃すなよ」


全員が頷いた所でルイスが話し始める。


「作戦は前に打ち合わせた通りでいく。全員が魔瘴石の真上まで移動した後、奇襲で祭壇を占拠する。アルドは兎に角、陽動で敵を祭壇から引き離してほしい。ライラとカズイさんは空から、オレとネロは魔瘴石の傍で防衛だ。アシェラは戦闘には参加せず、先ず魔瘴石に触る事を優先してくれ」

「祭壇に近づけなければ良いんだな。分かったよ」

「オレは魔瘴石を守るんだぞ。ゴブリンなんかに負けないぞ」

「ボクは最初に解呪。うん、大丈夫」


「アシェラ、呪いの解呪後はアルドと一緒にゴブリンキングを祭壇から引き離してほしい。それで場が安定したと判断したら、次のオレとネロが魔瘴石に触る。流石に31匹ものゴブリンキング相手にして、こっちの都合ばかり通らないだろうからな。臨機応変に対応するつもりだ。そこまで順調にいったら、最後はライラとカズイさんの番。タイミングはオレが指示する。戦闘に熱くなり過ぎて聞き逃さないでくれ」

「問題無い……私は魔法使い。戦いで熱くなり過ぎたりしない。冷静に対処する」

「ぼ、僕も聞き逃さないように注意するよ。ライラさんもいるし、大丈夫だと思う」


ルイスは魔法使い2人の対照的な姿を見て苦笑いを浮かべている。


「で、全部終わったらアルド、最後の仕上げを頼む。魔瘴石を浄化し次第、全員で上空へ退避する。後はゴブリンキング共が死に絶えてくれれば良いが、生き残るようなら各個撃破だな。ここまで行けば後はどうとでもなるはずだ。空から魔法を撃っても良いし、無理しない程度に直接戦っても良い。その時の状況で判断する」


作戦に大きな穴は無いと思うが、命のやり取りをしている以上、向こうも必死だ。もしかして想定外の何かが起こる可能性もある。

しかし、このメンバーなら……収納経由でエルへ手紙を送り、僅かな時間で最後の休憩をとったのである。



◇◇◇



「よし、そろそろ行こうと思う。皆、準備は良いか? 後から何か忘れたって言っても遅いぜ」

「オレは大丈夫。いつでも良い」「オレも問題ないんだぞ」「ボクも大丈夫。いつかの借りを倍にして返す!」「私も何時でも良い」「僕も問題ないかな」


「じゃあ、行くぜ。先頭はオレ。この作戦は攻めるタイミングが全てだ。ハンドサインを見逃すなよ」


ルイスはそう告げるとゆっくり空へ駆け上がっていく。隊列はルイスを先頭に、オレ、アシェラ、ネロ、ライラ、カズイの順番だ。

出来れば見つからずに奇襲をかけたい。細心の注意で空を駆けていくのだった。


程よい距離を空けながら、1列になって空を駆けていく。

眼下には無数のゴブリンキングが、思い思いに過ごしている。


この数相手に時間稼ぎか……楽な仕事では無いが、アイツ……コボルトの主と対峙した時のような絶望感は感じ無い。

これなら……恐らく恐怖で体が動かないなんて事は無いはずだ。


改めて、気の良い先輩と頼りになる師匠に、心の中で頭を下げておいた。

想像以上に落ち着いている自分に驚いている中、ルイスがハンドサインで「止まれ」の指示を出す。


そろそろ魔瘴石の真上か……オレも同じように後ろへハンドサイトを出してやると、順番に指示が伝わり全員が足を止めていく。


「最後の確認だ。準備は良いな?」


小声で話すルイスの言葉へ、全員が頷いて返す。


「じゃあ、3秒後に突撃する。3、2、1、行くぞ!」


簡素なカウントダウンだったが、タイミングは完璧だ。

先頭にオレとアシェラ、次にネロとルイス、最後にライラとカズイが落ちていく。


オレの仕事は、兎に角 敵を引きつける事だ。

おっしゃ、いっちょ気張りますか!


重量のまま落下しつつ、ウィンドバレットを最大の15個起動し、自分の周りに漂わせた。

これは倒すための物じゃない。祭壇へ向かおうとする者を、強制的にオレに振り向かせるために使うのだ。


準備はこれで整った。後はなるべく派手に暴れてオレに意識を向けさせる!

バーニアを少し吹かせ、ルイス達より少しだけ先行して声を張り上げた。


「いつかの借りを返しに来たぞ! 逃げ惑え、クソゴブ共!」


ゴブリンキング達は、オレの大声に驚いているが、遅い……隙だらけだ!

魔力武器(大剣)を出し、落下の勢いのまま1匹のゴブリンキングへ振り抜いた。


一閃


キングは頭から真っ二つになって、崩れ落ちていく。恐らく自分が死んだ事にも気付いて無いかもしれない。

やはりジョーが言ったように、大剣の振り下ろしの威力は格別だ。


堅いはずの皮膚が、紙細工のように切れてしまった。

そして辺りを見れば、目の前に5、7……12匹のゴブリンキングが……全体の詳細な位置を知りたい。


直ぐに範囲ソナーを200メードで打つと、祭壇の反対側に10匹……残りは散らばっていて祭壇までは距離がある。

であれば、先ずは目の前のゴブの目を引きたい。あわよくば12匹ならワンチャン倒せるかも……


15個のウィンドバレットを適当にばら撒いてから、一番近いキングへ吶喊した。

この場面は……短剣で行く。


奇襲でまともに頭も働いていない今なら、懐にも簡単に潜り込めるだろう。

そして入り込んでしまったら、短剣は無類の強さを発揮する。


ワザとゆっくり動いて見せて、バーニアを吹かす事で、瞬時に懐へ入り込んだ。

これはヤツ……コボルトの主が使ってた方法。動きの緩急を付ける事で実際より速く動いていると錯覚させる。


心臓と喉を切り裂き、バーニアを使って距離を取る……これで2匹。

ここにきて、やっと襲撃を受けている事に思い至ったのだろう。


ゴブリンキングの1匹が咆哮を上げた所で、ヤツ等は戦闘態勢に入りコチラを睨みつけてきた。


「遅いんだよ。のろまが……」


毒を吐きつつ、空間蹴りで上空へ退避する。オレの仕事は殲滅じゃない。引き寄せての時間稼ぎだ。

上空から反対側を除き見ると、困った事に10匹のキングが祭壇へ向かおうとしている。


「クソッ、アシェラはまだか? こう散らばってると、全部を引き付けられない」


少しでもコチラに意識を向けさせるため、ウィンドバレットを撃ちこむが、この距離では効果が薄い。

向かうか? でもこっちにも10匹が残ってる……ここを離れれば、間違い無くコイツ等は祭壇に向かうはずだ……


手が足りない……敵わないほど強いわけじゃない。むしろ今のオレであれば、想定していたより弱くさえ感じられる。

しかし、これだけの範囲の敵を全て誘き寄せるなど、1人では無茶と言うものだ。


いっそ祭壇で固まって返り討ちにした方が良いのか?

この場を放棄する事も考えていると、向こう側のゴブリンへ吶喊する人影が見えた。


次の瞬間、ゴブリン達の中心で爆発が2度上がり、祭壇を登ろうとしていたゴブリン達がふっ飛ばされている。

今のはリアクティブアーマーだ……遅いよ、アシェラ。


「アルド! アシェラには反対側を引き付けてもらう! お前はそこを頼む!」


この声はルイスだ。アシェラの解呪が終わって、反対側のゴブリンの引き寄せを頼んだのだろう。


「分かった! 直ぐに散らばってるヤツも帰って来る! 急いでくれ!」

「了解だ!」


オレより強いアシェラが向こう側を担当してくれるなら、アッチは何も心配いらないはずだ。それより問題はこっち……

眼下には怒りを隠そうともしないゴブリンキングが10匹も……


「やっぱり、さっきみたいに奇襲はさせてくれないよなぁ。ただな……最初に会ってから10年……エンペラーの頃からなら7年か……オレも強くなったんだ。因縁のあるお前等なら、今のオレに相応しい。強くなった実感を得させてもらうぞ。それでコボルトからの一連にケジメを付ける! 行くぞ、ゴブ共! オレの贄となれ!」


これは思ってはいても、救世主として絶対に言っちゃいけない言葉なんじゃないかな? 

ゲス過ぎる言葉を吐きながら、オレはゴブリンキングの群れに突っ込んだのであった。





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